第三十話 一本の依頼
翌日の昼過ぎ。
約束の時間に合わせて神崎商店を訪れた。
店の扉を開けると、鈴の音が静かに鳴る。
「おう、佐伯」
作業台の前で神崎が手を上げた。
「終わったぞ」
差し出されたロングソードを受け取る。
鞘から少しだけ抜く。
刃には昨日まであった欠けが無い。
光を反射する刃先は新品のようだった。
「さすがだ」
「商売だからな」
軽く振ってみる。
重心も変わっていない。
手に馴染む感覚が戻ってきた。
「問題ない」
「当たり前だ」
神崎は笑いながら貸し出していた剣を受け取る。
「折らなかったな」
「努力したからな」
「その返しは気に入らん」
二人で笑う。
会計を済ませようとした時だった。
店の扉が開く。
「失礼します」
入ってきたのは四十代半ばほどの男性だった。
作業着姿。
腰には探索者庁の認識票ではなく、民間企業の社員証が下がっている。
「神崎さん、頼んでいた防具ですが」
「ああ、もう少し待ってくれ」
男は店内を見回し、佐伯に気付いた。
「探索者の方ですか?」
「まあな」
神崎が苦笑する。
「こいつは第五を主戦場にしてるCランクだ」
「腕は確かだぞ」
男は少し考えるような顔をした。
「ちょうど良かった、実は一日だけ探索者を探していまして」
「護衛か?」
「いえ、調査の付き添いです」
男は名刺を差し出した。
『東都資源開発株式会社 調査部 黒田』
聞いたことのない会社だった。
「何を調べる?」
「第五ダンジョンの十五階層です。最近、壁面に珍しい鉱石が見つかりまして。採掘ではなく、調査だけしたいんです」
「魔物の相手は?」
「私達では難しいので、探索者の方にお願いしたいんです」
「探索者庁は?」
「申請済みで、許可も下りています。探索者の紹介だけがまだでして」
神崎が腕を組む。
「どうだ、佐伯」
「悪い話じゃないぞ」
「調査は半日」
「報酬は?」
「十五万円です」
黒田は即答した。
「調査が終われば、その場で解散になります」
半日で十五万円。
悪くない条件だ。
しかも第五ダンジョンなら勝手も分かっている。
「いつだ?」
「明後日の午前九時です」
「分かった、受ける」
黒田は安堵したように頭を下げた。
「助かります。詳しい資料は明日お届けします」
名刺をポケットへしまう。
予定が一つ増えた。
調査そのものは難しくないだろう。
ただ、普段とは違う仕事も、たまには悪くない。
俺は手入れを終えたロングソードを腰に下げ、




