表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/43

15

「この匂いが僕のお腹を刺激するんだ!」


カトラリーを使用せず、器を持ち上げると流し込むように液体を飲み込んでいく。

固形にも近いこの液体を飲み物のように飲んでいくその様は、さもクジラを想像させるほど壮大に見えた。


「これならそうなっても仕方ないよな」


クジラとなったエアを横目で見つつ、目の前にある器を見ながらアキラは呟いた。

香辛料の香りが食欲をそそり、自分のお腹が減っている事を理解させようとする。

もしこれに毒が入っていたとしても今なら食べてしまうかもしれない、いや今じゃなくても食べてしまうか。

スプーンを差し込むと、すくい上げ口に放り込む。

甘辛い味が口全体に広がった。


「どう?美味いでしょうよあたしのカレーは!?」


やたらアピールが激しいラシェルをよそに速度を上げて咀嚼する。

調理環境、具材……そもそも世界すら違うのに昔懐かしい味がするのはなぜだろうか?

まるで母親が昔作ってくれたような懐かしさすら感じるこの味・触感、そして小麦粉分量。

なんだか頭の中にパッケージすら浮かんでくるような、そうなんか黄色い感じの……


「……ってこれバリアントカレーじゃねーかっ!!!?」


思わず大声をあげてしまい周りが固まる。

さすがに声を上げずにはいられなかった道理で懐かしいはずだ。

一番売れてるインスタントカレーだし過去数えきれないほど食べている。


「あ、やっぱりわかる?故郷のカレーだもんね」


じゃじゃーんと後ろからパッケージを取り出し見せつけてくる。

そうそうこれこれ、これだよな。

いや、これだよなじゃなくてお前の配合じゃないんかい。


「アキラさんの故郷の料理なんですね、これはとっても美味しいですよ!」


エアほどではないがこちらも食が進んでいる。

口周りについたルーも気にならない程に感動しているようだった。


「まぁこれが美味い事に異論は無い。それはさておき、お前なんでこんな所にいたんだ?」


こいつも転生者なら人目につかない所で放置されたはずだ。


「あー、気が付いたらココにいたんだよ」


地面を指さし、倒れていた場所を指し示す。


「んで、気が付いてからとりあえず持ち物とかの確認や料理できるかの確認してたらこの子がものすごい勢いで走ってきたんだ」


飲み物を飲んでいたエアが急に嘔吐(えず)く。


「さっき見ただろ、エンヤ()。あれに追われててさ、雰囲気的にやばいと思って料理してた包丁でこう……」


手を後ろに引くと刺突するかのように前に突き出す、伸ばしきった後プルプルと手が震えていた。


「そしたら思ったよりあっさり倒すことが出来たんで、あー良かったなってね。それで料理作ってた最中だったからお裾分(すそわ)けしたのさ」


周囲の安全確保よりも先に転生後の実験で料理してたのか、どんだけ料理好きなんだよこいつは。


「食べてる最中にこの子の話を聞いてさ、さっきのエンヤが他にもいないか確認しに行く事にしたんだ。

あんなのにまた襲われたら厄介だしね。見つけてもらったら教えてもらってさっき見たいにブスッと私がケリつけようとしたらこの子がやってたって話さ」


こんな小さいのになかなかやるじゃん!と肩を壊れそうなほど叩きまくる。

見た目は可憐だが中におっさんが入ってるかもしれないな。


「ラシェル姉ちゃんの料理を食べたらさ、何だか急に強くなったような気がしたんだよ!これならエンヤも倒せると思って、見つけたからすぐ魔法を詠唱したんだ。そしたら凄い力が出せてさ、一瞬で退治できたんだ!」


エアは空になった器を横に、キラキラした目で成果をアピールする。


「そういえばそれに巻き込んでアキラ兄ちゃんごめんね、エンヤみたいにならなくて良かったよ」


「あぁ、お陰様でな。まぁ奴のおかげで直撃は免れたからかもしれないけど体の丈夫さには自信があるんだ」


これも恐らく、いわゆる特典の影響なのだろうが黙っておく。

特典についてはまた二人きりの時にラシェルに聞いておきたい。


「食事は全てのエネルギーの源ってね。さー、食べ終わった事だし二人の町に向かおうか?」


容器を片付けちゃうからちょっと待ってねと、使っていた器を回収し始める。


「じゃあ私はちょっとトンネルまでの道を見てきますね」


リジーはそういうと上空へ飛ぶべく風速足(ウィンドステップ)を唱える。


「えええぇぇぇぇぇっ……」


前に見た時よりも遥かに力強く飛び上がり、一瞬で豆粒程度の大きさになっていった。

暫く眺めていると豆粒がどんどんと大きくなりリジーだとわかる距離まで来ると静止し、周囲を確認していた。

戻ってくると、魔法の制御が利かなかったとの事だが道の確認は出来、日は落ち始めているが、何とか夜までには町に戻れそうな距離にいるそうだ。


「本当は皆さんを抱えて飛べればいいんですけど精々1~2人位が限界でして……」


頭を下げるリジーに構わないよと伝えると、指し示す方角へ歩き始めた。

その後の道中はエンヤ等に襲われることなく進み、リジーの言っていた通り日が落ちきる頃に無事町へとたどり着くことが出来た。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ