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目は口ほどに  作者: とこ
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俺もキラキライケメンに…?

 そんなこんなで無事、カロイドが皇太子()の侍従に選ばれたので、本日はいよいよ3か月ぶりにカロイドと再会できる日なのである。


「ミラージル殿下、カロイド様をお連れいたしました」


  俺が、この三か月でまた体重を落としおデブからぽっちゃり程度にはなった身体で自室に座り、カロイドを待っているとコンコンとドアをノックされる。扉の向こうからはメアリの声が聞こえた。


「ああ、入ってくれ」


 俺は、高鳴る気持ちを抑えるように平然とした声で答える。

 ちなみに、今は平静を保っているが、昨日の夜は久しぶりにカロイドと言葉を交わせるというワクワクで、7時間くらいしか眠れなかった。


  俺の返事に合わせゆっくりドアが開く。

 皇族に謁見する際、許しがない限りその姿を視界に入れてはならないという決まり故、俯き気味に俺の目の前まで来たカロイドが深々と頭を下げる。


「帝国の若き太陽、ミラージル皇太子殿下にお目見えいたします。カロイド・ゼールと申します。恐れ多くもミラージル皇太子殿下の侍従としてこれから務めさせていただきます」

「カロイド、顔を上げてくれ。これからよろしく。」

「はい、不束な身ではございますが尽力を……ラージ!?!」


 カロイドはゆっくりと頭を上げつつ言葉を紡ぐ。しかし、その言葉も俺の姿を見た途端ぴたりと止まり、僅かな間の後カロイドは思わずという様子で俺の愛称を叫んだ。その反応に俺は思わず失笑してしまう。


「ぷはっ!そうだよカロイド。改めて、俺がラージことミラージル・フォードリアだよ。これからよろしくな!」


 俺がそう言いながら片手を前に差し出し握手を求めるも目の前のカロイドはまだわなわなと震えている。やはり、今まで平民だと思っていた人間が実は皇太子でした!と言われる衝撃は相当なものだったのだろうか。


「っ…だったんですか」

「え?なに?」


 相変わらずわなわなと震え、俯きながら拳を握るカロイドが、小さな声で何かをつぶやく。しかし、小さな声はうまく聞き取れず聞き返すとカロイドは顔を上げ、キッと俺を睨み口を開いた。


「今まで俺が受けた試験は全部出来レースだったってことですか!!!!」


 カロイドは切羽詰まったような、怒りが滲むような声色で俺に訴えた。俺はその訴えの内容に俺の口角は思わず引き上がる。

 そう。目の前のこの男は、平民だと思っていた友人が皇太子だったという驚きより、今まで自分が受けてきた試験を実施したのが友人で、自分は贔屓で選ばれた、ということが許せないのだ。何も清廉潔白が正義だとは言わない。しかし、他者に厳しく自身に甘い物より自身に厳しく、それなりのプライドがある者の方が好ましいのは事実だ。


「そういうと思ったから、俺はお前に自分の正体を隠してたんだよ。俺が皇太子って知った上であの話をしてたら断ってただろ?」

「…はい、おっしゃる通りです。でも、自分の力で勝ち取った立場だと思っていたものが実がコネだったと後から知るなんて、そっちの方がショックです。」


 そういいながら、ギリ、とカロイドは悔しそうに奥歯を噛みしめる。


「はは、コネだなんて、そんなわけ無いだろ」

「ですが…」

「第一、将来俺と共に治世を行う人間を、俺の一存で決められると思うのか?そんな事父上が許すとでも?」


 俺がそこまで言うと、カロイドはハッとした顔をした。こいつは一瞬、贔屓されていたかもしれないという事実に頭に血が上ってしまっただけで、冷静になれは頭の良い男だ。俺の発言に納得したのだろう。その表情は既に明るかった。


「落ち着いたか?」

「はい、取り乱してしまい申し訳ありません。」

「いいよ、俺も黙っていて悪かった。今までの試験は決して出来レースじゃないから安心してくれ。…それと、敬語もやめて今まで通りため口で話してほしい」


 カロイドは最初、俺の希望に戸惑っていたようだが俺が「お前だって平民っぽい俺にため口使わせてただろ」と要望を曲げない様子を見せると身内の中だけ、という条件で了承してくれた。


「それにしても、俺が皇太子だったってことについてはそこまで驚かなかったのか?」


 ソファーで寛ぐ俺の傍ら、美味しいお茶の入れ方をメアリに教わっているカロイドに問いかける。


「そりゃ、最初は驚いたさ。でもなんか、確かになぁって腑に落ちた感じがして、それよりも試験が出来レースだったのかもしれないってことが頭に来たなぁ」

「腑に落ちた?」


 言っている意味が分からず聞き返す。俺は図書館に行く時には安物の服を着て、さらに特徴的な色の髪を隠していたはずなのに、どこに皇太子かもしれない?と疑う余地があったのだろうか?

  すると、不思議そうに首をかしげる俺にカロイドが答えてくれる。


「はじめは完全に平民だろうなって思ってたけどさ。何回か会ってるうちに細かい所作の綺麗さとか、持っている知識量とか…あとは、手。爪はきれいに整えられてるのに掌には剣を扱う様なタコや豆があったし」


 確かに平民なら、マナーなどは習っていないから所作も乱雑になるし、手にタコや豆ができるような作業している者は爪もそれなりに荒れているだろう。しかし、そこから急にこいつ、皇太子かも!とはならないだろう。


「でも、それだけじゃ流石に皇太子かも、なんて考えにならないだろ。貴族なんて基本剣術を嗜むものだし、所作だってある程度身についてるしさ」

「ああ、もちろん俺もその時は実はどこかの高位貴族の坊ちゃんが変装してきてるのかなって思ってたけど…本格的にもしかして、って思ったのは最終試験で皇帝陛下にお目見えさせていただいたときかな。」


  俺はカロイドの言葉に驚く、父上にはカロイドと以前から知り合いで、ラージと名乗っていると伝えてはいる。そして、ネタ晴らしは自分でしたいと伝えていたので父上のうちからラージという名前が出ることは無いと思っていたのだが。


「…父上が俺の名前を出したのか?」

「はは、そんなはずないだろ。顔だよ顔」

「顔…?」


 カロイドの発言に余計意味が分からずさらに首をひねってしまう。そんな俺の様子にカロイドは小さく笑ったのちきちんと答えを教えてくれた。


「皇帝陛下の顔を一目見た時、“ラージに似てる”って思ったんだ。いや、正確にはラージが皇帝陛下に似てるんだけどさ。だからもしかして…?って思ったんだよ。まさか本当にラージが皇太子だなんて思ってなかったからさっきは相当驚いたけどな」

「へぇ…俺ってそんなに父上に似てるか?」


 答えを聞いた後でもなんだか腑に落ちずペタペタと自分の頬を叩く。


「えぇ、ラージ自覚無いのかよ。ていうか、三か月前に会ってた時も似ていたけど今は前より痩せてるから更に似てる」

「ほんとか?まだまだ身体を絞らないとだけど、やっぱり見た目を褒められるのは嬉しもんだな」


 昔から見目の美しく、能力の高い物を妻として娶ってきた皇族は美形が多い。そんな中でも父上は格段に美しく、そんな父上に似ているといわれるのは満更でもないどころかかなり嬉しい。


お読みいただきありがとうございます。


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