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破壊神と妹勇者  作者: 朝寝東風
第一章
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目覚め 前編

 俺は目覚めると同時に《風魔法》で周りの液体を遠ざけ、そのまま飛び上がった。そしてプールの外に着地した。


「お目覚めをお待ちしておりました、ご主人様」


 サリスがいつもの様に挨拶する。


「心配を掛けた。もう大丈夫だ」


 そう良いながら次元収納から服を取り出す。


 流石に裸は不味い。


「変わっていない様で安心しました」


 サリスが俺を上から下まで見る。


「そう変わるものでも無かろう?」


「てっきり別の存在になるのかと心配していました」


「レイラの話を信じすぎだ」


「その様ですね」


 サリスが安堵する。


 とは言え、あの中に一週間近く浸かっていたのだ。


 心配されて当然か。


「それと、もはやご主人様と呼ぶ必要も無いだろう?」


 黒龍戦の前に呪いを解除した時に奴隷紋も当然解除した。


 洗脳効果も既に無い。最初から聞いていたかも怪しい。


「いえ、私に取ってご主人様は終生のご主人様です」


「大げさな」


「そう思いますか?」


 目が笑っていない。


 サリスは本気だ。


 ここでサリスを否定したら、後ろから刺される未来しか見えない。


「サリスが一緒に居たいと言うのなら構わない」


「なら、今はそれで満足しておきます」


 サリスがフフッと笑う。


「それと、私が自由になったと噂が立つのはご主人様の望みに反するでしょう」


「そうなのか?」


「世間体です」


「そうか! その問題があったか」


 奴隷紋の解除は奴隷商しか出来ない事になっている。世間一般では自己解除出来るとは知られていない。それが出来るのはエルフか大魔法使いなので、知られていないのも当然か。


 《光魔法》を使えば一発なのだが、そのスキルを持つ者は勇者以外にいない。俺が解除したと疑われれば、俺が勇者だと思われる。それはまずい。滅びの黒龍を倒した存在だと芋蔓式にばれる。


 そうで無くても、奴隷商の敵として付け狙われる可能性がある。カッタルイの社会制度を崩壊させかねない存在となれば、国レベルで俺を排除するために動きかねない。排除の前にクローディアを押し付けて、国として俺を取り込もうとするか。


「なら、カッタルイに帰って早速奴隷商で解放して貰おう」


「それなら大丈夫でしょう」


 奴隷商はサリスが解放済みでも、奴隷商が解放したと言い張るだろう。俺も解放料金を払う積もりだ。当事者が黙っていれば真実は闇の中。そして当事者としては黙っていた方が得だから、口を割る者はいない。


「ついでに他の皆も解放するか」


「ポルル達は喜ぶでしょう」


「だろうな」


 予定では7月辺りを考えていたが、状況が俺の予想を上回るスピードで進んでいる。サリスと言う口実があるから、それを利用しよう。


「そう言えば2人は?」


 ポルルの事を考えていたら、ここにポルルとニコルがいるのを思い出した。普通なら真っ先に俺の下に来そうだが、今はいない。


「それならそろそろ来ます」


 この時間に俺が起きるとレイラが報せていた。


 サリスが気を利かせて、俺が服を着る時間を取ってくれた。


 ついでに二人だけの内緒話の時間も確保していた。


「主様!」


 言うが早いか、ポルルが俺に飛び付いた。


「ポルル、おはよう」


「無事、嬉しい」


「大丈夫だ。もう治った」


 ポルルの頭を撫でると、目を細めて笑顔になった。


 元々責任感が強いだけに、心配もひとしおだったのだろう。


「ライ様、おはよう……ございます」


 ニコルも来た。


 ……何故に裸エプロン?


「ニコル、それはどうした?」


「サリスがこの格好だったらライ様が元気になるって」


 それは違う意味の元気だ。


「サリス」


 俺はサリスに向き直る。


「レイラからの情報です」


 サリスもシレッとレイラを売る。


 レイラ以外の情報ソースがいたら、そっちの方が心配だ。


 しかし他にも勇者がいたから、どこかでこの手の変な事が慣習と化しているのかも知れない。


「ライ様、駄目でしたか?」


「ニコルは良くやった。だがその手の衣装は大事な人に見せるまで取って置く様に」


「ライ様以外にそんな人いません」


 重い。


 ニコルもまた重い過去を背負っていたか。


「分かった。ならもう少し大人になったら着ると良い」


 今度は空いた手でニコルの頭を撫でる。


 ポルルに対抗意識を燃やしているので、片方を撫でたらもう片方を撫でないと雰囲気が険悪になる。


 サリスも後でシレッと撫でておかないと、色々面倒そうだ。


「はい!」


 満足したのか、ニコルが元気に返事をする。


 大人になって着るのは問題がありそうだが、数年したら状況も変わるだろう。


 待てよ。


 ニコルが大人になる。


 大人が裸エプロンで迫る。


 その場を誰かに目撃される。


 責任取れと色々な方面から言われる。


 貧乏子爵の次男なら養えないと断れるが、数年後ではその言い訳が使えない。


 それに現時点でも養えるだけの資金がある。


 俺が気付く前に、色々終わっていたのかもしれない。


 良し、考えるのは数年後まで後回しにしよう。


 もはや、成る様に成る。


「ご主人様、今日はどうします?」


 サリスが聞いてくる。


「そうだな。明日カッタルイに帰る。今日は帰還の準備と俺の体が以前通り動くか試そう」


 それと、ニコルには寝てもらおう。目の下にくまが出来ている。


 睡眠不足ここに極まれりだ。

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