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最強の所以

全編通じて誤字脱字・表記揺れなどのを微修正しました。

 


「――秘剣・竜激刃りゅうげきじん!」

 アイリスが全身に炎の魔力を纏って、咆哮。目にも映らない速さの連撃がエリザを打ち据えた——ように見えた。

「エリザっ!?」


 僕が声を上げたその時、エリザの姿が消え、アイリスの炎の連撃は虚空を切った。その後、ぐらり、と、アイリスが傾き、ドサッと地面に倒れた。どうやら完全に気を失っているらしい。アイリスの後ろにはエリザが剣を振り抜いた姿勢で立っている。さっきまでアイリスの正面にいたはずのエリザがまるで瞬間移動でもしたかのように、だ。というか、瞬間移動でもしたんじゃなければ説明がつかない。


「アイリス、私に“これ”を使わせるなんて、成長したね」

「エリザ様、まさかあれを使われるとは……!?」

「何が起きたんだ……?」

 エリザが倒れたアイリスに背を向けて、僕の方を向いた。

「私の魔力特性は知っての通り、『凍結』。そして凍結の力の本質は“停止”と“固定”。最大出力の凍結で、時間の流れを凍結・固定させたんだ。それで、私だけがその止まった時の中を自由に動ける」

「時間を凍結――!?」

 時間を止めて、その中を自分だけが行動できる……!?

「なんてめちゃくちゃな能力なんだ……」

 つまり、エリザが瞬間移動しアイリスが突然倒れたのは、止まった時間の中で移動してアイリスを攻撃する、その過程が認識できなかった結果だ。


「えへん、私が最強だっていうのはこういうことだよ。ま、魔力消費も多いし、止められる時間は私の体感で2秒くらいだけどね」

「エリザ様、魔力消費が多かろうと2秒だけだろうと、無詠唱で予備動作もないんだからなんのデメリットにもならないでありますよ。魔力消費がいくら多くてもエリザ様のふざけた魔力量でしたらやろうと思えば連発できますし、エリザ様は2秒あったらなんでもできるでありますし……。ケイン様、今の戦いをご覧の通り、竜の剣聖たるアイリス殿をも上回る剣腕に、このとんでも能力、おそらく古今東西、未来永劫、エリザ様より強い存在が現れることはないでしょう。安心してヒモになられると良いかと思うであります」

「確かに、僕もちょっとくらいは役に立とうなんて馬鹿らしく……いやいや」

「だ~か~ら~、お兄ちゃんはいてくれるだけで十分なんだってば~!」

 なんて話していると、


「はっ!? いたたた……」

 アイが目を覚まし、むくりと起き上がった。

「アイ、大丈夫か?」

「あたし、負けたのよね……?」

「僕にはわからないけど、どうやらそうらしいね」

 手を差し出してアイを助け起こす。どうやら大したダメージはないらしく一安心だ。立ち上がったアイはポンポンと体の土ぼこりを叩き落としている。

「はぁ……あんた、あんだけ強くてまだ手札残してたってどうなってるのよ……」

「けどさっきのが最後の一枚だった。アイリス、成長した」

 エリザは僕以外と話すときの仏頂面だけど、どこか満足げに見える。本当は仲が良いんだろう。


「ふんっ、なんで負けたのかすら認識させてもらえないほどの実力差で成長したもなにもないわよ。とりあえずあたしの負け。どっちが妹かって話はあんたが妹ってことでいいわよ」

「やった」

「……ただ、あんたが気づいてないようだから言っておくけど、別にあたしはもともとケイン兄の妹じゃないし、妹分みたいなもんでしかない。あんたは創世神の神託を受けた正統な妹。あんたが勝っても立場は変わらないわよ。ケイン兄があたしの幼馴染のケイン兄ちゃんなのは変わらないし」

「えっ……!?」

「じゃ、またねケイン兄ちゃんっ」


 あっけにとられるエリザを尻目にアイは僕にウインクをひとつ。ひらひらと手を振り、歩いて街の方へ去っていったのだった。


「…………ア、アイリスッーー!」


 ……戦闘はともかく口ではエリザの負けだったな……。




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