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破壊神と妹勇者  作者: 朝寝東風
第一章
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密会 中編

「嫁なんていらない、と断ったらこの任務を与えられた」


 これは本当だ。


 クローディアとの会合は予定外。


 しかし、襲撃同様、想定されてはいた。


 山賊がクローディアを誘拐したら、目指すは南だ。


 南の砦があるから、まずは湖を越えて西に向かう。


 砦も湖を越えて西に兵士を送る。


 山賊はそこから更に西に行くか、南を強行突破するしか無い。


 更に西だと、俺とハーピーが殺し合いをする場所に出る。


 二の矢ならぬ三の矢とも言える保険だ。


 イライジャもここまでクローディアの事が大事なら、もう少しまともに教育すれば良いのに。政敵と成り得る存在だから持て余しているのか? 第2公子との政争で余裕が無いだけか?


「姫様の何が気に入らないのだ!」


 反対していたんじゃ無いのか? 面倒な親戚のパターンか?


「全てだ」


「それでは分からないでしょう!」


 リティーがハッとする。


 まさか先程の返しをここですると思っていなかっただろう。


 全て、なんて抽象的過ぎて意味が無い。


 生理的にどうしても無理、とかなら仕方が無いが、リティーが俺を嫌うのはそういう理由では無い。


「私が理由を話すから、貴方も理由を話しなさい。いいわね!」


「良かろう」


 さて、リティーは何を言うかな?


「貴様が他国人なのは別に良い。爵位を取れば同じ公国人だ」


 積極的に他国貴族に爵位を渡している国策故か。


「だが、蛮族は別だ。あいつ等のせいで公国はどれだけ被害を受けたと思っている!」


「奴隷ならば問題無かろう」


 公国以外ならこれで問題解決なんだが、たぶん駄目だろう。


「あれが大人しく奴隷になるものか。貴様には手を出さずとも、我らの寝首を掻く」


 確かに一理ある。ポルルは砦司令を殺す気満々だ。


「ポルルにはそれだけの理由があるとしたら?」


「蛮族の肩を持つのか?」


「俺はポルルに決闘で勝ち、彼女らの族長になった。少ない数でも彼女らは俺の民だ。民のために戦わずして何が族長だ」


 蛮族と貴族理論をミックスしてみた。


「なんだと。なら貴様は私達を最初から斬る積もりで近付いたのか?」


「族長になったのはイライジャ様の依頼を受ける前の事だ」


「イライジャ様は知っていると!?」


「当然だ」


「有り得ん……」


 リティーの常識の限界を超えたか。


「説明してやろう」


 ポルルの一族を公国が正式に保護した。それなのに南の砦辺りで奴隷にされた。


「保護だと? 統治政策の一環とすれば分からなくも無いが、それなら何故奴隷に?」


「簡単だ。砦司令が裏切ったからだ」


「そんな!」


 リティーが何か言おうとするも遮る。


「クローディアを襲った山賊を俺がどうやって知ったと思う?」


「蛮族と関係があるのか?」


「ああ。偶々山賊の拠点を潰したら、ポルルを奴隷にした商人が山賊の幹部をやっていた」


「なら責任はその商人にあるはず」


「まあ待て。その幹部からクローディア襲撃の報を聞いたのだ」


「えっ?」


 ポルル達を奴隷にした勢力とクローディア一行を襲った勢力が同じ。リティーは馬鹿では無い。ここまで言えばある程度点と点を繋ぎ合せられる。


「山賊300人。どうやって南から来た?」


「……」


「南の砦はそれだけの人間が通ったのを見逃すのか?」


「別々に動いたとすれば!」


「砦を別々に越えて、どうやって拠点に合流する積もりだ? 裏切る者はいるだろうし、それで無くても金欲しさに情報を売る者もいる」


 300人は一丸となって越境した。ゲラルドの性格とカリスマを考えると、それ以外の方法は無い。


 リティーはもう分かっている。砦司令が通したのだ。


 恐らく山賊は湖の西側を北上して、北側まで出た。そこの近くに拠点を構えた。


 砦司令なら息の掛かった兵士を湖の監視に回せる。


「だが決定的証拠が無いぞ」


「クローディア様が殺された後もそう言う積もりか?」


「貴様!」


「そうだろう? 確実にクローディア様を狙っているやつがいる。砦司令で無くても上層部の人間だ。蛮族の奴隷化、山賊の素通し、公女の襲撃。どれ一つ取っても上層部全員の首が飛ぶ失態だ」


 王国なら今頃砦司令と家族全員が処刑されている。帝国なら3親等まで車引きの刑で国境沿いに放置される。幾らベテラン軍人が育ち辛い公国でも、こんな裏切り者に重要拠点を任せられない。


 近く処分される。処分される前に動く。


 クローディアと言うコマが手に入るのだ。確実に使う。


 邪魔な俺がすぐ出て行くと知れば、砦司令の計画を邪魔する者はいない。


「くっ!」


「近衛なら斬れるだろう。命令系統が別なのだろう?」


「同じ公国人を理由無しには斬れない!」


 まあまあまともな回答か。斬ると言ってくれたら楽だったのだが。


「ならせめてクローディアの護衛に付け。近衛が近くにいれば、まずは引き剥がすために動く。それでしばし時間を稼げよう」


 俺なら冤罪で陥れられる。リティーは砦に長く勤めている。そう簡単には排除出来ない。クローディアがいる限り、遠出の任務は断れるだろう。


「分かった。貴様を信じたわけでは無いが、姫様の御身が大事だ」


「じゃあ、それで」


 俺が話を終えようとしたら、待ったが掛かった。


「次は貴様の番だ」


 衝撃の事実の前でも忘れなかったか。残念なシスコンはクローディア関係では平常運転か。

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