大帝都奪還に向けて 前編
その晩、朝食の面々にポルルとサリスを加えたメンバーで会議室に集まった。事情を知らない者も、かなりの大事になると感じていた。
最初はフィリップが話し出した。
「諸君、良く集まってくれた。これからの方針について話がある」
皆が頷く。
「これからライを中心にかなり大きな動きが起こる」
知っている者は静かで、知らない者は当然だろう、と言う顔だ。
「前提条件として、ライは奴隷を解放する」
奴隷身分では動き辛いので当然だ。
社会制度上の必要性は認めるが、俺も好きでは無いし、丁度良い。
マリーメイアは純粋に喜んでいる。
ミルファは多少困惑している。
「ライはカッタルイ公国の第1公女クローディア様を妻に迎える事になる」
「何ですって!」
マリーメイアが驚く。明らかに不機嫌になっている。
他の皆は祝福してくれた。
「ポルルも、子作り!」
「ポルルちゃん、何を言っているの~!」
マリーメイアが赤面してポルルに怒鳴る。
これは文化の違いだ。無視だ、無視。
「分かっている。ニコルとサリスも合わせて面倒を見よう」
ニコルはこの場にいないが、こうなっては責任を取るほか無い。
「おまけですが、今後ともよろしく」
サリスのウィットに富んだ言い回しだ。
この4人だとクローディア以外の子からは継承争いが起きないから楽だ。
ただ、これからの事を考えると色々増えそうだ。
「公国とはこれから話し合いを持つが、十中八九彼女が嫁入りする」
これでは公国に利が乏しい。
そこで俺が狩ったレッサードラゴンが大事な役目を果たす。
「クローディア様の嫁入りと平行して、私は公国で爵位を得る」
フィリップに関しては表向き二重臣従だ。
実際は王国の爵位を継承しないだろうから、彼に取ってはかなり良い話だ。
「フィリップ兄上、そんな事出来るの?」
「ライが公国の爵位を取るのに否定的だから、義兄の私が代理だ」
「なるほど」
公国は俺との関係を強めたい。
それに俺の功績に報いないと国の威信に関わる。
フィリップを代理に立てる辺りなら納得してくれるだろう。
俺も裏では爵位と土地を押し付けられるだろうが、表向きはフィリップの総取りだ。
「爵位に合わせて、私はメイリーズを公国での正室に迎える」
「末永く、よろしくお願いします」
メイリーズが立ち上がって会釈をする。
拍手など祝福が飛ぶ。
「ごほん。それとミススを愛人として公国の家に迎える」
フィリップが多少気まずそうに言う。
「必ず元気な子を生みます」
ミススもポルル同様、そういう考えだ。
「フィリップ兄上が責任を取るのなら、私から言う事はありません」
マリーメイアが折れた。
今朝の状況では手だけ出して捨てると考えていたのだろう。
そういう貴族は多いし、フィリップにもその手の噂はある。
真偽は不明だが、噂を流したのはフィリップ自信だろう。
綺麗過ぎる貴族はカモだ。
「ライの目標は大帝都の奪還だ。そのために私は南進の準備を始める。準備期間は1年弱だ」
フィリップが大目標を宣言する。
流石に驚く者が多い。
「南進の詳細は私が指揮を取りましょう」
メイリーズが発言し、フィリップが肯定する。
「最後に、王国に関してだ」
「王国ですか、兄上?」
マリーメイアが不思議そうに聞く。
「半年前の事故はライを狙った暗殺だ。下手人は寄り親の嫡子ディーン・エルトール。フリージア家は、暗殺未遂の責任を問わねばならない」
フィリップが力強く言う。
これは宣戦布告だと皆も気付く。
「フィリップ兄上! 何を悠長に言っているのです! 今すぐに兵を上げ、あの豚を血祭りにあげましょう!」
マリーメイアが我を忘れて興奮している。
「心配無いぞ、マリーメイア。既に策は万全だ」
「兄上様? それなら良いのです」
俺が落ち着かせる。
半年近く経っているから、マリーメイアは俺がフリージア家が見限った考えないか心配したのだ。実際、俺も見限られたかと疑った。
「マリーメイアはライと同じ反応だな。今日は危うく士道不覚悟を責められて斬られるところだったよ」
フィリップが笑い事の様に言う。
「最初から説明していれば、私も我を通す必要が無かったのですけど」
俺は肩を竦めて言う。
お互いがお互いを巻き込まないで処理したかった故の激突。
最後は俺の力押しが勝ったとはいえ、思い返すと少し恥ずかしい。
「男の友情ですわ」
メイリーズが茶々を入れる。
兄弟喧嘩を掌の上で楽しんでいた元凶らしい台詞だ。
「それで、家はどう動くのです?」
マリーメイアが聞く。
彼女は賢いから、色々大事になるのを理解出来る。
煙に巻く案もあったが、3人で協議した結果、本当の事を言う事にした。
「私、ライ、マリーメイアが家を継ぐ可能性は0だ。これは他言無用で頼む」
「でも兄上様なら!」
「話は最後まで聞いてくれ」
フィリップが止める。
「ライにはフリージア家の血は一滴も入っていない」
「そんな!」
「ライはエルトール侯爵家の次男であり、ディーンの双子の弟だ」
「ええ!」
「ライ、いや、ライ・エルトール様は侯爵家嫡男として侯爵家を継ぐ。ディーンの廃嫡は既に侯爵閣下の決定事項だ」
「どういう事?」
混乱の極みにあるマリーメイア。
他のみんなも頭を捻っている。
貴族特有の面倒事だ。
致し方ない。
「落ち着きなさい! ライ様がディーンを討ち、侯爵になります。それだけの事です」
メイリーズが一括する。
なんともシンプルだが的確な説明だ。
「そんな! 兄上様が兄上様じゃないなんて……。もう一緒に居られないんですね」
マリーメイアがショックを受けている。
「マリーメイアはライ様の嫁に出す予定だったが、取り止め……」
「行きます! 行きます!」
マリーメイアの立ち直りは早かった。
「兄上様、これからはずっと一緒ですよ!」
「これからもよろしく頼む」
こんな返しの方がしっくり来る。
兄と妹の線を越えるのにはまだ時間が掛かりそうだ。
今はマリーメイアが嬉しそうに笑っているのが一番だ。




