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破壊神と妹勇者  作者: 朝寝東風
第一章
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面倒な依頼 後編

 最初からリザードマン、レッサードラゴン、ハーピーの順で潰す予定だ。依頼が無ければ遠すぎるという理由でハーピーは諦めていた。ハーピーは弱いし得るものが無い。


 イライジャが直々に頼む理由はなんだ?


 イライジャの個人的な事情なら公位継承絡み。取得物絡みなら金鉱脈。


 う~ん、難しい。


 初心に返って、王国でならどうだ?


 未発見の金鉱脈なら、発見者のものになる。その後、王国が発見者を自国に取り込む。領土なり、爵位なり、婚姻なり。それでも靡かないなら不幸な事故とか。


 この金鉱脈は発見済み……。


 もしかして?


「イライジャ様、この金鉱脈の発見者は誰ですか?」


 イライジャは一瞬びっくりした後、すぐにポーカーフェイスに戻った。


「今の所、正式には未発見だ。貴族連中には結構有名なんだけどね」


 ハーピーを倒した者が発見者になる。それまでこの莫大な利権は宙に浮いている。


 第1公子は経済、第2公子は軍事、公弟は情報関連が強い。


 第2公子が手勢を動かして金鉱脈を手に入れたら?


 なるほど。


 これだけで継承予定が変更にはならないだろうが、予定調和は乱れる。


「私がハーピーを倒した場合はどうなります?」


「出来れば金鉱脈の権利を放棄して欲しい」


 放棄とは大きく出たな。がめつい王国でも5割は相手に残すぞ。


 第1公子の手勢が発見者なのだから、俺か第2公子が名乗り上げても潰せる保険は用意しているはず。だから強気なのだろう。


「もちろん、それ相応の対価は用意する」


 そう言って、イライジャは2枚の紙を取り出した。


 1枚目は公王とイライジャの双方が俺の政治的後ろ盾になるという約束。これなら、公国の貴族が俺にちょっかいを出す事は無くなる。公国の爵位を持たないが、公国最高位の貴族と同等に扱われる。


 2枚目はアルドスタン王国が俺の身柄の引渡しを求めても拒否するという約束。公国が王国を相手に個人を優先するとは、リスキーな事をする。亡命していないが、亡命者と同じ便宜を計ってくれる。


 俺は2枚を良く見て、考える。


『無価値よね』


 レイラが言ってはいけない本当の事を言ってしまった。


 俺にしか聞こえないから良い。


 公国は俺の強さを知らないはずだ。だからこの条件を出して来た。


 だが、それにしては条件が悪い。


 イライジャが俺を見誤ったか? この程度の男では無いと思うが、何か理由があるのかもしれない。


 エルフと蛮族の話がここまで出ていない。


 俺から持ちかけるか?


 否、やめておこう。


 恐らく担当が違う。


 この企みに王弟が入る事にイライジャは難色を示すだろう。


 イライジャがエルフと蛮族の件に手を突っ込めば王弟が気分を害す。


 胃が痛くなる。


『金も爵位もいらないから、公国が出せる中で最高のものだ』


 魔法道具や不動産なんて線もあるが、公子の依頼の報酬としては少々不足か。外野が五月蝿そうだ。


『そうなの』


『嫁を出す可能性もあったが、俺に取っては重荷になると躊躇みたいだ』


 第1公女がいるのは知っている。俺に出すより帝国の側室辺りに押し込みたいだろう。良家の子を公王の養女にして渡すパターンもあるが、関係者全員合意の上で無いと拗れる。


 しょうがない。


 文句を言って公国が敵になるよりは良いか。


 今回は利用されてやろう。


「そうですね。なら2点追加をお願いしたい」


 1枚目に公弟も名前を連ねる事。一瞬イライジャが渋い顔をしたが、了承してくれた。これで情報部が敵になる可能性が減った。


 1枚目をハーピーを倒した時点で有効にする事。これはすんなり通った。出発前に注釈付きで1枚目を渡して貰える手筈となった。


 イライジャの敵が仕掛けるとすれば、ハーピー討伐からイライジャ報告の間。公弟が味方なら道中襲撃される可能性は低い。カッタルイの門を守る門番は軍部と繋がりが深い。仕掛けるならそこだ。


「ハーピーの件、期待している。この事は他言無用で頼む」


「おまかせください、イライジャ様」


 その後は次の政務があるとかで、特に話す事も無く話し合いは終了した。来る時と同じ馬車に乗り、屋敷へと向かった。


「成功したみたいですわね」


「分かるのか?」


「馬車が同じですもの」


 馬車がどうかしたのか?


 呆気に取られる俺にまたメイリーズ先生が説明してくれた。


 話し合いが物別れに終われば、第1公子の紋章が付いていない違う馬車になっていた。朝は人通りが少ないから、見られても影響は限定的。今の時間は多くの人が外に出ている。公子の馬車が俺の屋敷に入るのを確実に目撃する。


 公子の馬車に乗れるのは、それだけ公子に近い人物。この時点で俺にちょっかいを掛けようと思う者はほとんどいなくなる。公子の政敵に狙われるかもしれないが、他国の爵位を継げない男に無駄な労力を裂く暇は無い。お茶会で嫌味を言われる程度で終わる。


「面倒臭いな」


 面倒だな。


「声に出ていますよ!」


 メイリーズが珍しく怒る。


「一介の冒険者としてドラゴンを斬れたら十分なんだ」


「ドラゴンなんて斬ったら王になる他ありませんよ?」


「なんだと……」


 もしかして、俺の貴族知識は俺が思っているより偏っているのか? それとも帝国だけの決まりか?


 深まる謎を他所に、俺達は無事に屋敷に着いた。

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