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31歳中堅探索者、今日も潜る  作者: 上畑 優平
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第四十四話 久しぶりの顔

 第五ダンジョンでの探索を終えたのは午後三時を少し回った頃だった。

 今日の成果は魔石十五個。

 換金額は二十二万五千円。

 悪くない数字だ。

 管理棟へ戻り、換金手続きを済ませる。

「今日は結構稼ぎましたね。」

 榎本ありさが端末を見ながら言った。

「まあな。」

「最近は依頼ばかりでしたから、こういう日も必要ですよね。」

「ああ。」

 依頼は報酬が安定している。

 その代わり、自由は少ない。

 好きな時に潜って、好きな時に帰れるのは普段の探索だけだ。

「そういえば、藤堂さん達が来てましたよ。」

「藤堂?」

「第六ダンジョンで一緒だったパーティです。」

「ああ。」

 修司と彩花か。

「少し前に帰られましたけど、佐伯さんを見かけたら連絡が欲しいって言ってました。」

「何かあったのか?」

「そこまでは聞いてません。」

 ありさは肩を竦める。

「急ぎではなさそうでしたけど。」

「分かった。」

 認識票を受け取り、管理棟を出る。

 すると入口近くのベンチに見覚えのある二人が座っていた。

「お、いたいた。」

 藤堂修司が手を上げる。

「帰ったんじゃなかったのか?」

「彩花が受付で見つけたんだよ。」

「まだ換金中じゃないかってな。」

「正解でした。」

 藤堂彩花が笑う。

「何か用か?」

「大した話じゃない。」

 修司は缶コーヒーを一本投げてよこした。

「最近のダンジョンの話だ。」

 缶を受け取る。

「第六もか?」

「ああ。」

「異常ってほどじゃない。」

「ただ、魔素濃度が少し高い日が増えた。」

「魔物も少し元気だ。」

「第三と同じか。」

「そんな感じだな。」

 彩花が続ける。

「第五も少し高い日があるって聞きました。」

「受付でも話題になってますよ。」

「探索者庁は調査してるんだろうけどな。」

「結論はまだ出てない。」

 修司は缶コーヒーを開ける。

「まあ、自然現象みたいなもんだろ。」

「台風みたいなものかもしれない。」

「備えるしかないな。」

「違いない。」

 少し沈黙が流れる。

 悪い空気じゃない。

 探索者同士の会話なんて、大抵こんなものだ。

「そういえば。」

 彩花が思い出したように口を開く。

「神谷君達、Dランク合格したそうですね。」

「ああ、今日会った。」

「もう第六へ行くらしい。」

「若いなあ。」

 修司が笑う。

「俺なんかEランクで三年いたぞ。」

「慎重だったんですね。」

「臆病とも言う。でも、生き残った。」

「探索者なら十分だろ。」

 修司は肩を竦める。

「その理屈なら佐伯も同類だな。」

「否定はしない。」

 三人で笑う。

 空を見上げる。

 夕方が近い。

「じゃあ、俺は帰る。」

「またな。」

「ええ、また。」

 二人と別れ、駅へ向かって歩き出す。

 最近は少し忙しかった。

 調査。

 救助。

 試験。

 それでも、また日常に戻ってくる。

 ダンジョンが少し変わっても、探索者の仕事は変わらない。

 潜って、帰る。

 また潜る。

 それだけだ。

 スマートフォンが震えたのは、その時だった。

 画面を見る。

 高瀬。

 探索者庁。

「もしもし。」

『お疲れさまです、佐伯さん。』

「どうした?」

『少しお願いしたい仕事がありまして。』

 電話の向こうで、高瀬が苦笑する気配がした。

『今度は第三ダンジョンです。』

 どうやら、しばらく退屈はしなくて済みそうだった。


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