表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
破壊神と妹勇者  作者: 朝寝東風
第一章
89/136

陰謀渦巻く 中編

 ポルルは一族の下に向かい、サリスはサークの世話をしに行った。サークは蛮族の裏庭で飼う事になった。サリスがエルフ縁の戦馬だと解説したため、専門家であるらしいサリスが世話役になった。


 フィリップとマリーメイアには夕飯の時にまた会おうと言って分かれた。マリーメイアが何か言いたそうだったが、メイリーズが上手く場を治めてくれた。


 肝心の俺は風呂に浸かっている。


 屋敷には多数の風呂があるが、これは俺専用のユニットバスだ。この世界では珍しい形をしているが、やはり小さな風呂は落ち着く。壁を必要以上に厚くしたため、聞き耳を立てられる心配は無い。魔法的な防御も完璧だ。


 肩まで浸かって、考えを纏める。


 《復讐者》の称号は危険だ。


 損得勘定抜きで復讐対象を斬り殺したい衝動にかられた。


 あそこでフィリップを殺しても状況は好転しない。


 それ処か、豚を殺すのが最終目標なら悪化する。


 それすら考えられなかった。


 マリーメイアが視界に入らなければ、確実にフィリップを殺していた。


 《妹愛の勇者》の称号のおかげだろうか。


『そうだよ』


 レイラが解説屋の真似事を開始した。


『《殺戮の勇者》になっていたら、どうなっていたんだ?』


『屋敷どころか、カッタルイの人族皆殺しだね』


 レイラがさも当然のように言う。


『物騒すぎるだろう!』


 そうなると分かっていたのなら、前もって知らせてくれ。


 レイラは無自覚だが、どうも意図的に知識が欠けているみたいだ。仕込みは白の者だろうか? 一番でかい落とし穴だけは手遅れになるまで気付かせない感じだ。


 それにしても、この世界の称号はマジで危険だ。


 妹が変な称号を手に入れない様に注意しよう。


 今は何とか落ち着いた。先程みたいに攻撃的な思考に支配される事も無いだろう。


 そもそも、何故フィリップを斬ろうと思ったか。


 ライ・フリージアは義兄を尊敬していた。フリージア家も自分の家だと心から思っていた。


 だからこそ、家の誇りを守るためにフィリップを斬ろうとした。


 俺には分かり辛い感情だが、これは貴族特有の考えだ。


 貴族は面子が大事だ。


 寄親の嫡男が寄子の次男を暗殺しようとした。


 寄子の正しい行動は?


 一族郎党討ち死に覚悟で寄親と戦う。


 俺からすれば馬鹿げた事だ。


 しかし、この世界の貴族社会はこうして特権階級としての面子を維持してきた。


 俺が生死不明だったから、物的証拠が無かったから、なんてのは通用しない。疑わしければ斬る。


 実際、メイリーズの父親は疑わしいと言うだけで無実の罪で陥れられた。メイリーズの実家は一族郎党、帝国に反旗を翻し、メイリーズを残して全員討ち死にした。これがこの世界の正しい貴族のあり方だ。


 フリージア家の未来は暗い。


 面子を保てない貴族は貴族に非ず。


 侯爵と義父が生きている間は大丈夫だろう。これまでの信用と実績がある。


 しかしフィリップの時代になれば?


 そもそもフィリップの時代は来るのか?


 俺達には8歳の弟がいる。


 未成年と言う事で今回の一件で名を落とさなかった。帝国は未成年でも関係無しだが、王国は未成年は無実のスタンスだ。帝国に比べて屋台骨が貧弱な王国は、粛清劇で一族郎党討ち死ぬと国力が大幅に低下するからだ。


 フリージア家の面子を維持するには義弟が家を継ぐのが一番か?


 それでも一度落ちたフリージア家の名前を下に戻すのは至難の技。


 いっそ、一家揃って公国に亡命させるか?


 考えが纏まらない。


『大丈夫?』


 レイラが心配そうに聞く。


『どうだろうな』


 剣で斬れる問題なら簡単なのだが、そうもいかない。


『はははっ』


 剣か!


 そうだ、そうだよな!


『宿主様!?』


『すまん、すまん。俺は大丈夫だ。小神になっても、結局何も変わらないと分かっただけだ』


 思ったより小神の件が俺に重い影を落としていたのか。


 麒麟を創造したり、この世界の裏側の一端を垣間見たり、結構ストレスの多い展開が続いていた。


 風呂に浸かってリラックスするのが大事だ。


 俺は何処まで行っても、ただのシスコンだ。


 それを忘れなければ大丈夫だ。


 妹のために、やらないといけない事は多い。


 一つずつ片付けていこう。


『元に戻ったの?』


『そうだ』


 レイラが安堵する。


『どうするの?』


『情報収集だ。メイリーズ、フィリップ、イライジャ、盗賊ギルドの誰か。少なくても4人から情報を仕入れないと動くに動けない』


 俺は全知全能では無い。


 知らない情報を下に最適解は出せない。


 時間は有限だ。


『15日だ。15日以内に方針を固める』


 俺は自分を説得するかのように強く言う。


 クローディアと分かれて10日前後。


 彼女の南の砦での残り任期は30日。


 砦司令と土豪が結託して動くなら、20日前後。


 騎兵ならカッタルイから砦まで5日。


『なんか数字が並んで目が痛い』


 レイラは無視だ。


 とにかく、進むべき道がおぼろげに決まった。


 肩の荷が下りた感じだ。


 今からは純粋に風呂を楽しもう。


 しかし折角の風呂なのに、髪を洗う物が開発した石鹸なのは頂けない。


 最初は妹のためにシャンプーを開発だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ