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破壊神と妹勇者  作者: 朝寝東風
第一章
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四面楚歌 後編

 フィリップの発言を受けてしばし固まった。


 ポーカーフェイスはたぶん崩れていない。


「良かったではありませんか、ライ様」


 メイリーズが沈黙を破る。


「家はどうするんだ! 俺に味方すればただでは済まない!」


 俺が威圧までして遠ざけようとしたのは家のためだ。


 それなのに、これでは家ごと巻き込まれるだけだ。


 俺が剣を振れば侯爵家には勝てる。


 俺が金で人を雇えばその後の混乱を収められる。


 それでも家には相当な負担を掛ける。


「本当はライ様を遠ざけて問題を解決したかったんだ」


 フィリップをそう言うと、一枚の紙を取り出した。


「これは?」


 俺はそれを受け取り、内容を確認する。


「ディーン様の廃嫡とライ様が養子となり侯爵家を継ぐのですか」


 メイリーズが要約する。


「これがあるのなら、最初から言えば!」


 俺が怒る。


「兄殺しの悪名は侯爵になってからも響く。なら何も知らない内に侯爵閣下と家で始末を付けたかった」


「俺……私のためか?」


 怒涛の展開だ。


 なんとか外向きの口調に戻して、平静を装う。


「これでも君の義兄だからね。命懸けの演技の一つや二つは出来る積りだ」


 フィリップが疲れた顔で笑顔を作る。


 俺の頬を涙が伝った。


 何もしていないと思っていたのに。


 本当は俺を巻き込まない様に討ち死にする覚悟だったとは!


「義兄上は馬鹿だな」


「一人で切り込む積りだった義弟には言われたくない」


 フィリップは多少憮然として言う。


「兄弟喧嘩も終わってお互いの言い分も分かったのです。そろそろ仕事を開始しましょう」


 感動的な兄弟の会合を無視するメイリーズ。


 まさか?


「もしかして、知っていたのか?」


「いいえ。私はライ様が知っている事は知れますけど、ライ様が知らない事は知れません」


「そうなのか」


 どういうカラクリなのかは教えて貰えそうに無い。


「侯爵家の内紛の噂、更にはマリーメイア様がここに来た時点で、フィリップ様は敵では無いと知っていました。そうで無ければ部屋を提供しませんでしたわ」


 メイリーズの追加情報で色々台無しだ。


 高確率でこうなると知っていたのか。


「マリーメイアがどうかしたのか?」


 ただのブラコンだろう?


「ライ様と妹が結婚し、その子にフリージア家を再興して貰おうと言う保険だ。公国ならば、飛び火しても暗殺者が派遣される程度だろう」


 フィリップがマリーメイアが来た訳を話す。


「聞いていないぞ」


「それは、最初から話す気が無かったし、全員で帰るなら流れる可能性が高かった」


「俺が参戦する事で事態が変わったと」


「そうだね」


「ライ様とマリーメイア様の婚約は確実になり、フィリップ様とマリーメイア様は公国を中心に生活する、と言う事ですわ」


 メイリーズが言う。


「そうなのか?」


「マリーメイアに関しては概ねそう考えている。私は帰る積りなんだが?」


 フィリップが半分肯定する。


「ライ様が進めている事業を誰かが引き継がないといけません。フィリップ様以外の候補はおりません」


「事業? 石鹸販売か?」


 フィリップが不思議そうに聞く。


「大帝国の復活ですわ」


 メイリーズが自信満々に宣言する。


 流石のフィリップもどう答えて良いか分からない。


「メイリーズ、それはまだ早い。とにかく大帝都の奪還が先だ」


 俺が現実的な落とし所を提示する。


「勝算はあるのか?」


「ある」


「それは?」


「それはフィリップ様がこの話に乗るか次第ですわ」


 メイリーズが割り込む。


 このまま俺が方針を語るのはまずいのか!


 相手がフィリップだと思って油断した。


 何気ない会話で情報を抜こうとするとは、流石だ。


「乗っても良いが、メイリーズ嬢は何者だ?」


「壊れた玩具箱、と言えば分かりましょう」


「まさか! 何故帝国の戦略兵器がこんな所にいるんだ!?」


 メイリーズは戦略兵器だったのか?


 魔法発生器官よりやばい存在なのか。


「実家が没落して、奴隷として売られたのです」


「……」


 フィリップが口をパクパクして次の言葉を出せない。


 地球で言うのなら、露天商で核ミサイルを購入する様なものだ。


「理由はどうで在れ、メイリーズは解き放たれた。そして俺の大事な仲間だ」


 俺の発言を受けて、フィリップも持ち直す。


「その通りだ。メイリーズ嬢はメイリーズ嬢だ」


 胸を凝視して言ったら台無しだ。


「では、乗ってくださいますね?」


 メイリーズ、その言い方はどうなんだ?


「もちろんだ」


 揺れる胸の誘惑に負けて軽返事をするフィリップ。


「なら、末永くよろしくお願いします、旦那様」


「えっ?」


 フィリップは事態が飲み込めず混乱した。


「私に乗ると言う事はそういう事でございましょう?」


「乗るのは計画の方で……」


「この体に何かご不満が?」


「嫌、それは無いが……」


「義兄上、計画に参加するのならメイリーズを妻に貰って欲しい。幸い、王国には気に入った胸が大きい女性がいないのだろう?」


 いたら絶対に連れて来ている。


 ミススにも手を出さない。


「それはそうだが……」


 もう一押しか。


「ミススとも話は付いてますのよ。だから両手に花ですわね」


 メイリーズが爆弾発言をする。


 こうなってはフィリップも合意に傾くしか無い。


 それにしても、ミススもグルなのか?


 緩やかな協力関係以上の何かがあるのか?


 留守が多いとはいえ、屋敷内の人間関係が複雑怪奇になり過ぎている。


 俺の癒しは、外のニコルくらいか? でも彼女も裏がやばい。裏がやばく無いのは子作り一直線のポルルだけ。


 ミルファだ! ミルファが残っているじゃないか。


 でも彼女は好みから外れる。


 癒しが無い……。


 妹が勇者召喚されるまで我慢だ!


「ライ様、いつまで放心しているのですか?」


 メイリーズがキリッと俺を睨む。


 フィリップが棺おけに両足を突っ込んだ顔をしている。


 どうやら結婚には合意させられたみたいだ。


「済まない。妹は可愛いと言う宇宙の真理を再確認していたのだ」


「そうだろう。マリーメイアはかわいいから、ついつい悪戯したくなる」


 俺の発言を聞いてフィリップが追随する。


 フィリップはシスコンの同士だったか。


 これは幸先が良さそうだ。


「では、計画の詳細を解説します」


 メイリーズは俺達を無視して話を進める。

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