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破壊神と妹勇者  作者: 朝寝東風
第一章
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凍る湖

 俺は調査団とともにポルル達が待つ湖のほとりに到着した。彼らと一緒だったため、途中で一泊する羽目になった。


「主様!」


「ポルル、大丈夫だったか?」


「色々、狩った」


「それは凄いな」


 俺はポルルの頭を撫でながら、戦果を確認する。


「血抜きと解体はやっておきました、ライ様!」


「ニコルもご苦労」


 俺は空いている左手でニコルの頭を撫でる。


「ご主人様、全て想定内です」


「俺が少し遅くなったくらいか」


「マイク様と一緒なら納得です」


 サリスとは大人な会話をする。


 たぶん頭を撫でて欲しいのだが、マイクの前では恥ずかしいのだろう。


「さて、どうやってこの湖を渡るか」


「閣下、その事ですが、ヘイガル司令が船を浮かべるのを禁止しました」


 詰まらん嫌がらせをするものだ。


 待てよ。


 第2公子の息の掛かった人員をマイクの調査団より先に船で送り込む積りか?


 ハーピーを撃破出来るとは思えないが、ヘイガルにはもう後が無い。


 破れかぶれで仕掛けるか?


「ヘイガルは動くか?」


「それはどうでしょう。私達が先に着けば諦めると思います」


 マイクが少々気の抜けた風に言う。


 勝ち筋が無い暴挙には出ないと考えているみたいだ。


 俺はヘイガルが黒幕経由で手に入れた手札をまだ隠している可能性を疑う。


 考え過ぎか。


 だが、相手が動く前に勝負を決めるのは戦の常道。


 油断も満身もしない。


「船は駄目なのだな。他に何か言及していたか?」


「船以外は何も」


 一字一句を確認したが、船以外には言及していなかった。なんとも片手落ちな命令だ。船を使わずに湖を越える方法なんて幾らでもある。


「主様、泳ぐ?」


 ポルルが聞いてくる。


 俺は泳げる。ポルルも大丈夫だ。サリスはたぶん浮く。


「泳ぎですか?」


 ニコルが泳げないアピールをする。


 マイクの調査団も重い装備を持っている。引き連れているラバも泳げない。


「走ろう」


 俺の発言を受けて、マイクが慌てる。


「水の上をですか?」


「当たり前だ。簡単だろう?」


 俺が3人娘を担げば簡単に渡れる。


「い、いえ私達にはとても無理です」


 調査団全員が首を横に振っている。


「ならば、あれをするしか無い」


 もはや目立つ目立たないの問題では無い。


 見せるとしよう、俺の力の片鱗を。


「あれ、ですか?」


「湖を凍らせる」


「えっ? 閣下、今なんと?」


「湖を凍らせると言ったのだ」


「本気ですか?」


 この湖は凍る事が無い不凍湖だ。伝説では2000年前に一度凍った事があるらしいが、それ以降は一度も凍っていない。


 砂漠化している南方の影響で凍るほど温度が下がらない。北はレッサードラゴンの住処が寒波を押し留める役目を果たしている。


 されど、しょせんは大きな水溜り。


 俺の魔力の前には敵では無い。


「まあ見ていろ」


 そう言って、俺は湖の上を歩きだす。


 後ろから「馬鹿な、水の上を歩いている!」なんて声が聞こえるが無視だ。先程走る、と言ったのだから、歩けるに決まっている。


 俺は《風魔法》で両岸を繋ぐ橋に出来る水量を隔離する。薄い膜なんでサリス以外は気付いていない。


 冷凍庫にある氷トレイと同じコンセプトだ。


 湖全体を凍らせるのは難しく、時間が掛かる。


 しかし凍らす水量が少なければ、労力を減らせる。


 次は《水魔法》で水を凍らせる。これは力技だ。


 30分程で両岸を繋ぐ氷の橋が出来た。


「サンドストーム!」


 土魔法で氷の橋の上に砂を撒く。これで滑らないはず。


 全部終わってから、湖を裂けば簡単だったと気付いたが、後の祭りだ。


 それに調査団を湖の底に降ろして、向こう岸で湖から出す作業が面倒だ。空を飛べるのはまだ内緒だ。


コンコン


 数回足で叩く。


 どうやら壊れないみたいだ。


 俺は調査団が待つ岸に帰る。


「終わったぞ。さっそく渡ろう」


 調査団が固まっている。


 この世界で奇跡とも言える事を目の前で見せられては仕方が無いか。


「閣下、貴方は何者ですか?」


 マイクが何とか搾り出す。


「貧乏子爵の次男だが?」


 一度言ってみたかった。


「いえ、そうでは……。はぁ。ここでは考えるのをやめます」


 マイクが呆れて言葉を失う。


「主様は主様」


「ご主人様ならこの程度造作もありません」


「僕も驚くのを諦めたよ」


 3人3様で色々言っている。


「良し、捕まれ。一気に走って行く」


 3人を抱え上げ、俺は氷の橋の上を率先して走る。


「閣下に続け!」


 マイクがヤケクソ気味に叫ぶ。


 俺は1時間で走りきったが、マイク達は数時間掛かった。


 ラバが足を引っ張ったみたいだ。


 それでも全員無事に湖を渡る事が出来た。


「全員渡ったか?」


「はっ! 2回確認しました」


 マイクが答える。


「良し。なら橋はもう必要無い」


 俺は氷の橋を粉々に砕いた。


 長時間残すと、生態系に悪影響が出る。


 役目を果たした奇跡は消すに限る。


「ご主人様、追っ手が地団駄を踏んでいます」


 サリスが俺に近付き、誰にも聞こえない小声で言う。


 精霊を使った情報収集を予め頼んでおいて正解だった。砦に帰ってヘイガルにどう言い分けするのか聞けないのが残念だ。


 俺は何も知らない振りをして、マイクにここで野営すると伝える。


 今晩はポルルが釣った魚がある。


 久々に魚料理を作るとしよう。

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