表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31歳中堅探索者、今日も潜る  作者: 上畑 優平
PR
37/44

第三十七話 試験開始

 午前九時、受験者四人と佐伯、高瀬を含む探索者庁職員二人は転移陣の前へ集まっていた。

「それでは試験を開始します」

 高瀬の合図で転移陣が淡く光る。

 一行は第五ダンジョン第一階層へ転移した。

 空気が変わる。

 石造りの通路、湿った空気。

 魔物の気配はまだ無い。

 四人は自然と円を作る。

「自己紹介だけしておこう」

 短剣を腰に下げた青年が口を開いた。

「俺は水島。普段はソロだ」

 槍を持った女性が続く。

「私は西野。パーティ所属です」

 大盾を背負った男性が軽く頭を下げる。

「高橋です。防御役をやっています」

 最後に、佐伯が以前助けた青年が口を開いた。

「神谷です。普段は三人パーティで潜っています」

 四人は互いの装備へ目を向ける。

 即席パーティ、普段とは勝手が違う。

 誰が前に立つのか、誰が指示を出すのかを最初に決めなければならない。

「盾役は俺でいいな」

 高橋が言う。

「異論ない」

 水島が頷いた。

「神谷は剣だよな?」

「ああ」

「じゃあ前衛を頼む」

「分かった」

「西野は後ろから支援をお願いします」

「了解」

 ものの一分で役割が決まる。

 悪くない。

 佐伯は腕を組んだまま様子を見る。

「どうですか?」

 高瀬が小声で聞いた。

「最初としては十分だ」

「役割を決めずに歩き出すよりはずっといい」

 高瀬は手帳へ書き込む。

 四人は慎重に歩き始めた。

 歩幅を合わせる。

 前へ出過ぎる者もいない。

 周囲への視線も配れている。

 第一階層を十分ほど進んだ頃だった。

 高橋が足を止める。

「止まって」

 全員が動きを止める。

「どうした?」

「音がした」

 耳を澄ます。

 数秒後。

 通路の奥から足音が聞こえてきた。

 コボルトが二体。

 まだこちらには気付いていない。

「どうする?」

 神谷が小さく尋ねる。

 水島は少し考える。

「ここで迎え撃とう」

「通路は狭い」

「高橋が前」

「神谷は右」

「西野は魔法で援護」

「俺は遊撃に回る」

 三人は短く頷く。

 すぐに配置へ付いた。

 その様子を見ながら佐伯は小さく息を吐く。

「判断は悪くない」

「はい」

 高瀬も同意する。

 コボルトが四人へ気付く。

 短く鳴き声を上げ、一気に距離を詰めてきた。

「来るぞ!」

 高橋が盾を構える。

 一匹目が飛び掛かる。

 盾へ爪がぶつかる。

 鈍い音が響く。

 勢いを止められたコボルトへ神谷が踏み込む。

 剣を振る。

 浅い。

 肩口を斬っただけだった。

 コボルトはまだ動く。

 その横から水島が飛び出した。

 短剣が喉元を捉える。

 一匹目は魔石を残し、静かに消えた。

 もう一匹は高橋を避けようと横へ回る。

「右!」

 西野の声が飛ぶ。

 火球がコボルトの足元へ着弾した。

 驚いたコボルトの動きが止まる。

 神谷は今度は焦らない。

 一歩踏み込む。

 剣を横へ払う。

 首筋へ刃が走る。

 コボルトは魔素となって消えた。

 四人はすぐに武器を下ろさない。

 周囲を確認する。

 十秒。

 二十秒。

 異常なし。

 そこでようやく全員が息を吐いた。

「今のはどうですか?」

 高瀬が尋ねる。

 佐伯は四人を見たまま答える。

「七十点」

「初戦としては悪くない」

「ただ、一つだけ惜しかった」

「神谷だ」

 神谷が振り向く。

「最初の一撃を急ぎ過ぎた」

「慌てて決めようとしただろ」

「……はい」

「倒せなくてもいい」

「当てるより、自分が怪我をしない方を優先しろ」

 神谷は真剣な表情で頷いた。

「ありがとうございます」

 佐伯はそれ以上何も言わない。

 一度言えば十分だ。

 後は本人が考えればいい。

 試験はまだ始まったばかりだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ