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破壊神と妹勇者  作者: 朝寝東風
第一章
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陰謀渦巻く 後編

 夕飯は何事も無く終わった。


 俺の機嫌が直ったのを悟ったのか、マリーメイアは終始笑顔だった。フィリップも感情を殺せる程度には持ち直した。メイリーズは終始にこやかに振舞っていたが、彼女の頭の中ではどんな悪辣非道な策が芽吹いているのだろう。


 聞きたく無いが、今晩聞かないといけない。


 メイリースの部屋に行く前に、俺はミススを自室に呼んだ。色々今後の話をするためだ。


「ミスス、これはポルルにも言っていないが、近々解放する」


「分かりました、ライ族長」


 二人だけの時は族長か。


 これだけ使い分けられる蛮族が居るとは誰も思わないだろう。


 ミススが特別なのか、公国が蛮族について誤解しているのか。


 年齢的に、唯一の大人なのも意味があるのかもしれない。


「そこでフィリップとは何処まで進んだ?」


「まだ、何も」


 まだ。


 即ち何かする予定があるという事か。


「義兄上は胸が大きい女性に目が無い」


「存じております」


 この分では揉ませる程度のサービスは既にしていそうだ。


「商売女に手を出して、屋敷の秘密を漏らされては堪らない」


 その手の女は全員盗賊ギルドと繋がっている。近付くだけでも危険だ。


「それは大変です」


「どうするかはミスス次第だ。俺の方で許可は出す」


 そう言って一枚の紙を手渡す。


 フィリップとそういう仲になる事を公認する一枚だ。


 俺の意向を無視して動けるが、公国の法律上は俺の奴隷だ。許可無く他人と寝る事は許されていない。


「種を貰っても?」


「良いぞ。最初からそれが狙いだろう?」


 俺があくどい笑みで返す。ミススは静かに笑う。お互い承知の上でフィリップを嵌めるのだ。


 ミススは別にフィリップが好きなわけでは無い。狙いは種だ。


 蛮族は蛮族同士、更には土豪と婚姻を繰り返した結果、新しい血が入る余地が乏しい。そこに俺とフィリップが来た。蛮族からしたら「もっと北」から来た新しい血だ。


 一族のためには何が何でもして種を貰う積もりだ。


 ミススがメイドをやっているのも本当に経験のためかと疑う。メイドなら夜にフィリップの部屋に入っても怪しまれない。蛮族衣装で歩き回ってはアルフレッドに止められるのは確実。


 フィリップは蛮族なら子供が生まれても認知しなくて良いと考えている。


 認知されない事がミススの目的だとは露も知らずに。


「それでは早速今夜、搾ってまいります」


 ミススが優雅に一礼して退出した。


 俺はフィリップの将来が心配だ。


 学は有る。この半年で成績を落としていなければ主席で卒業だ。


 顔は良い。上位貴族の令嬢と色々浮名を流している。まだ責任を取る事態にはなっていない。


 政治も出来る。ここに派遣されたのだ。それ相応の修羅場は潜っているはず。


 だが、汚い駆け引きは苦手だ。メイリーズに招待された時点でチェックメイトだと気付いていない。


 しばらく書類整理をしていると、メイリーズの準備が整ったと報せが来た。俺が出向くと伝えておいた。本来なら逆だが、あっちには資料がたくさんあるはず。一々取りに誰かを走らせるのは時間の無駄だ。


「ライ様、ご足労頂き、ありがとうございます」


「詮無き事。早速本題に入ろう。時間は俺達の敵だ」


 事態は目まぐるしく動いている。


 公国上層部の動きを注視しながら、俺達の願いを通す。


 早ければ明日の昼には招待状が届いて、その日の晩餐か翌日の朝食に誘われる。


 どんなにずれても一日だ。


 今晩中にメイリーズとは大まかな方向性だけは決めておかないといけない。フィリップには悪いが彼も王国もこうなっては部外者だ。


「ではライ様が留守の間に起こった簡単な案件から始めます」


 高級石鹸は公王家御用達になった。現在も安全確認を継続しているが、50日以上使い続けても大丈夫と結果が出た。


 このままなら、小規模の工場を建設する必要がある。


 一般石鹸はフィネガンと相談して、既存の石鹸屋に売るか対価を貰った方が良いとアドバイスを貰った。


「フィネガンはモンスター買い取りだけじゃなかったのか?」


 俺が聞く。


「今は買い取りを専門にしていますが、グループ全体の総支配人です」


 奴隷商の時も顔を出したのはそのためか。


 ワイバーンの魔法発生器官を軍に卸したのも彼か。


 思ったより大物だったな。


「金には困っていない。対価を貰おう」


「ではその様に」


「石鹸だが、次はシャンプー。それが出来たらリンスを考えている」


 俺が纏めたノートを手渡す。


「これは面白いですわね」


 髪が長いメイリーズは興味心身だ。


「詳しい差配は任せる」


「分かりました。これは専門の商人を雇った方が良いでしょう」


「あてはあるか?」


「何店か小さな老舗に目を付けています」


「なるほど」


「一般石鹸を対価に買収を黙認して貰います」


「任せた」


 確実に売れる商品を渡せば石鹸屋は黙る。そして老舗の販売ルートを使って、革新的新商品のシャンプーを売り込む。メイリーズはえげつない。

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