第九話 東京第五ダンジョン
二日後。
昨日から予定通り探索者庁本部の調査チームは東京第三ダンジョンへ入った。
高瀬からは簡単な連絡だけ来ている。
『本部の人たち、すごいですね』
『今日だけで未知区域の簡易地図が完成しました』
『戦闘班の人たちはゴブリンを十五匹倒したそうです』
俺はスマホを閉じた。
「やっぱり専門家は違うな」
未知区域の調査は完全に探索者庁へ引き継がれた。
俺の仕事は終わりだ。
少し面白そうだとは思った。
ただ、C級探索者が本部の調査に混ざっても邪魔になるだけだろう。
なので、俺はいつも通り稼ぐことにした。
向かう先は東京第五ダンジョン。
都内にあるEランクダンジョンの一つだ。
全二十五階層。
出現する魔物はコボルトやポイズンスパイダー。
Fランクより危険だが、収入は悪くない。
榎本ありさは受付で俺を見るなり笑った。
「久しぶりですね、東京第三は行かないんですか?」
「本部の探索チームが来た、俺の仕事は終わりだ」
「割り切り早いですね」
「二十万円も貰ったしな」
「探索者って現金ですね」
「東京第三の高瀬も同じこと言ってたな」
入場カードを受け取る。
制御環のランプが赤く変わった。
身体が少し軽くなる。
久しぶりのEランクダンジョン。
悪くない。
第五階層。
第七階層。
第十階層。
出現する魔物はFランクとは違う。
青灰色の肌をしたコボルト。
天井に張り付くポイズンスパイダー。
時折ウィンドバットも飛んでいる。
一匹目のコボルトが棍棒を振り下ろした。
遅い。
ロングソードで受け流す。
踏み込む。
首筋を狙う。
一閃。
コボルトは魔素となって消えた。
魔石を拾う。
八千円くらい。
悪くない。
その後も数匹倒した。
「今日は調子いいな」
壁際に座る。
水筒を取り出す。
弁当箱を開ける。
中身は卵焼き。
ウインナー。
冷凍唐揚げ。
昨日の夕飯の残りだ。
少し味気ない。
だが外で食べる飯は悪くない。
遠くで別の探索者たちの声が聞こえる。
悲鳴じゃない。
笑い声だ。
ポーチの中には七個ほど魔石が入っていた。
コボルトの魔石が五個。
ポイズンスパイダーの魔石が二個。
合わせて八万円近い。
午後も潜れば十万円には届くだろう。
悪くない。
もっとも、こないだ交換したロングソードの鞘だけで十万円飛んだ。
他の装備のメンテナンス代だって馬鹿にならない。
来月には探索者保険の更新だってある。
探索者なんて仕事は、稼いでも稼いでも金が残らないのが実情だ。
東京第三の未知区域には、少し興味はあった。
だが、本部の調査班が入るなら俺の出番はない。
C級探索者にはC級探索者なりの稼ぎ方がある。
俺は弁当の最後の唐揚げを口へ放り込んだ。
午後もあと少し潜る。
今日は十万円くらい稼げれば十分だ。




