第二十四話 東京第三ダンジョン 4
十八階層へ降りる。
簡易測定装置を見る。
十七・九。
第六ほどではないが、確かに高い。
通路は今までより広い。
壁際には壊れた木箱、折れた棍棒、錆びた短剣。
ゴブリン達が集めた物なのだろう。
気配察知。
三体。
距離は二十メートル。
ゴブリンだ。
剣を持った個体が二匹。
棍棒を持った個体が一匹。
「最後まで変わらないな」
ロングソードを抜く。
ゴブリン達はこちらに気付いた。
短い鳴き声を上げる。
一匹目が飛び出す。
短剣を振り上げる。
狙いは悪くない。
ただ、人間相手の戦いを知らない。
剣を軽く傾ける。
金属が擦れる音。
短剣は弾かれ、大きく軌道を逸らした。
ゴブリンの体勢が流れる。
その隙を見逃さず、踏み込み剣を振り下ろす。
袈裟斬り。
肩口から腰まで切り裂かれたゴブリンは、声を上げる間もなく魔素へ還った。
二匹目は怯まない。
棍棒を頭上まで振り上げる。
遅い。
半歩前へ出る、懐へ潜る。
横薙ぎ。
刃が腹を裂く。
ゴブリンは数歩よろめく。
棍棒を取り落とす。
そのまま身体は淡い粒子へ変わり、床には魔石だけが残った。
三匹目は後退した。
仲間が倒されるのを見て、逃げることを選んだらしい。
ダガーを抜く。
投げる。
回転しながら飛んだ刃は背中へ突き刺さる。
ゴブリンは悲鳴を上げる間もなく転倒した。
歩いて近付く。
立ち上がろうとしている。
遅い。
ロングソードを振る。
一撃。
二つに分かれた身体は魔素へ還り、魔石だけが床に転がった。
三個の魔石をポーチへ入れる。
気配察知。
一体。
距離は三十メートル。
足音は重い。
ゴブリンではない。
「……一体か」
通路の奥から姿を現したのは、百八十センチほどの体格。
筋肉質な腕、粗末な革鎧、腰には剣。
目付きは鋭い。
ただのゴブリンではない、間違いなくホブゴブリンだ。
「なるほど…お前がいたのか」
ホブゴブリンは剣を抜いた。
咆哮はしない。
無闇に突っ込んでも来ない。
剣先を僅かに下げ、こちらの動きを窺っている。
ゴブリンとは違う。
戦い方を知っている。
先に動いたのは向こうだった。
一足飛びに踏み込んでくる。
速い。
剣が横薙ぎに走る。
ロングソードを合わせる。
金属がぶつかる音。
火花が散る。
力はそれほどでもない。
ただ、無駄が無い。
続けて二撃目。
今度は斜め上から振り下ろす。
後ろへ下がる。
剣先が鼻先を掠めた。
「やっぱりゴブリンとは違うな」
思わず口に出る。
ホブゴブリンは距離を取った。
深追いはしない。
こちらが反撃するのを待っている。
なら、誘いに乗ってやる。
一歩踏み込む。
ロングソードを振り下ろす。
受け止められる。
金属がぶつかる。
押し返される。
ホブゴブリンは間髪入れず踏み込んだ。
剣を突き出す。
狙いは胸。
身体を捻る。
紙一重。
切っ先が胸元を掠めて通り過ぎる。
隙が出来た。
魔力を身体へ巡らせる。
踏み込む。
剣を下から斬り上げる。
ホブゴブリンは咄嗟に腕を引いた。
完全には避けられない。
前腕を浅く切り裂く。
体勢が崩れる。
逃がさない。
返す刀で袈裟斬り。
肩から脇腹へ刃が走り、鮮血が舞い散る。
ホブゴブリンは数歩後退し、膝から崩れ落ちが、まだ立とうとする。
ただ、傷は深い。
睨みつけるように顔を上げたが、その身体はゆっくり崩れ、淡い粒子となって消えていった。
残ったのは魔石だけだった。
足音。
後ろから誰かが走ってくる。
「佐伯!」
宮本だった。村井、岩崎もいる。
三人とも息を切らしている。
「今のは……?」
「ホブゴブリン、一匹だけだ」
岩崎は端末を取り出す。
「十八階層、ホブゴブリン確認、初観測です」
「これでここもCランクか?」
宮本は苦笑した。
「いや、一匹だけなら微妙だろ」
「ただ、十八階層限定になるかもしれない」
「役所は面倒だな」
「探索者庁だからな」
十八階層。
確かに少し変わっていた。
ただ、それだけだ。
後は探索者庁が悩めばいい




