目覚め 中編
ポルルがニコルをベッドに連行した後、俺とサリスは最初の後始末に取り掛かった。
「この液体、どうする?」
「蒸発させるのが良いと思います」
純粋な液体化マナメタルなら使い道が多いらしい。
現在の液体は俺が一週間近く入っていたので、かなり穢れている。
解説屋サリスの説明は分かり易くて良い。
「不純物をろ過する手もあるが……」
フィルターを作って、風魔法で液体を流し込めば行けるかもしれない。
「品質は良くなりますが、未使用ほど純度は高くならないでしょう」
サリスがもっともな事を言う。
これを扱える人間ならそれでも大金を出すと思うが、俺にははいて捨てるほどのマナメタルが残っている。
売り飛ばせるなら意味がある行為なんだが、これを世に出したら足が付く。付かなくても国を挙げて捜索隊が組まれる。
闇に葬るのが一番安全だ。
『それなら《妖精創造》を使ってよ』
レイラが割り込んできた。
『あれは神域が出来てからで使う予定だ』
『でもせっかく素材があるんだよ。使おうよ』
『素材か。何がある?』
一応話だけは聞いておく。
『妖精は魔力が肉体を持った存在なのは知っているよね?』
そうなのか?
適当に頭の中で相槌を打っておく。
『必要なのは魔力の塊。すなわちこのプールよ!』
『それだけか?』
『後は時間ね。魔力の濃度からして、20年くらい?』
20年も放置はしたくない。
やはりここは蒸発させるか。
『時間が掛かるのは肉体の形成よ』
スキルレベルが上がればその分素早く肉体を構成出来る。
ついでに更なる知識や性格付けを出来る。
今では精霊と似た感じの喜怒哀楽に乏しい妖精しか作れない。
『それで?』
『別の素材を用意したら時間を短縮出来るの』
素材がマナを多く含んでいればいるほど良いそうだ。
マナメタルそのものを使えばゴーレム系が出来るらしい。
『レッサードラゴンか?』
『流石、宿主様!』
レッサードラゴンは素材として超一流だ。
これを少し使えば良いか。
「サリス、妖精を創造してみる」
「妖精ですか?」
「再構築のおまけで手に入れたスキルだ」
「そうですか」
サリスには珍しく言葉数が少ない。
何かあるのか?
精霊で無いのが不服とか?
まさかな……。
『これを作ろう。素材はどの程度要る?』
『最初はこれなの? 宿主様って変わっている』
『そうなのか?』
『普通はかわいい女の子でしょう!?』
『間に合っている』
『はぁ。それもそうね』
今の俺のスキルレベルでは眷属化して使役出来る妖精は1匹らしい。自由にするなら、幾らでも作れるが、今必要なのは仲間だ。精霊より気紛れな妖精を仲間にし続けるのは難しい。
なら最初から眷属として、俺と強い絆で繋がっていた方が都合が良い。貴族の次男としてどうしても必要なものがある。そして市販のものでは、俺の要求を満たせない。なら、その役を担える妖精を創造するしか無い。
『素材は一番古いレッサードラゴンのを使う』
『これは期待出来そうね』
俺が殺した個体だが、妖精になって俺を恨んだりはしないらしい。
これは魂が別のため、素材になる前の記憶を継承しないからだ。
それでも素材の持つ力の大半は継承される。
「サリス、魔法発生器官が一つ無くなれば公国はどう動く?」
「表向きは何も。裏では戦々恐々でしょうか?」
「俺も同じ考えだ」
ドラゴンには魔法発生器官がある。これは以前倒したワイバーンロードも持っていた準戦略兵器に分類される物だ。
冒険者なら、これを手に入れた場合、国に提出する義務がある。適正価格での買い取りなので損は無い。ただ、冒険者の長い歴史でそんな事は一度も無い。レッサードラゴンを倒せるのは英雄と勇者のみ。そんな人材が冒険者であるはずが無い。
俺はその魔法発生器官を6つ持っている。公国も俺がレッサードラゴン6匹を討伐したと知っている。提出を強く希望するだろう。提出する義務は無いので無視出来る。
しかし政治上無視は下策。
5つ提出したら、公国は黙るかどうか。
俺とサリスはそう考える。
俺が王国貴族の次男を理由に公国に1つも提出しない可能性はある。それを恐れて公国は5つで手を打つだろう。
メイリーズに相談するのが一番だが、彼女はここにいない。
そして魔法発生器官の一つは今ここで使う。
事後報告で処理は丸投げだ。
いつもの事だ。
「使われるのですか?」
「そうだ」
俺はかなりみすぼらしくなったレッサードラゴンから肉、皮、魔法発生器官を取り出し、プールに投げ込む。
『これだけあれば大丈夫だよ』
『分かった』
「しかし、この死体には世話になったな」
「そうですね」
残りの5匹は綺麗な形で残っている。
この1匹の肉はクローディア一行の兵士に振舞ったので、かなり少なくなっている。貴族や金持ちが大金を投じて買う肉塊だが、俺は気にせず提供した。
兵士は国では無く率いる将軍に忠誠を誓う。
食べ物をケチるとそれだけ士気が下がる。
他国人の俺ならなおさらだ。
別れ際の反応を見る限り、俺の狙いは成功した。
やはり最後のカレーが効いたか。
『宿主様、調整終わったよ。後はイメージしながらスキル発動ね』
『分かった! 《妖精創造》!』
俺は望みの姿形をイメージした。
レイラが必要な修正を加えるらしい。
魔力の9割近くを持って行かれた。
回復薬を飲みながら《時空魔法》を発動して、創造を早める。
液体が渦巻き、部分的に沸騰し出す。
この分なら今日の夜には形作られる。
楽しみだ。




