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「良く戻ってきてくれた、感謝する」
兵舎の前あたりまで戻ってくると偶然、同じく戻ってきたアンディと鉢合わせた。
王都への道を教えてほしいと話すとこちらもちょうど話があるとの事で再度アンディの部屋に通された。
「王都への行き方については他の者に簡易ではあるが地図を描かせる、それを見ながら進めば問題無いはずだ。それより君たちにお願いしたい事があるんだが」
前のめりに座ると、小声で二人に話しかける。
「危険は重々承知なのだが再度、採石場へ向かってほしいんだ」
アンディは先ほどの領主からの話を掻い摘んで説明する。
「応援を出せないって王都でも何か起こっているのか?」
「わからないがそこまでする重要性が見いだせないという事なのかもしれない」
ハフの町は王都に統括されている為、重要産業部分に問題が生じた場合は解決に動くと考えていた。
しかしながら実際は静観となったためそこまでの価値をこの町に見出してはいないのだろう。
「有象無象の衆に依頼はしたそうだが実際に来てくれるかどうかはわからない。かといって我々が奪還に向かうのも領主に禁止されている」
動きの取りようがない、そういうとアンディはうつむき気味に頭を抱える。
「そこで君たちに採石場へ向かってもらい、より突っ込んだ状況確認をお願いしたいのだ。状況が好転していれば我々も行動が取れるようになるかもしれん」
ただ防衛するだけでは敵がどうなったかの判断も出来ない。
がんじがらめの中で活路を見出すにはとにもかくにも情報が必要だ。
「もちろんそれなりの報酬は支払う」
「うーん、そうは言っても流石に危険な事だし……」
アキラはエンヤと戦った時の事を思い出す。
恐らくだが、雑兵程度の強さの魔物に苦戦を強いられたのだ。
束になってきたり、あれよりも強い者が現れたら対処できるかが疑問だ。
「あのさー」
二人が沈黙している状態に申し訳なさげにラシェルが入ってくると
「その報酬って採石場の石とかでも貰っていいのかな?」
「なに?石が必要なのか? そんなものなら見に行ったついでに幾らでも取っていって構わない」
本来なら領主に報告すべき事だがこの状況だ、多少無くなってても誰も気が付かんよとアンディはやや投げやりな言葉を発する。
「ほんと!アキラ、それならちょっと調べに行ってみようよ」
「え!?マジで言ってんの!?」
思わず叫ぶと、意外な発言にアキラは眼を丸くする。
ラシェルはアキラの耳元に口を近づけると囁くように呟く。
「あたしたちには特殊な力があるじゃん、昨日あんたも確認したでしょ?」
昨日あれだけ色々試していたのに初めての情報を聞きすぎて頭から消えていた。
そうだった、石像を粉にした力があるじゃないか。
他にも試した曲で何とかなりそうな気がしたので
「わかった、どれだけ力になれるかわからないけどやれるだけやってみるよ」
先ほどの叫びから一転、落ち着いた声色でアンディに返事をした。
「本当か!度々言うが本当に感謝する!」
かなりの力で握手をされ、手がしびれそうになるがそれほど喜んでいるという事だろう。
詳しくは現地にいるトニーに聞いてほしいと言われた後、ちょうどタイミングよく入ってきた兵士から地図を受け取ると、軽く礼をし部屋を後にした。
扉を閉めるまでアンディは体を90度に倒して礼をしたままだった。
「ありがとうラシェル」
兵舎を出て早々にラシェルに礼を言った。
「ふふーん、上手く行ったじゃん。これで石取り放題だよ」
腰についたポシェットをポンと叩くと鼻息を吹かす。
普通なら石を何個も持って帰るのは重量的に難しいが俺達には無制限の袋があるので持ち帰りも苦では無い。
「一応この現地の物も収納できるみたいだからさ、幾らでも詰め込めると思うよ」
また夜にでもこの中に入れたアレを確認したいんだと話す。
そういえば初めて会ったときに倒したエンヤをポシェットに放り込んでいた。
「あの人は生ものと生物は持ってこれないって言ってたけどこっちの物を入れる事自体は出来るっぽいね。ただ入れた物がどうなってるかはわからないんだけど」
出した瞬間干からびたエンヤが出るのか、それとも存在自体が消滅しているのか。
直ぐにでも確認をしたいがこんな町の中で引き出すと騒ぎになりかねない、後ろ髪をひかれるがラシェルの言う通り夜にでも一緒に確認させて貰おう。
「なんにせよ噂の石を手に入れる事が出来ればいいな、まずトニーに会いに行くか」
生還してからその後どうなっているのか、好転してれば良いなと思いつつ採石場の入り口へと向かった。




