第十五話 臨時パーティ 4
十七階層へ到着した頃には、時計は十二時を回っていた。
通路の先には少し広い空間がある。
壁際には古い木箱が積まれ、床には焚き火の跡も残っていた。
昔の探索者が休憩場所として使っていたのかもしれない。
「ここなら昼飯にちょうどいいな」
修司は大剣を壁へ立て掛ける。
彩花も荷物を下ろした。
俺はリュックから弁当箱を取り出す。
蓋を開ける。
卵焼き。
ウインナー。
冷凍食品の唐揚げ。
昨日の残りのきんぴらごぼう。
「相変わらずだな」
「何がだ」
「弁当」
「自分で作ってるだけ偉いだろ」
「否定はしません」
彩花は笑いながらコンビニのおにぎりを取り出した。
修司はカップ麺だ。
魔道具式の加熱器を使い、お湯を沸かしている。
「由香がいた頃は弁当作ってくれてたんだけどな」
「懐かしいですね」
「もう二年くらいか」
「二年三か月です」
「細かいな」
「覚えてるだけです」
彩花は少し笑う。
修司は麺をすすった。
「最初は向こうでも探索者やると思ってたんだ」
「結婚して、子供産んで、今じゃ大阪第八で講習の講師だ。人生分からないもんだな」
「探索者辞めたのか」
「完全には辞めてないですよ、月に一回くらい潜ってるみたいです」
「へぇ」
修司は俺を見る。
「由香が抜けてから色々探したんだぞ」
「サーチャーか?」
「そう。何人か組んだけど駄目だった。前に出たがる奴、後ろしか見ない奴、戦闘出来ない奴、索敵だけ上手い奴、結局続かなかった」
「俺でいいのか?」
「良くない。愛想悪い、口数少ない、酒飲み、弁当」
「最後は関係ないだろ」
「でも信用は出来ます」
彩花はお茶を飲みながら言った。
「探索者って強さだけじゃないんですよ、お金をごまかさない、無理をしない、撤退する時はちゃんと撤退する、困っている人を見捨てない。一緒に潜るなら安心です」
「そんな評価されたことないな」
「俺はしてるぞ」
修司は即答した。
「彩花は?」
「してますよ」
「俺は?」
「半分くらいです」
「何でだよ」
「測定装置壊したことあるから」
「一回だけだ!」
「三十万円でしたね」
「高かったな」
「払ったの俺だけど」
三人は笑う。
久しぶりに誰かと飯を食っている。
話題は昔の仲間。
装備の値段。
最近高くなったポーション。
そんな話ばかりだ。
ソロは気楽だ。
誰にも気を遣わない。
帰りたくなったら帰ればいい。
ただ、たまにはこういう昼飯も悪くない。
「そろそろ行くか」
修司は立ち上がる。
「次は十八階層だ」
「食後すぐ動くのか」
「カップ麺一個で腹一杯になる歳じゃない」
「三十四歳が言う台詞か?」
「探索者は胃袋だけ若いんだよ」
彩花は荷物を背負い直す。
俺も空になった弁当箱をしまった。
次の測定地点までは、あと十分ほど歩けば着くはずだった。




