第四十八話 十九階層
十八階層での戦闘を終えた俺達は、そのまま十九階層へ続く階段の前へ立っていた。
ここから先は未調査区域。
探索者庁の地図も白紙だ。
「行くか。」
修司が剣を抜く。
「ああ。」
階段を降りる。
十九階層。
景色は大きく変わらない。
石造りの通路。
湿った空気。
違うのは空気の重さだった。
「少し濃いですね。」
彩花が測定器を見る。
「十八階層より二割ほど高いです。」
「異常か?」
「いいえ。」
「ただ、第三では一番高い数値です。」
修司が苦笑する。
「最近のダンジョンは成長期か何かか?」
「そうなら分かりやすいんですけどね。」
佐伯は周囲へ意識を向ける。
気配。
三体。
距離二十五メートル。
「ゴブリン三。」
「こっちに向かってる。」
修司が前へ出る。
「いつも通りだ。」
ゴブリンが現れる。
棍棒。
短剣。
装備は十八階層までと変わらない。
ただ、動きは少し速い。
一匹目。
修司が盾で受ける。
弾く。
佐伯が踏み込む。
一閃。
ゴブリンは魔石を残して消えた。
二匹目。
彩花の火球。
怯む。
修司の剣。
肩口を斬る。
最後は佐伯のロングソードが首を断った。
三匹目は逃げる。
「またか。」
ダガーを抜く。
投げる。
回転した刃が太腿へ突き刺さる。
ゴブリンが転倒する。
修司が笑う。
「お前、本当に逃がさないな。」
「逃げられると面倒だからな。」
「分かる。」
修司がとどめを刺す。
魔石を回収する。
一万五千円。
三個で四万五千円。
悪くない。
「十九階層もゴブリン主体ですね。」
彩花が地図へ書き込む。
「階層が増えただけかもしれません。」
「それなら探索者庁は喜ぶな。」
「Dランク探索者の稼ぎ場が増えますからね。」
探索を続ける。
一時間。
十九階層を一周する。
遭遇した魔物はゴブリン七体。
コボルト二体。
ホブゴブリンは出なかった。
「終わりか?」
修司が地図を見る。
「二十階層への階段があります。」
彩花が指を差す。
通路の奥。
石階段。
確かに存在していた。
「どうする?」
修司がこちらを見る。
時間は午後一時。
ポーションにも余裕がある。
疲労も少ない。
「行けるな。」
「ああ。」
「問題ない。」
修司が笑う。
「決まりだな。」
第三ダンジョン二十階層。
おそらく、このダンジョンの現在の最深部。
俺達は階段へ足を向けた。
探索者にとって未知の階層は珍しくない。
それでも、少しだけ気分が変わる。
新しい地図。
新しい記録。
その最初の一歩を踏み出すのは、悪くない仕事だった。




