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破壊神と妹勇者  作者: 朝寝東風
第一章
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大帝都奪還に向けて 中編

 俺は毒沼と化した西の沼に来ている。


 イライジャとの話は概ねこちらの希望通りになった。俺はほとんど話し合いに参加せず、義兄夫婦が勝手に色々やってしまった。


 その結果、馬車馬の如く働く事になったが、悪くは無い。剣で斬ったり魔法をぶっ放したりして解決出来る問題は大歓迎だ。


『ここら辺で良いか?』


『辺りに人はいないよ』


「浄化!」


 俺は《光魔法》で毒沼を浄化する。


 毒々しい色が消え、綺麗な沼に戻った。


『これで3割程度終わったか』


『忙しいね』


『夜にしか動けないのが面倒だが、後3日もあれば全部終わるだろう』


 大規模な浄化は簡単だが、目に見えない場所や少し離れた水溜りの処理に時間が掛かる。何も気にせず全力で浄化すれば半日で終わるが、カッタルイの首都から丸見えになる。それは少しまずい。


「おお! 偉大なるワンダラス様の御業だ!」


「本物だ!」


 俺は信者候補達に手を振る。こんな毒沼まで来てキャンプを張るとはご苦労な事だ。


 頭から足まで白いローブを纏い、顔にはフルフェイスの仮面をしている。手袋をはめる事で肌の露出を防いでいる。


『凄い、凄い!』


『さくら入りとは言え、これの対応も疲れる』


 メイリーズの策略で光の従属神な月の神をでっち上げる事になった。俺は姿を現す気は無かったので、今の衣装を纏う事にした。名前はこっちには無い地球の言葉にしておいた。勇者なら一発で分かるはず。人々に「素晴らしい様」と呼ばれるのは少々気が引けるが、これも妹のためだ。


 フィリップに頼まれて浄化の奇跡を俺が行うと盗賊ギルドを通じて噂を流布した。後はツアーガイドよろしくさくらが浄化予定地で待機する。その晩に俺が空を飛んで現れ、浄化する。


 浄化した結果が目の前にあるだけ、効果は抜群だ。


 俺はそのまま無言で空に飛び上がり、虚空に消えた。


 実際はカッタルイに全力で飛んで帰っただけだ。


『恥ずかしい! 仮面が無ければ絶対にやっていなかった!』


『宿主様、最高だったよ! ついでに称号も増えたよ』


『なんだとっ!』


 《月の神》が本当に増えていた。


 言った者勝ちでは無いだろうに……。


『信者がいるからね』


『それなら納得だが、気に入らん』


『我慢、我慢』


 レイラと悪態を付きながら屋敷に帰る。


「お帰りなさいませ、旦那様」


 裏庭に着地した俺をアルフレッドが迎えに上がる。


「ご苦労。何かあったか?」


「実は癒しの奇跡を求める上級貴族がおりまして……」


「受けるしか無いと?」


 メイリーズが断らなかった時点で結果は決まっている。


 しかし過程の決定権は俺にある。


「左様です」


「公王に恩を売るか?」


「段取りは出来ているとの事です」


「明日以外なら、日時は任せる」


「畏まりました」


 次の日、俺はポルル達を連れ立ってイブゲスの奴隷商に出向いた。フィリップとメイリーズも別件のために一緒に来た。


 事前に解放したメイリーズは別にして、今日はミルファ、サリス、ポルル達蛮族全員を解放した。サリスは勝手に解放状態だったが、イブゲスは何も言わず解放料金を徴収した。これで全ては闇の中だ。


 錬金術士とその妹は会社設立後に解放すると決まった。秘密を知りすぎている分、ここで解放するのは逆に危険だとメイリーズとアルフレッドに教えられた。


 俺の奴隷に手を出す馬鹿はいない。しかしフリーの錬金術師の妹に手を出す輩はいる。その場合でも俺が出向くだろうが、相手が貴族だと後片付けが面倒だし、公王家に要らぬ貸しを作りたくない。


 解放作業が終わったので、次は購入だ。


 サリスとポルル以外は護衛付きで先に帰した。二人は俺の愛人と言う事で残る事を主張したので認めた。サリスの精霊による情報とポルルの野生の勘は非常に頼りになる。


「では見せて貰いましょう」


 ソファーの中心に女王の様に座っているメイリーズが宣言する。


 左右に座っている俺とフィリップが完全に添え物だ。


「もちろんです、奥様!」


 イブゲスは大喜びで対応する。


 彼は数日前にレッサードラゴン5匹をフィネガンに売ったのを知っている。他にもハーピー200羽を含め、かなりの大規模商談だった。レッサードラゴンの死体はフィネガンが仲介して、俺が公国軍陣地に卸した。その際に第2公子から何か言われるかと思ったが、彼は病気療養中らしい。


 もう1匹のレッサードラゴンは戦闘中に魔法発生器官が損傷して自壊した事になった。穴だらけのため状態も良く無いと言う診断書がでっち上げられた。フィリップの進言で、このレッサードラゴンは素材を加工して俺達が使う事にした。なお、クローディア一行に振舞った肉の代金はちゃんと徴収しておいた。


「分かっていると思うけど、伯爵領と公女領の人員が要るの。変な女を紹介するなら、他の店に行くわよ」


「全て承知の上でございます!」


 イブゲスの滝汗からして、嘘だ。


 恐らく綺麗所を俺とフィリップに押し付ける算段だった。


 安全のためにメイリーズが仕切っている。なんでも兄弟揃って信用ならないそうだ。


 伯爵領は毒沼の1/3程度の大きさだ。残り2/3には第1公子派の重鎮が当主を務める伯爵家が2つ新設された。フィリップ達の叙爵は略式では終わっており、近々大規模なセレモニーをするそうだ。


 公女領はクローディアの領地であり、不凍湖の北辺りに位置する。嫁入りしても最初の息子はこの領地を継ぐと言う条件で希望する土地を貰えた。建設予定の町は金鉱脈と首都を繋ぐ好立地にある。


 公国はここを渡したく無かったが、俺の資金力と魔力による超スピード開発を期待して最終的には認めた。クローディアの息子が継ぐのも、最大限の妥協の結果だ。


 金鉱脈を中心に不凍湖の西は第1公子の派閥が入植する予定だ。調査部隊のマイクも晴れて子爵になるらしい。開発が成功すれば伯爵になれるらしく、張り切っている。あの土地の大きさから言って、伯爵領が4つ出来るだろう。


 最後に、レッサードラゴンが居た砕かれた山も入植予定地だ。第2公子の派閥の人間に渡されたため、詳しくは知らない。イライジャとしては土地を渡して懐柔策を取ったのだろう。メイリーズの分析では、第2公子以外は満足している。栄誉と資金源、さらに両手足までもがれた第2公子がどう動くは注意する必要がある。


 公国は入植ラッシュが近々始まるので奴隷商も必至に人材を集めている。俺の功績もあり、この店では俺達が一番最初に大量購入する権利を持っている。大金を積めばそれを無視して買えるが、イブゲスが売りはしない。俺達の資金力を一番良く知っている部外者はフィネガンとイブゲスだからだ。


 俺が入植予定の領地に思いを馳せていると、イブゲスが第一弾を持って来た。

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