再構築 前編
『戻って来たのか?』
何も見えないが、戻って来たと言う感覚がある。
大丈夫だろう。
気になるのは、扉を開けて見た最後の光景。
レイラだと思うが、俺の知っているレイラでは無かった。
また話せる様になったら聞いてみよう。
『宿主様、大丈夫?』
そう思ったら、レイラの声が聞こえた。
『大丈夫だ。何も見えないが、どうなっている?』
まずは状況確認だ。
『今は魂だけ覚醒している状態よ。目覚めようと思えば体とリンクするけど』
精神世界で話している様なものか。
言わば、俺は夢をみているのだ。
体に繋げるのは一瞬で出来るらしい。
そうしたら俺は文字通り復活する。
『まだしない方が良いのか?』
『仕上げが終わってからの方がいいかな』
仕上げか。
言葉は危ないが、たまに本能的に感じる恐怖が無い。
恐らく大丈夫だろう。
『体そのものはどうなった?』
『失った腕と両足含めて治っているよ』
良し。
これならいつもの様に戦える。
『見た目は?』
『変更していないけど、変更した方が良かった?』
『問題無い』
失った体を補って子供にでもなっていたらどうしようかと心配していた。俺の妹のために学園に通って、勇者のお世話係りに選ばれないといけない。融合前のライの復讐を完遂する大事な仕事もある。それを成すためにも、今の姿を維持するのは大事だ。
ザザ……ザー
『なんだ?』
ノイズか?
『これは!?』
レイラが特に驚いていないから、大丈夫だろう。
『羽虫! ご主人様は無事ですか!?』
サリスの声だ。
ここに割り込めるのか。
『サリス』
かなり切羽詰っているから、直接声を掛ける。
『ご主人様! 大丈夫ですか!?』
一瞬で張り詰めた空気が霧散した。
『大丈夫だ』
『良かった。魂が消滅したので羽虫が何かしたのかと心配しました』
外からはそう感じられたのか。
『私じゃないと言っているでしょう、このエルフが!』
『状況説明すら出来なかった羽虫が!』
どうやら二人は打ち解けたみたいだ。
『今回は予想外の事態だったが、もう終わった』
『まったくよ。神に拉致監禁されるなんて、信じられない』
レイラが吐き捨てるように言う。
一応招待で、監禁はされていないはず。
『まさかそれ以上の事は?』
サリスが怯えたように聞く。
『後少し遅れたら調教されていたかも』
『それは無い』
俺は即座に否定する。
『でも、あの神はそっち系だよ?』
『まさか、叡智の神!?』
『そう、そいつよ!』
あの神は叡智の神だったのか?
名乗らなかったし、興味も無かったが、あれで叡智か。
俺の考えを他所に、サリスとレイラが二人で盛り上がっている。
この話題をこれ以上続けるのは危険だ。
俺の男としての本能がそう告げている。
話題を変えなければ!
『それはそうとして、外ではどれだけ経った?』
俺は咄嗟に違う話を振る。
『今が浴槽に入ってから3日目の朝になります』
サリスが即座に答える。
予定は超過していないみたいだ。
『そろそろ目覚める時間か。レイラ、どうなんだ?』
『急げば明日。調整を完璧にするなら明々後日かな』
神に招待されていた間、作業が停滞したらしい。
その分、延びるみたいだ。
『どっちが強くなれる』
結局これが最重要だ。
『明々後日』
『なら明々後日に目覚める』
力強く宣言する。
『分かりました。二人にもそう伝えておきます』
流石サリス。気が利く。
『二人はどうしている?』
『ポルルは変わらず、しっかり肉を食っています』
蛮族は過去を嘆くより未来を見据える。
悲しむよりしっかり食って、俺が目覚めた時に一緒に戦えるように準備をしている。
『なら目覚めたら一緒に狩りにでも行くか』
『はい。ですが最初はゴブリン辺りでお願いします』
『分かっている。まずはこの体に慣れないと意味が無い』
病み上がりで強敵に挑んで自滅など情けない。
ポルルが一緒なのだから、まずはゴブリンかコボルト辺りで肩慣らしだ。万が一梃子摺る様ならポルルが介入してくれる。
『ニコルはどうだ?』
『塞ぎこんでいます』
やはりか。彼女は何処まで言っても普通の女の子だ。
滅びの黒龍、そして俺の大怪我。
ショックを受けないはずが無い。
どうするか。
『しっかり食べる様には言っておいてくれ』
ニコルは目覚めてからが勝負か。
『私にお任せ下さいご主人様』
だ、大丈夫か?
サリスからもたまにやばい雰囲気が漏れるが、今回もそうだ。
『無理はさせない様に』
『もちろんです』
全然安心出来ない。
俺に出来る事は無い。
ここは信じるしか無い。
『エルフ、十分話したでしょう? これからこっちは最終調整だからね』
不機嫌なレイラが言う。
『分かりました。ご主人様、くれぐれも気をつけてくださいね』
『分かった』
何を気をつけるのかいまいち分からないが、サリスが言うのなら何かあるのだろう。
『エルフとの通信が切れたし、早速始めるよ、宿主様』
水を得た魚の如く、陽気なレイラが宣言する。
また二人っきりになれたのが余程嬉しいのだろう。




