第十二話 臨時パーティ 1
三日後。
東京第五ダンジョンから帰宅した俺は、夕食を終え、風呂上がりにソファへ座っていた。
テレビでは芸人が騒いでいる。
冷蔵庫から取り出した缶ビールを開けた時だった。
スマホが震える。
画面を見る。
高瀬。
珍しい。
「もしもし」
『こんばんは』
「どうした」
『暇ですか?』
「探索者に暇な日は無い」
『じゃあ空いてますね』
「……用件は?」
少し笑う声が聞こえた。
『探索者庁から依頼です』
「また第三か?」
『違います、東京第六ダンジョンです』
「第六?」
『はい、最近第六で魔物が少し強くなった気がするそうなんです』
「気がする?」
『気がするです』
「何だそれ」
『探索者庁もそう思ってます』
高瀬は苦笑した。
『出現する魔物は変わっていません、階層構造にも変化はありません、魔素濃度も管理棟で測定した限りでは正常範囲内です。ただ、東京第六を主戦場にしているCランクパーティ三組のうち、二組から似たような報告がありました』
「他のパーティもか」
『はい、ホブゴブリンが少し速い、シャドウウルフが少し硬い、リザードマンの攻撃が重い、そんな感じです』
「曖昧だな」
『曖昧なんです。探索者庁としては、まず明確な指針が欲しいそうです
魔素測定装置を貸し出して、普段通り探索しながら記録を取ってもらう予定です』
「なるほど」
『それで、佐伯さんを指名したパーティがあります』
「俺の知り合いか?」
『藤堂修司さんと藤堂彩花さんです』
「ああ、久しぶりだな」
『詳しい話はお二人から聞いてください』
『私は連絡役なので』
「報酬は?」
『知りません』
『探索者庁経由の臨時パーティ依頼ですから、条件はパーティリーダーから説明があると思います』
「役所だな」
『役所ですから』
「分かった、修司に連絡してみる」
『お願いします』
通話は切れた。
俺は連絡先を開く。
藤堂修司。
最後に一緒に潜ったのは二年くらい前だったか。
元々は四人パーティ。
修司が前衛。
彩花が回復役。
弓と索敵を担当していた女性が結婚を機に関西へ移住した。
今は夫婦二人で活動しているはずだ。
呼び出し音は二回。
すぐに繋がった。
『おう!佐伯か!』
「久しぶりだな」
『探索者庁から連絡がいったか?』
「聞いた、何で俺なんだ?」
『彩花が信用できるサーチャーが欲しいって言ってな
測定装置持って戦えて、索敵も出来る奴なんて少ねぇだろ?
消去法でお前だった』
「褒められてる気がしない」
『一応褒めてる』
「条件は?」
『探索者庁から一パーティ十五万、普段通り探索して、測定装置で記録を取るだけだ
異常を検知した場合は追加調査で別途報酬が出る』
「一人十五万じゃなくて、三人で十五万か」
『当たり前だろ、そんな美味い仕事なら毎日受けてる』
修司は笑う。
『まあ、普段の探索収入もあるしな、悪くない条件だと思うぞ』
「確かに悪くない」
『どうする?』
少し考える。
第五で潜れば十万前後は稼げる。
ただ、久しぶりに修司たちと組むのも悪くない。
それに、東京第六はしばらく行っていない。
「分かった、一日だけ付き合う」
『助かる!集合は明日の朝八時、東京第六ダンジョン管理棟前な』
「了解」
通話は切れた。
修司は相変わらず騒がしい。
彩花は多分苦労しているんだろう。
俺は空になった缶を流し台へ置いた。
ソロは気楽だ。
ただ、たまには誰かと潜るのも悪くない。
もっとも、修司がいる時点で、静かな探索にはならないだろうけどな。




