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31歳中堅探索者、今日も潜る  作者: 上畑 優平
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第三十三話 価値の違い

 調査は昼を過ぎても続いていた。

 十五階層の壁面には白い印がいくつも付けられている。

 山口は測定器を壁へ押し当て、西村は記録を取り続けていた。

 黒田は地図へ印を書き込んでいる。

 俺の仕事は変わらない。

 周囲を警戒するだけだ。

 気配察知。

 二体。

 距離は四十メートル。

 コボルト。

「少し離れるな」

 三人へ声を掛ける。

「はい」

 測定器を置き、全員が壁際へ下がる。

 コボルトは二匹ともこちらへ向かってきた。

 動きは単調。

 飛び掛かってくるタイミングも分かりやすい。

 一匹目。

 剣を受け流す。

 返す刀で首元を斬る。

 魔石だけを残し、魔素へ還った。

 二匹目は距離を取る。

 逃げるつもりらしい。

 ダガーを抜く。

 軽く振る。

 刃は背中へ突き刺さった。

 転倒。

 近付き、とどめを刺す。

 戦闘は一分も掛からなかった。

「終わった」

 三人は再び作業へ戻る。

 その時だった。

「黒田さん!」

 山口が声を上げる。

「反応が変わりました!」

 黒田は駆け寄る。

「どれだ?」

「この辺りです」

 測定器の針が小さく揺れている。

 西村が慎重に壁の表面を削る。

 拳ほどの大きさの鉱石が姿を現した。

 青みがかった灰色。

 見た目はただの石にしか見えない。

「見つけた……」

 黒田が小さく息を漏らす。

「これです」

「本当にあった」

 三人は顔を見合わせる。

 まるで宝物でも見つけたようだった。

「そんなに珍しいのか?」

 佐伯が尋ねる。

 黒田は大きく頷く。

「探索者にはただの石に見えるかもしれません」

「でも、この鉱石は魔力を通しやすい性質があります」

「測定器や通信機器の部品に使われるんです」

「人工では作れません」

「だからダンジョンでしか採れない」

「なるほど」

 佐伯は鉱石を見つめる。

 魔石なら価値は分かる。

 ただ、この石は自分には違いが分からない。

 それでも三人が嬉しそうにしている姿を見ると、本当に価値があるのだろう。

「これだけでも今日来た意味があります」

 黒田は慎重にケースへ鉱石を収めた。

「ありがとうございます」

「俺は護衛しただけだ」

「それでも十分です」

 山口が笑う。

「探索者がいなければ、ここまで来られませんでした」

「俺達だけでも、この鉱石は持ち帰れない」

 役割が違う。

 だからこそ、一緒に仕事をする意味がある。

 調査は予定より少し早く終わった。

 ケースへ機材をしまい、全員で地上への帰路につく。

 今日の成果は魔石より少ない。

 ただ、黒田達にとっては、それ以上の収穫になったようだった。



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