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31歳中堅探索者、今日も潜る  作者: 上畑 優平
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第二十八話 いつもの第五

 第三ダンジョンでの救助から数日が過ぎた。

 今日は東京第五ダンジョンへ来ている。

 特別な依頼も無い。

 こういう日は、自分の稼ぎを優先する。

 管理棟へ入り、認識票を受付へ渡す。

「おはようございます、佐伯さん」

 受付にいた榎本ありさが笑顔で迎えた。

「おはよう」

「今日は第五なんですね」

「依頼も終わったしな」

 ありさは認識票を返しながら言った。

「第三ダンジョンの話、少し聞きました」

「人を助けたそうですね」

「たまたまだ」

「ご本人はそう言いますけど、奥様が何度もお礼を言いに来てるって聞きましたよ」

「そうか」

「探しても佐伯さんが全然来ないから、困ってるらしいですよ」

「受付に用はないからな」

「少しくらい顔を出してください」

「考えとく」

 ありさは苦笑しながら転移陣を指さした。

「行ってらっしゃい」

「ああ」

 転移陣を抜ける。

 第五ダンジョン。

 相変わらず落ち着く場所だ。

 十一階層まで降りても景色は変わらない。

 気配察知。

 二体。

 コボルト。

 距離は十五メートル。

 ロングソードを抜く。

 一匹目が飛び掛かる。

 爪を振るう。

 半歩横へ避ける。

 すれ違いざまに剣を振る。

 首元を斬られたコボルトは、そのまま魔素へ還った。

 二匹目は仲間の後ろへ回ろうとする。

 逃がさない。

 一歩踏み込む。

 横薙ぎ。

 胴を裂かれたコボルトは短く鳴き、魔石だけを残して消えた。

 魔石を拾い、ポーチへしまう。

 歩き慣れた通路を進む。

 しばらくすると、人の話し声が聞こえてきた。

 角からそっと様子を窺う。

 三人組だった。

 見覚えがある。

 以前助けた新人探索者達だ。

 以前より装備が揃っている。

 盾役の盾には新しい傷が増え、前衛の剣も研ぎ直されていた。

「右!」

 盾役が声を掛ける。

 前衛が一歩引く。

 その隙に後衛の槍がコボルトの胸を貫いた。

 すぐに盾役が前へ出る。

 残った一匹を挟み込む。

 前衛が体勢を崩させ、槍がとどめを刺した。

 以前なら慌てていた場面だ。

 今は違う。

 三人とも自分の役割を理解して動いている。

「悪くないな」

 思わず口に出た。

 三人はこちらに気付く。

「あっ!」

「佐伯さん!」

 三人が駆け寄ってきた。

「こんにちは!」

「久しぶりです!」

「元気そうだな」

「この前言われたこと、ちゃんと話し合ったんです」

「無理に先へ進まないこと」

「一人で突っ込まないこと」

「危ないと思ったら戻ること」

 盾役が照れくさそうに笑う。

「まだまだですけど、少しは形になってきたと思います」

 佐伯は三人の装備を見回した。

 無駄な買い物はしていない。

 必要な物だけを揃えている。

 焦って高価な武器に手を出した様子もない。

「いい判断だ、装備も悪くない」

 三人の表情が明るくなる。

 大げさに喜ぶ姿を見ていると、少しだけ昔を思い出した。

 自分にも、あんな頃があった。

「ありがとうございます!」

「今日はどこまで行くんですか?」

「いつも通りだ」

「無理はするなよ」

「はい!」

 三人は元気よく返事をすると、再び探索へ戻っていった。

 その背中を見送り、俺も歩き出す。

 新人は少しずつ育つ。

 焦らず経験を積んだ探索者ほど、長く生き残る。

 俺はロングソードを肩に担ぎ、いつものように第五ダンジョンの奥へ向かった。


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