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暴力嵐ヴァイオレントストーム!!!!」


予想をしていた落下の軌道と異なり、というか明らかに重力に反したようにエンヤ()が直線に飛んでくる。

頭の上をエンヤが通過するかと思うと、まるでトラックにぶつかったような衝撃がアキラを襲う。


「うッ!!!」


そのまま衝撃に体を押し流され、エンヤを追いかけるように後ろに吹き飛ばされる。

浮遊し横っ腹を握りつぶされそうな圧力を受けたまま木に激突し、木が崩れるまま共に地面に突っ伏した。



何が起こった?


横に倒れた木に手をかけ、思考を巡らそうとした矢先、打ち付けた頭に痛みが来ると共に、胃にとてつもない不快感が襲ってくる。

緊張しているとき、電車に乗っているときにもあっただろうか、神様私は何か悪いことをしたでしょうかと、痛み・吐き気との同時進行を何とか神に祈りながら耐え続けた。


わずかな時間と共に体内を襲う脅威は去っていき、ありがとうと神へのお祈りを止めると力なく立ち上がる。

同じ苦痛を味わったであろうエンヤもすぐそばで倒れていたが、自分の血の気が引いていくのがわかった。

頭がつぶれ激しく血を流して動かず、見ただけでも失命していることがわかる。

今までは殴った魔物が消滅しており、死体を目にした事がなかったがこうしていざ見えてしまうと感じた事の無い恐怖が押し寄せる。

幸運な事に自分は無事だが、場所が違えばそのエンヤのようになっていたかも知れないのだ。


呼吸を整え、先ほどの事を思い返す。

衝撃を受ける前に聞こえた声、あれは魔法ではないだろうか。

はっきりと聞こえたので恐らくこの近くに詠唱者がいる筈だ。


「兄ちゃん大丈夫か!!!!」


そう思っていると、遠くから人が近づいて来ているのが声でわかった。

小柄で、少年と思しきその人物は近づくや否やアキラに手を当て、


「ごめんよ、ケガは無い!?」


くまなく全身を触わる。

アキラに服の汚れ以外、ケガらしいものが見えないとわかると安堵し、バツの悪そうな表情で頭を下げた。


「エンヤを狙って魔法を撃ったんだけど、体に隠れてて兄ちゃんが見えなかったんだ。巻き添えにしてごめんよ」


先ほどの魔法は彼が使ったらしい。

見た目に反してのこの威力……恐らくこの子が……


「エア!!!!!!」


上空から隕石のように降りてきたかと思うと、その勢いでリジーは目の前にいる少年に飛びかかった。


「何処をほっつき歩いていたのよ!!!心配ばかりさせて!!!」


今にも泣き出しそうな、似つかわしくないきつめの表情でエアを見つめる。


「ごっ、ごめんよ。ちょっと色々あって帰らなかったんだ・・・」


姉から目を背けるとと申し訳なさげに小声で答える。

アキラにはその目が何処か泳いでいるような気がした。


(まぁなんにせよ見つかってよかった)


「それより姉ちゃん、この人に誤って魔法が当たってしまって」


その言葉でリジーもハッと我に返り、慌ててアキラの容態を確認する。


「アキラさん体は大丈夫ですか!?今すぐ町に戻って……ってアレ?何ともなかったりします?」


リジーもあれこれとアキラを触診するが、どこもケガらしきものは見当たらない。


「まぁ吐き気が少しあるくらいで体は何ともないよ」


「そうですか……、エアの魔法を受けると普通は無事にはすまないと思うのですが・・・」


本当に大丈夫ですか?と服をもぎ取る勢いで迫ってくるので


「もしかしたらあのエンヤがある程度衝撃を吸収してくれたのかも知れないな」


慌てて別の可能性、アキラだったかもしれないエンヤの死体を親指で示す。

今頃気がついたのかヒッと声をあげリジーは後ずさり、アキラの体で視界に入らない位置を陣取る。

エンヤが視界から消えた事に安心したのか、


「どちらにしろエアが無事で本当に良かったです、日が暮れる前に町に帰りましょう」


リジーはトンネルの方向を指さすと、すぐさま先頭を切って歩き始めた。

後姿はスキップでも始めそうなほど躍動感があり、結果にとても満足しているようだった。


(散々な目にあったけど見つかってよかったな、戻ったらどこか休める所を教えて貰おう)


疲れた体に鞭を入れ、リジーに倣って(ならって)歩き始めると小さな障害物にぶつかった。

エアは足を止め、うつむいたまま微動だにしない。


「どうした、姉さんに付いていかないのか?」


「ごめん、俺まだ用事中だから帰れないんだ……」


そういうエアの顔を、アキラは腰を落として見つめる。

どことなく口元が緩んだ様に、なんだろうか……、この表情は何度か見た事がある気がした。

道端で拾ったエロ本を隠している子供のような。

そう、必ず手に入れたいものがあるが誰にも知られたくないような表情。


「エア、何言ってるの!この変にいると危ないのよ?」


「このエンヤを連れてきてほしいって頼まれてるんだ。連れてきてくれたらまた良いもの上げるよって」


「えっ?誰かほかにも生きているのか?」


思わず聞き返してしまった。

敗走中だったのでどれくらいの人が取り残されたかまではアンディも把握していないだろうとは思うが、

エア以外にも生き残った人間がいるという事なのだろうか?


ただどういう事だろう。

普通に考えたらこのエンヤをどうこうするよりする隠れて町まで逃げる方が得策な気がする。

そう考えると自分が逃げるためにこの子をおとりにしたか、それとも脅されているとかだろうか。


「頼まれたって、誰に?」


「それは……その……」


思春期の恋バナをするように、話し手のエアは唐突にモジモジし始めた。

どうやら脅されているととかではなく自主的に連れていく気だったようだ。


「あーなんかごめん。それってあたしのせいなんだ」


声が聞こえたかと思うと、突如物陰から人が現れた。

今回から毎日掲載ではなくなります

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