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31歳中堅探索者、今日も潜る  作者: 上畑 優平
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第三十九話 地形を使え

 第五階層へ降りる階段が見えてきた。

 ここから先はコボルトの数も少しずつ増えてくる。

 受験者四人の表情にも疲れが見え始めていた。

 歩き続けて二時間近く。

 集中力が切れ始める頃だ。

 佐伯は前を歩く四人を見ながら、小さく息を吐く。

「気配があります」

 神谷が立ち止まった。

 ほぼ同時に佐伯も気付く。

 コボルト。

 六体。

 距離は四十メートル。

 通路の先にまとまっている。

 四人も物陰から様子を窺う。

「六体か……」

 水島が小さく呟く。

「行けるだろ」

 剣へ手を掛ける。

 神谷は首を横に振った。

「正面からは多い」

「一度戻りませんか」

「戻る?」

「通路まで誘えば、一度に来るのは二体くらいです」

 高橋も地図を見る。

「この先は少し広い」

「囲まれる可能性がありますね」

 西野も頷いた。

「魔法を撃って誘導しましょう」

 水島は少し考え、ようやく頷いた。

「分かった、その方が安全か」

 四人は静かに後退する。

 二十メートルほど戻ったところで高橋が盾を構えた。

「ここなら十分だ」

 西野が火球を放つ。

 壁へ着弾。

 爆ぜた音が通路へ響く。

 コボルト達が一斉に振り向いた。

 足音。

 一匹。

 二匹。

 三匹。

 狭い通路へ飛び込んでくる。

 先頭の二匹しか並べない。

「前!」

 高橋が盾で受け止める。

 神谷が右から踏み込む。

 一匹目を斬る。

 水島は二匹目の背後へ回り込む。

 短剣が首筋を捉えた。

 後続は前が詰まり動けない。

 西野の火球が三匹目を怯ませる。

「今だ!」

 高橋の声。

 四人が一歩前へ出る。

 隊列は崩れない。

 数分後。

 最後のコボルトも魔石を残して消えた。

 四人は荒い息を整える。

 高瀬が佐伯を見る。

「どうですか」

 佐伯は短く答えた。

「百点じゃない、でも、いい判断だった。

 戦わない選択じゃなく、勝ちやすい場所を選んだ。

 それが出来る探索者は長生きする」

 四人は顔を見合わせる。

 その一言が、今日初めての評価だった。

 試験はまだ半分も終わっていない。

 それでも四人は少しだけ、自信を持って前へ進み始めた。


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