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破壊神と妹勇者  作者: 朝寝東風
第一章
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面倒な依頼 中編

 次の朝早く、一台の馬車が俺の屋敷の前に止まった。


「旦那様、第1公子イライジャ様の馬車です」


 アルフレッドが紋章を見て言う。


「大物が出て来たな」


 特段、思う事は無い。


 ただ、貴族作法で粗相があると面倒だ。


「ライ様、イライジャ様が是非朝食を一緒に、との事です」


 公子の使者が告げる。


 俺は了承を伝える。


 昨日から招待の件は分かっていたのだ。ここで断るわけにはいかない。


「アルフレッド、メイリーズは連れて行けるのか?」


「大丈夫です」


「らしいぞ。どうする?」


 朝から外出用に着飾ったメイリーズに問う。


 相手が公子だとは流石に思っていなかったはず。無理に連れて行きたくは無い。


「お供いたしましょう」


 営業スマイルが頼もしい。


 最初のお茶会は二重王国の伯爵嫡男で調整する戦略が根本から吹っ飛んだのに、彼女は、それを顔には出さない強さを持っている。


 無駄に豪華な馬車に二人で乗り、公子の待つ王城へ向かった。


「着くまで15分か。作法のレクチャーを頼む」


 付け焼き刃だが、無いよりマシだ。


 俺は子爵級とそれ以下の相手に対する外交マナーは詳しいが、それより上は一回通し稽古をやっただけだ。俺は王国貴族扱いのはずだから、公国貴族限定の作法に乏しくても問題にはならないだろう。


 それでも無駄な事でネチネチ言うのが貴族社会だ。不必要な隙は見せたくない。


「ならば、大きな流れについて説明いたします」


 メイリーズ先生のよく分かるレクチャーが始まった。


 朝食の場所。急な招待なので私的な食堂の可能性が高い。一般的な貴族作法で十分。万が一、公的な場所なら爵位が近い男の動作を真似ろ!


 食事中に相手から仕事の話が無い場合、適当に流す。食後に別室に呼ばれる。


 話の本命が食後ならそれだけ重要。


 報酬が金か物なら冒険者扱い。領地か無形の報酬なら貴族扱い。


 前者なら限界ぎりぎりだから、受けるならごねるな。


 後者なら限界の7割程度。一回はゴネ無いと下に見られる。


「凄いな。これを一瞬で?」


「当然でしょう」


 メイリーズが胸を張る。張ると谷間の凶器が勢いよく揺れる。


「助かる」


「そうだと良いのですが」


 メイリーズの目じりが下がる。


「何かあるのか?」


「いえ、必殺の武器の効果がいまいちだと思いまして」


 胸を不自然に揺らす。


「当たらなければどうって事は無い」


 シスコンの俺に色仕掛けは効かない。


「そうみたいですね。当面はこれを乗り越える事に集中します」


 メイリーズがはかなく笑う。


「頼む」


 細事を確認していると、馬車が止まった。


 馬車を降りると、第1公子とその妻が直々に出迎えてくれた。


『ここで出て来るのか?』


『どうかしたの?』


『余程の賓客以外なら屋敷の中で待つものだ』


『宿主様って賓客中の賓客でしょ』


 レイラの無責任な呟きは無視だ。


 それだけ俺に期待しているのは間違い無い。


 余りにも期待し過ぎている。


 第1公子に案内され、私的なダイニングホールに向かう。メイリーズは早速女性陣と世間話に花を咲かせている。


 テーブルには6人。俺、メイリーズ、公子夫妻、公子の重鎮である老伯爵夫妻。公子が数的有利を確保した上で圧迫感を与えすぎない配置だ。


 朝食の味はほとんどしなかった。話は公子の妻が主導し、俺達男連中は適当に相槌を打つに留めた。


 朝食が終わると俺は公子の書斎に案内された。女性連中は庭が一望出来るテラスに移るそうだ。


 ここまではメイリーズ先生の言う通りだ。落ち着いて行動出来るから、ミスは無い。無いはず。


 あの説明が無ければ今頃どうなっていたか、想像したくも無い。

 書斎の小さなテーブルを男3人で囲む。


「ライ殿はハーピー討伐を試みると聞いています」


 現状確認から来たか。


「近くに寄れば、その積もりです殿下」


「公国の公子など王国から見れば田舎者も同じ。気軽にイライジャと呼んで欲しい」


「はっ。ではイライジャ様で。それと私こそライと呼び捨てで結構です」


 様付けならぎりぎり許容範囲か? 老伯爵が何も言わない。次第点みたいだ。


「分かったよ、ライ」


「してイライジャ様、ハーピーの件には何かあるのですか?」


「実は少々面倒事がある」


 老伯爵が地図を取り出し、イライジャが説明を開始した。


 ハーピーの根城近くに露天掘り出来る金鉱脈が発見された。試掘部隊を送ったら、ハーピーに食われた。餌が豊富になったハーピーは数を増やした。


 当初は一時的な事と楽観視していた。しかし、数が増えた事でハーピーの勢力圏が大きくなり、他のモンスターを餌に増え続けている。


 現在は300羽前後で止まっているが、何らかの事情でさらに繁殖したら、公国は軍を挙げて討伐しないといけなくなる。


「軍を出せば良いのでは?」


 この数なら大人しく軍を派遣すれば良い。手をこまねいたからここまで悪化した。


「それが出来れば楽なのだが……」


 カッタルイから直線で侵攻するとリザードマンが多い沼地がある。そこは通り辛いので南から迂回すると、今度は湖がある。この湖は南の小国群に取っては重要な水資源らしく、軍隊を浮かべようものなら猛抗議が予想される。


 湖を更に迂回すると、南の小国群の領土に入る。最近蛮族が異常に公国を敵視しているため、土豪の許可を貰えたとしても、安全な通行は期待出来ない。


 俺は地図を確認する。公子の言い分は本当みたいだ。ちなみに北から迂回しようとすると、レッサードラゴンの巣とかち合うルートでしかハーピーに辿りつけない。


「なるほど」


 俺は地図を見て、ルートを確認する素振りを見せる。

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