第十七話 臨時パーティ 6
十九階層の測定を終えた時点で、測定装置の表示は十七・四を示していた。
「少しずつ上がってますね」
彩花は端末を確認する。
「十五階層が十六・三、十六階層が十六・八、十八階層が十七・一です。誤差の範囲と言われればそうなんですが、上昇傾向はあります」
「十八・五を超えたら注意だったか?」
「はい。二十を超えると追加調査、二十五以上は立ち入り制限の対象になります」
修司は大剣を肩に担いだ。
「ならまだ大丈夫だな」
「そういうことです」
三人は二十階層へ続く階段を降りる。
通路を抜けると視界が開けた。
二十階層は広場のような構造になっている。
中央には大岩があり、その周囲には探索者が休憩に使ったと思われる木箱や樽が置かれていた。
彩花は測定装置を起動する。
「二十階層到達。魔素濃度十八・一」
「初めて見たな」
修司は表示を覗き込む。
「俺もです」
「正常範囲なんだろ?」
「はい。ただ、高めですね」
その時だった。
少し離れた場所から金属音が響く。
怒鳴り声。
魔物の唸り声。
誰かが戦っている。
「行くぞ」
三人は駆け出した。
広場の反対側。
三人組のパーティが戦闘中だった。
男二人、女一人。
探索者庁から依頼を受けているもう一組のCランクパーティだ。
相手はリザードマン三匹。
ホブゴブリン四匹。
数が多い。
前衛の男は肩から血を流していた。
「藤堂か!」
「お前らも来てたのか!」
「話は後だ!」
修司は大剣を構えた。
「佐伯!」
「右を頼む!」
「了解」
状況を確認する。
敵は七匹。
リザードマン三匹。
ホブゴブリン四匹。
藤堂パーティが加勢したことで人数は足りる。
修司は正面へ突っ込んだ。
ホブゴブリン二匹を引き受ける。
負傷した探索者は後退する。
残った前衛の男がリザードマン一匹を押さえた。
彩花は回復魔法を掛けながら後方支援に回る。
俺は右側へ回った。
ホブゴブリン一匹とリザードマン一匹がこちらへ向かってくる。
ホブゴブリンが先に飛び込んだ。
剣を振り下ろす。
受け止める必要はない。
半歩下がる。
空振り。
体勢が流れたところへ剣を振る。
一閃。
ホブゴブリンは魔素へ変わった。
続いてリザードマンが槍を突き出す。
間合いは長い。
避ける。
踏み込み、剣を振る。
鱗を裂く。
リザードマンは後退するが遅い。
二撃、三撃、身体は崩れ、魔石だけが床へ残った。
左を見る。
修司はホブゴブリンを吹き飛ばし、最後の一匹へ向かっていた。
戦況はほぼ決まっている。
残る魔物は二匹。
もう一組のパーティが押さえていた。
彩花は負傷した探索者へ回復魔法を掛ける。
すぐに決着はついた。
「助かった」
「今日は数が多いんだ」
「いつもなら三匹か四匹だぞ」
「七匹は初めてだ」
「測定は?」
彩花は装置を見る。
「十八・二です」
「俺達の装置も似たような数字だった」
女の探索者は端末を見せる。
「十八・一でした」
「やっぱり少し高いな」
修司は魔石を拾いながら言う。
「まあ、倒せるなら問題ない」
「佐伯らしいな」
「仕事は測定だろ」
「なら終わった」
彩花は記録を入力する。
「魔素濃度は上昇傾向。ただし基準値内。魔物の数は通常より多い可能性あり……こんなところですね」
「探索者庁は困るだろうな」
「異常ですと言うには弱いですし、正常ですと言うには少し気になります」
「役所向きの案件だな」
「役所向きですね」
修司は大剣を担ぎ直した。
「よし、帰るか」
「焼肉だ」
「割り勘なら行く」
「奢れよ!」
「十五万の三分の一しか貰えないのに無理だ」
「現実的だな」
「探索者だからな」
三人は笑いながら階段へ向かった。
測定装置の表示は十八・二のまま変わらない。
今日の仕事は終わった。
あとは報告書を書いて、飯を食うだけだ。




