第八話 調査終了
翌日の午前九時。
東京第三ダンジョン管理棟の会議室には、昨日と同じ顔ぶれが集まっていた。
村瀬課長は資料を閉じる。
「昨日はお疲れ様でした。本部への報告は終わっています
ただ、調査チームが到着するのは明日の朝になります」
「今日は来ないのか?」
「本部は埼玉ですから」
「準備にも時間が掛かりますから
そのため、今日一日だけ引き続き協力をお願いしたいんです」
「日当は?」
「もちろん二十万円です」
「やる」
「聞く前から決めてましたよね」
「探索者は現金なんだ」
高瀬は呆れたように笑った。
「今日は休憩所の詳細調査を行います」
「木箱の中身、生活痕の確認、簡単な地図作成、階段の先へ進む予定はありません」
「了解」
再び十階層へ向かう。
採掘跡。
横穴。
人工的な通路。
昨日倒したゴブリンの痕跡は消えていた。
魔石だけ回収され、部屋は静まり返っている。
「ゴブリンって掃除しなくていいから楽ですね」
「人間の死体だったら帰りたい」
「それは私もです」
木箱を調べる。
中には石ころ。
錆びた釘。
割れた陶器。
売れそうな物はない。
樽の中には濁った水。
寝床には藁。
焚き火跡には骨が転がっていた。
「本当に生活してたんだな」
「報告書は厚くなりそうです」
「俺の報酬は変わらないんだろ?」
「変わりません」
「世知辛い」
昼過ぎには調査も終わった。
地図作成。
写真撮影。
魔素濃度測定。
階段の手前まで確認して撤収する。
管理棟へ戻ると、村瀬課長が待っていた。
「ご苦労様でした」
「佐伯さんへの依頼はこれで終了です」
「明日からは本部所属の探索チームが担当します。戦闘班、測定班、地図作成班、十名ほど来る予定です」
俺は頷いた。
「そういうことなら構わない、専門家が来るなら俺の仕事は終わりだな」
「未練はないんですか?」
高瀬が聞く。
「別に、二十万円を二日貰えた。十分だ、明日からはまたスライム狩りに戻る」
面倒事は嫌いだ、危険も好きじゃない。
未知の場所は少し面白かったが、それだけだった。
俺はC級探索者。
本部のエリート探索者とは違う。
日銭を稼ぎながら長く生き残る。
そのくらいが性に合っている。
「じゃあ、また縁があったら」
「はい」
「お疲れ様でした」
高瀬は小さく頭を下げた。
「明日からは、足を延ばして東京第五にでも行ってみるか」
明日からの予定を考えながら帰路に就いた。




