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破壊神と妹勇者  作者: 朝寝東風
第一章
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密会 前編

 仕事が終わり、野営地も静まり返った中、俺は野営地の外にいた。


 兵士には見回りと言っておいた。


 実際は少し静かに考え事をしたかった。


 ここ数日は忙しすぎた。


 砦の人族が全員敵だと思い込むほどに余裕が無かった。


 カレーを食って、仕事が一段落して、やっと一息つけた。


 余裕が無い時は最悪のケースしか考えられない。


 それの対策は出来ている。


 最悪一歩手前、二歩手前のケースはまだ考えていなかった。少し前までなら、考える必要があるなら斬り捨てれば良いと信じていた。


 「ふーっ」


 俺は溜息を付き、空を見上げる。


 雲一つ無い夜空。星の海がかなり綺麗に見えた。惑星と思える物もある。


 工業化が激しい日本では余りお目にかかれない光景だ。


 ……。


 俺は強い。


 力尽くで望む結果を作り出せる。


 そこに、その次はあるのか?


 呂布にはなれても、劉備にはなれない。


 面倒な事だ。


 力任せに暴れる暴君になったら妹が悲しむ。地球に帰る方法が無い場合、隠し通すのも不可能だ。


 俺の情報収集能力はサリスがいれば平均より上。政治能力は平均と思いたい。メイリーズがいれば上から数えた方が早いと胸を張れる。しかし彼女はここにいないし、連れて来る事は出来ない。


 ……空を飛べば明日の日の出までには連れて来られるが、メイリーズの戦場はカッタルイの中だ。ここや砦に連れて来ても力を十全に発揮出来ず、俺のお荷物になるだけだ。


 明日の事は俺自身がやる。サリスとメイリーズから必要な情報は貰っている。後はそれを上手く活用するだけ。


ガサッ、ガサッ。


 来たか。


 そろそろ来るかと思っていたが、分かり易い。


 俺も相当分かり易い方らしいから、気をつけないといけない。


「夜分遅く何か用か、リティー?」


 どう贔屓目に見ても、友好そうな顔では無い。無言で斬り掛かって来ないだけマシか。


「私は貴様に用など無い。だが姫様が仲直りしないと絶交だと言うんだ。仕方ないから貴様を探したんだ。なんでこんな辺鄙な場所にいるんだ!」


 リティーは残念なシスコンだ。俺は覚えたぞ。


 クローディアが「崖から飛び降りろ」と言ったら本気でやりそうだ。


 敵視している男と辺鄙な場所で一対一の密会。


 もうちょっと周りが見えない様では心配だ。


 仕方が無い。ここは俺が歩み寄ろう。


 クローディアの件で必要以上に敵対してもメリットは無い。


 妹の100分の1でも有能ならもう少し腹を割って話せるのだが、妹ほど優秀な妹は世界にいないから諦めよう。


「それで、俺の何処が気に入らないのだ?」


 俺はリティーに向き直り、あえて聞く。


 他国人と蛮族の件だろうが、俺が思っているより根深い問題なのかもしれない。


「全てだ」


 落ち着け。まだ切れるには早い。


「そうか。だがそれでは関係修復は出来ないぞ?」


「何故姫様は貴様をそこまで信頼するのだ! 姫様の言葉が無ければここで……!」


 斬り捨てる、か。最後のは流石に声に出さなかったが、ずいぶんと分かり易い。


 少し揺さぶって次の布石にするか。


「婚約者だからだ」


 俺は笑い声を殺して、リティーをいじめる。


「はっ? 誰と誰が?」


「俺とディアに決まっているだろう?」


 メイリーズの話では、公国は俺とクローディアを婚約させたいらしい。歪曲した言い回しばかりで俺にはさっぱり理解出来なかったが、メイリーズの言葉を信じる。彼女なら政治の流れを読み違える事は無い。


 公国は俺を取り込むために3点セットを用意した。ハーピー討伐の報酬である2枚の紙切れとクローディアだ。「亡命を認めて公王家に順ずる立場」なんて他人には渡せない。他人を家族にするために何が必要か。答えは公王家の娘との婚姻だ。


 クローディア以外で空いている都合の良い娘はいない。誰か、それこそリティーを公王の養女にして俺の嫁に出す事も出来る。クローディアより価値が落ちるし、養女なら断り易い。俺とクローディアの婚姻ならアルドスタン王国も一枚噛むし、大事だ。


 公王家の事情もある。クローディアは両公子の権力争いの余波で「笑っているだけの人形」と化している。どうも公王がこの状況に業を煮やしており、早い段階で家から出したい。でも、公国から離れて欲しくは無い。公王の立場と父親の立場で板ばさみ状態だ。


「う、嘘だ! 私のクローディアが貴様なんかに!」


「恥をかきたいなら、公王家に直接問い合わせると良い」


 答えは返って来ないだろうし。


 返って来たら、やばい。


 俺の意志を無視して婚約確定だ。


 俺は公国の裏を知り過ぎた。見られたくは無い失敗の後始末に関わってしまった。《ドラゴンスレイヤー》の称号、剣技と魔法は超一流、指揮は一流。さらに実家が程好く下級な貴族で俺自身も次男だ。


 公国は無理してでも俺を取り込まねばならない。強攻策にうって出る可能性はある。メイリーズはそうなったら時間稼ぎすると言っていたが、俺に今より有利な条件を公国が提示したら掌を返す。


「そんな……」


 リティーがその場に崩れ落ちる。


 いじめ過ぎたか?


 未確定情報で揺さぶられ過ぎだ。


 他人から妹の婚約を聞かされたら……。


 俺なら世界を滅ぼすか。


 それとも相手を排除するか。


 ここは頭を冷やして情報収集か。


 う~ん、俺ならどう動くだろうか?


「この件に関してクローディア様は何も知らない」


「な、なんですってぇ!」


 リティーの混乱が加速する中、俺は更なる追い討ちをかける準備をする。

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