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破壊神と妹勇者  作者: 朝寝東風
第一章
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ハーピー戦

 湖のほとりで一泊した俺達は西に向かった。


 俺と3人娘だけなら目的地に1日で着いたが、調査団と一緒のため3日は掛かる見通しだ。時間が掛かるなら、ついでだからと近隣のモンスターを狩る事にした。


 最初の1日はゴブリンが多かった。調査団でも一対一なら余裕で対処出来た。


「実力なら騎士並みか」


 俺がマイクに言う。


 輜重兵に紛れていたとは言え、それを率いていたマイクはれっきとした騎士だ。調査団のメンバーは実力はあるが騎士では無いみたいだ。


「家柄と金です」


 どちらかと言うと、金の問題だ。公国では家柄は金で買う。


 騎士には一定以上の実力があれば誰でもなれる。


 しかし騎士に叙任されるにはそれ相応のワイロが必要だ。


 ワイロの額は家柄次第。


 歴史ある良家の長男ならワイロは必要無い。親が騎士の場合も同様だ。


 ワイロが必要なのは良家や騎士家の3男、4男。それと平民やスラム出身者。


 ワイロを支払わないといけない人ほど金を持っていない。


「世知辛いな」


「ですが、この任務が成功すれば、全員晴れて騎士になれます」


 功績があればスポンサーが付く。


 この場合は第1公子だ。


 彼が後ろ盾になるなら、ワイロは支払われたも同然。


 第1公子なら簡単に全員を騎士に出来たが、功績無しの者を騎士に推薦すれば白い目で見られる。それが敵に不必要な攻撃材料を与えるかもしれない。


 ある程度簡単で、ほぼ確実に成功する任務を与えるとは、公子も中々面倒見が良い。


 こうやって自派閥の人間を増やしているのだ。


 一番の政敵である第2公子が軍に強い影響を持っているのだから、軍の主力となる騎士は一人でも味方に欲しいはず。


「護衛任務の時よりやる気が高いのはそのためか」


「あれは輸送任務です」


「まったく、割りきりが良い男だ」


 輜重兵とは言え、クローディアの護衛は仕事の内だ。輜重兵なんて役に立たないと言うのが一般的な見解だが、クローディアに万が一の事があれば責任を取らされていた。ここら辺はマイクと第1公子の間に密約があったのかもしれない。


 2日目になるとモンスターが居なくなった。どうやら全部ハーピーの餌になっているみたいだ。


「予定より増えているかもしれない」


「それは困りました」


 俺はマイクに注意を促しておく。


 サリス経由で大体の数は分かっているが、明かす必要は無い。


 3日目にはハーピーの勢力圏に入った。


「閣下、アーマードライノです!」


 マイクが悲鳴に近い声を上げる。


 固い皮膚が特徴的なサイだ。ハーピーの爪では傷つけられないので、ここら一帯の陸地を支配するモンスターとなった。


 騎士が数人掛かりでも倒せない。ポルルでも無理だ。


「ピット、アイススピア」


 《土魔法》で落とし穴を作り、落ちたライノを《水魔法》の槍で貫く。次元収納に入れて終わりだ。


「調査団、全滅する覚悟だったのですが……」


「足が遅い雑魚だ」


 もう一歩で悟りを開きそうなマイクを無視して、サリスが見つけたアーマードライノを狩って行く。こいつらがいると採掘作業が出来ない。それに、こいつらの皮膚は重装歩兵の鎧としても使われているため、高値で売れる。


 ライノの血の臭いでハーピーが数匹来る。6匹で1チームを形成しているのか。これなら勢力圏を拡大したのも分かる。こういう戦い方を指導出来るリーダーがいるのだろう。


「ウィンドシェイバー!」


 俺は《風魔法》の刃を続けざまに2発撃つ。


 最初の1発は回避された。回避した所に2発目が当たった。


「止め、刺す」


 ポルルが走って行った。


 即死か致命傷だが、念のために確実に息の根を止めておく。


「ハーピーは《風魔法》の軌跡が見えるみたいだ」


「本能的な部分が強いですから、2発撃てば撃墜出来ます」


 俺とサリスでハーピーの攻略法を話し合う。


 魔力の流れが本能的に分かるのはポルルと似ている。ハーピーはどうやら風属性のみなので、ポルルに比べるとかなり劣る。


 マイクは「閣下、すごいです」を連呼するだけになった。


 もう少し調査団に見せ場を用意しても良いが、これは俺の仕事だ。調査団は調査団で金鉱脈の発見と言う大事な仕事がある。モンスターは俺が倒すで問題無いはず。


 ハーピーの巣とも言える場所に辿り付く。上空には300匹を超えるハーピーが飛んでいる。俺達を見つけて襲ってくるやつもいるが、ポルルが投石で撃ち抜いている。


「数が多い!」


 マイクがそう言いながら弓を取り出す。


「テンペスト!」


 俺が《風魔法》の奥義の一つである台風もどきを巣の中央に展開する。


 テンペストより放たれる衝撃波がハーピーを膾切りにする。


 普通のハーピーより一回り大きい固体を確実に始末する。こいつらがリーダー格で、こいつらさえ始末すれば普通のハーピーが残ってもさしたる脅威では無い。


「20匹ほど生き残ったか」


 範囲外に居たハーピーをどうするか。


「ご主人様、後はお任せを」


 サリスが弓を引き、遠くにいるハーピーを鴨撃ちする。


「ポルル、負けない!」


 ポルルも負けじと近くにいるハーピーを投石で撃ち抜く。


「私達の仕事は?」


 矢の射程外なのか、マイク達は手持ち無沙汰だ。


「無い」


 調査団には悪いが、騎士程度の力しか無いのなら、俺達がよほど接待プレイをしない限り、彼らに出る幕は無い。


 大人しくニコルを見習って薬草採取でもしていれば良い。彼らのプライドがそれを許さないのだろう。ニコルがシレッと毒きのこを採取しているので、後で焼却しておこう。


「終わったぞ。俺はハーピーの死体を集めてくる。マイクは金鉱脈を探せ。ちなみに、あっちに400メートル行った所に何かありそうだ」


 俺は指示を出して、後片付けを開始する。金鉱脈の場所と大凡の埋蔵量は《土魔法》で調べた。大した量は無いが、ゆっくり掘れば50年以上は鉱山町が賑わうだろう。第1公子が望むほど公国の財政には寄与しないだろうが、プロパガンダ次第で化けるかもしれない。


 しばらくすると調査団が歓声を上げた。


「見つけた! 見つけたぁ!」


 マイクが一番喜んでいる。今は祝福しておいてやるか。


「おめでとう。これでマイクも任務完了だ」


「閣下、ありがとうございます」


「して、これからどうする?」


「キャンプを張って増援を待ちます」


「増援?」


「閣下が報告書を第1公子に渡せば、後は公子がやります」


「分かった」


 しかし、そうなるとモンスターが多い地で調査団が野営する羽目になる。全滅の危険が高い。それに彼らを狙うのは何もモンスターだけでは無い。


 仕方が無い。


 ここは恩を売っておくか。


「なら俺が陣地を作って、ついでに近くのモンスターを狩って置く」


「よろしいので?」


「増援が来て、調査団が全滅していたのでは話にならない」


 俺はそう言って《土魔法》で壁を作る。カッタルイの屋敷より少し大きい面積を囲む。陣地の中に簡素な石造りの家を4つ建てる。これで風雨と上からの攻撃に対応出来る。


 壁には階段をくっつけたので、陣地内部から壁の上に登れる。高さのアドバンテージがあれば、矢がより遠くに飛ぶ。


「閣下、既に砦です」


 狩り残す弱いモンスターや人族100人相手なら篭城して勝てる。手の内を見せ過ぎずに作れるのはこの辺りが限界だ。


「後は木造の門を追加すれば大丈夫だろう」


「門は調査団にお任せください!」


 流石に何かやらないと気が済まないと思って、意図的に門だけは残しておいた。俺がやった方が早くて堅牢なんだが、ここは調査団に任せる。


「分かった。俺はモンスターを狩る事に集中する」


 鉱山砦と任命された陣地を拠点に3日ほど狩りに集中した。アーマードライノが一番多かったが、他には保護色で風景に紛れるカメレオンドレイクが数匹居た。ワイバーンより少し手強い程度なので相手にすらならない。マイクは「幻のモンスターだ!」と騒いでいたが、大したことは無い。


「閣下、何から何までありがとうございます!」


「これからカッタルイに真っ直ぐ帰る。増援は10日以内に来るだろうから、それまでしっかり防御を固めておけ」


「はっ!」


 マイクと調査団を残し、俺と3人娘は帰路についた。

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