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暗雲が垂れ込める。
先ほどまで真夜中ではあるが雲一つない空をしていたにも関わらず、
何処から来たのか無数の雲が上空を激しく流れていく。
(気でも違えたか……)
絶望に打ちひしがれたように頭を振り続けるアキラを見てパスクアは落胆する。
今までにない物を持ち出したので何をするのかを期待したのだが、
魔法使いなどとも言い難く、昔見た祈祷師のように音を立て祈っているようにしか見えない。
(雨ごい程度の物に期待していたとは)
雲の流れは変わったが所詮その程度。
もはや今後は若干の期待すら捨てるべきであろうとパスクアが考え始めた頃、
眼前の音以外、獣の威嚇のようなうなり音がどこからか聞こえてくる。
激しく流れる雲により月光が遮られ、闇と化した中で自分の足元に光る物とは別の光……
上空から差し込む光が自分を照らしている。
(雲が開けたか、雨すら降らせられないとはな)
そう思い見上げた空から、光が1直線に自分へと落下を始めた。
(あぁぁぁ、ギターソロ超きんもちぃぃぃぃぃ……!)
前まではもうこの辺で止めようぜと思っていた超絶に長いギターソロも、
弾けるようになったらもっと欲してしまう。
今、この瞬間こそ主役が自分であると。
今、自分は生きていると。
今、世界の息吹を感じると。
そう感じさせてくれるのがギターソロであると。
アキラはここに来て初めて理解した。
ギターヒーロー達よ、すまなかった。
パスクアは自分のこの悶絶テクニックをしっかりと聞いてくれているだろうか?
この演奏に釘付けにならないようでは所詮程度が知れるなと、
どんどん上から目線に意識が変わっていく。
その位の高ぶりではあったがもうソロも終盤となり曲も終わりへと向かう。
物語の終点へと向けてより指と頭の動きを加速させていった。
『なっ………!』
激しい衝撃に目が眩みかける。
見上げた空から降りて来た光はパスクアの額を強打し、意識を混濁させる。
圧倒的な力で地面に押しつけられそうになる頭を、
四股の力で何とか踏ん張って持ちこたえると即座に体を起こす。
(なんだ!?)
再度空を見上げると、
激しく動く雲の隙間から細かい光が漏れる。
今まで幾度となく見て来たはずだが、自分の思っているものであると理解が追い付かなかった。
あれほどの衝撃を体に受けたことがあっただろうか?
状況の整理をする時間を取らせないかのように頭上が光ると同時に衝撃が降りてくる。
肩、足へと落ちる光は触れると激音と同時に己の体をマヒさせ、力をそぎ落としていく。
(拙い……!)
咄嗟の行動で後ろに飛ぶ。
自分と入れ替わるように直線の雷が地面に着地し、その足元を蹂躙した。
己の扱う雷とは違う、何か大きな物質で叩かれたかのように凹んだ地面がその衝撃の強さを物語っていた。
身近に寄せていた光る石を見る、主からの命令により探していた物だ。
何に使うかまでは聞くことはなかったが、熱のこもった命令に
この石が重要なものであるという事は間違いなかった。
石を持って逃げるべきだろうか?
何処へ?
恐れおののいて、おめおめとこのパスクアが?
『……否ァ!』
パスクアは手を高く掲げると魔法の詠唱を始める。
今まで様々な者と戦ってきた。
人間に限らず強そうな同族、魔物など様々な者と戦い打ち負かしてきた。
その中にはこの者とは比べられない程の覇気を持った者もいた。
ただ珍しい物を持っているだけ。
ただ見た目が珍しいだけの小さき者に我が負けるわけがない。
そう考えながら呪文を紡ぐ。
『稲妻の……!』
口が動き始めると同時に呪文を唱えるために掲げた手が
上から力強く叩き落とされた。
力強く叩かれた手は腕を下へ引っ張り、そのままボールを投げるように一回転する。
腕は一度の回転で収まらず、プロペラのように回り続ける。
『ぐあぁぁぁぁぁぁぁ!』
感じたことのない痛みが思考を狂わせる。
己の体が壊れる? そんな事があるだろうか?
どんな魔法にも撫でられるような痛みしか受けなかった自分が。
外れた腕をもう片方の手で押さえると反撃を止め、無我夢中に雷を避ける。
同じ場所にとどまらない様飛び跳ねて移動を重ねると、
それを追いかけるように雷が落ち地面を掘り起こす。
かなりの巨体であるパスクアの移動による振動を超える振動がじわじわと迫ってくる。
気が付くと採石場の空洞から脱し、アキラと同じ地上線に降り立つ。
正面に見る敵は頭を垂れた状態で振り子のように体を振っていた。
『こちらを見てすらいないのに追う事が出来るのか……!』
魔法は通常、詠唱のアクションと対象の目視が必要で、
それを怠ると予想外の場所へ結果が出てしまうことがある。
相手に正確な結果をもたらす為にはそこは避けられない部分なので、
術者の目線を読んでタイミングを掴み、避けたり反撃したりすることもできるのだ。
だが、今自分を狙っている術者にはそれはない。
そしてあったとしても魔法発動の間も無いので反撃も難しい。
つまりは防戦一方、良く言えば。
現実は詰んでいる。
空洞から抜けた後も何とか追手から逃げ続けたがそれにも終わりが訪れる。
申し訳ございません、コロナの影響で余裕がありません。
かなり執筆が遅れますがエタらないように気を付けます




