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破壊神と妹勇者  作者: 朝寝東風
第一章
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狂った人形姫 前編

 商売の話はシャンプーとリンスのメモを錬金術士に見せると決めて終わった。老舗の買収を含め、来月には何らかの結果が出るだろう。


 留守の間の収支、奴隷の追加購入、貴族のお茶会の話と続いた。俺が留守でも俺を主人とする奴隷が買えるなんて、どれだけ奴隷魔法が杜撰か分かる。


 お茶会の話題は俺とクローディアの婚約が中心だったらしい。それと滅びの黒龍による被害確認。南方の土豪は話題にも上らなかったそうだ。


「婚約か」


「公国を武力で滅ぼさない限り、婚約は確定です」


 メイリーズがきつく言う。有無を言わせぬ口調だ。


「婚約しか無いか」


 俺は白旗を揚げる。メイリーズが選択肢を出している内に、俺が後悔しない結果に繋がりそうなのを選ぼう。


『寛大な私が許してあげる』


 レイラは安定の無視一択だ。


「そうなると嫁入りか婿入りを始め、様々な可能性があります」


 公国長女を王国子爵次男の嫁として出す事は本来ありえない。家柄によっては子爵嫡男なら候補に上がる。フリージア家では掠りもしない。


 そうなると家柄より功績だ。


 ワイバーンロード1匹を討伐。


 レッサードラゴン6匹を討伐。レッサードラゴンが東に動けば首都が壊滅の危機だったため、結果的に公国の未来を救った。


 準戦略兵器である魔法発生器官を6つ提供。7つの内、1つは俺が使用済みだ。とはいえ、公国の国力から考えれば10年に1つ手に入れば良いほうだ。


 公国存亡の危機に発展していた負け戦を勝利に変えた。山賊に負けてそんな事態に陥るのは問題だが、公国は軍事力が近隣で一番弱いから仕方が無い。


 クローディアの命を救った。公王家の人間が山賊に殺されたとあっては世界中で笑いものになっていた。


 開拓地と有望な西の沼地を解放した。その後は毒沼になったが、解放の功績は不動だ。それに俺なら浄化出来る。浄化出来るのがばれたら一生監禁コースなので扱いが非常に難しい。


 公国唯一の金鉱脈を確保した。ハーピー討伐は軍でも出来たが、公王の継承権争い関係で後20年は塩漬けにされていた。


「これだけだよな?」


 俺がメイリーズに確認する。


 リストアップすると結構やっているのが分かる。


 普通ならこれ一つを達成すれば子々孫々まで不自由しない生活を送れる。


「石鹸が公王家御用達になった事、エルフを保護し帝国南部に魔王の手勢がいると報告した事、蛮族を救い公国の南方政策を大いに助けた事、等が抜けています」


 メイリーズが容赦無く抜けを指摘する。


 エルフの一件も何故か筒抜け出し、メイリーズは本当に何者だ?


「そうか」


「更には滅びの黒龍を倒した事」


「! 待て、それは俺では……」


「流石に言い逃れは出来ませんわよ、《プロト・ブレイバー》様?」


 メイリーズが獲物を狙う様な笑みで言い放つ。


 何だと? 何故知っている?


「何故それを?」


「各国にはある程度資料が残されております。大国なら勇者の前に来る勇者を警戒しています」


「警戒か」


 十中八九、国と敵対し、国を一人で潰せる異世界人。


 それが野放しともあれば、何か手を打ちたいだろう。


 打てる手があるかは、別として。


「幸い、ライ様はライ・フリージアの肉体を持っております。記憶も持っている事から、融合転生の一種では無いですか?」


「……そう思っておけ」


 何故ここまでばれている?


 頭を必至に使って考えるが、答えが出ない。


 メイリーズは最初から知っていた。


 それしか思い付かない。


 だが、そんな女が奴隷として売られるなんて有り得ない。


 帝国が外に出すには危険過ぎる。どんなに価値があろうと帝国で監禁か殺害する。


 俺の良い様に運命すら捻じ曲がらないと不可能だ。


 俺? 俺の良い様になんて錯覚だ。


 誰かの望み通りに運命が改変されたとしたら?


 心当たりが一つある。


 光の神だ。


 仮にも神の一柱だ。


 この程度は出来るはず。


 何処までがシナリオ通りなんだ?


 分からない。


 分からないが、今は妹のためにも、ここを乗り切る。


「大丈夫ですよライ様。私は貴方の味方ですもの」


 その目に明確な狂気を宿し、メイリーズは宣言する。


「今はそうだろう」


「はい、今はそうです」


 もはや否定すら無い。


「メイリーズの目的は何だ」


「大帝国の復活。私はそのために調律された人形ですもの」


 大帝国。


 2000年前に滅びの黒龍が滅ぼした、世界を統一していた軍事国家。


『あぁ! これって「狂った人形姫」だ』


 レイラが急に声を上げる。


 ここで何かを言うのは珍しい。


『何か知っているのかレイラ?』


『人為的に作られた《サポートシステム》よ。不完全な模造品で、出来は悪い。でも人からしたら、神の如き叡智の使い手よ』


 大昔の人族が神々の知恵を盗み、作り上げた存在。人族の処理限界からして《サポートシステム》の真似は出来なかった。知識を詰め込む段階で躓いた。


 そこで器用万能な《サポートシステム》の再現をやめ、一点特化な存在を生み出す事にした。それが「狂った人形姫」や「壊れた玩具箱」と呼ばれる存在だ。


 一説によると彼女らが黒龍を呼び出し、大帝国を崩壊に導いた。真相は闇の中だし、レイラの知識にも何も無い。


 大帝国の正統な末裔を自称する帝国にはこの技術が残っていたのだろう。


 少なくても、俺の目の前にいるメイリーズは、狂っている事も含め、成功体だ。


 闇のナンバー2である黒龍の次は狂った神もどきか。


 これは黒龍とは違う意味で気を引き締めて掛からないと、やばい。

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