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破壊神と妹勇者  作者: 朝寝東風
第一章
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観光案内

 カッタルイの城壁は余り高く無い。空から敵が来ない前提で作られている。城壁の分厚さはアルドスタン王国の王都にある城壁の倍はある。地上に厄介な敵がいるのかもしれない。ライの知識には無いし、ルベルの話にも出なかった。不思議だ。


 門番に入場料を支払い、俺はルベルと一緒にカッタルイに入る。白髪赤眼の事で留められるかと思ったが、ルベルが手を振ったらフリーパスだった。地元に顔が効く連れがいると何かと便利だ。


「では私はこれで」


「世話になった」


 最後にはルベルに良い所を持って行かれた。流石商人だ。


「ライ様、あそこに観光案内を生業にしてる店があります。街中を散策するならお勧めです」


 そう言ってルベルは去って行った。たぶんもう会う事は無いだろう。


『どうするの?』


『情報は大事だ。行こう』


 俺は観光案所の看板を掲げている建物に入った。そこそこ賑わっている。客層は旅人と冒険者だ。


 働いている人の動きを見る。何人か手練がいる。絶対に堅気じゃない。


 なるほど。


 ここは情報を扱うギルドのフロントか。実質、公国公認と見るべきだ。


 不必要な情報を与えないように気をつけよう。


 俺はカウンターに向かい、受付に話す。


「ようこそ、カッタルイ観光案所へ」


 口調は丁寧だが、目が獲物を狙う狩人だ。俺が接触出来る一番の上役と考えて声を掛けたが、どうやら当たりだ。


「観光案内を頼みたい」


 今回は当たり障りの無い依頼にしておく。


「畏まりました」


 何種類かのコースを紹介して貰った。丸一日で長期滞在客用のを選択した。名所巡りは断っておいた。


 しばらくすると、帽子を被った男の子が来た。たぶん一つか二つ下だ。そこそこ上品な衣装を上手く着崩してラフな格好を醸し出している。顔のそばかすと適度に日焼けした肌から外回りが多いのが分かる。数年したらそっち系の女性に人気がでそうな華奢な体付きをしている。


『女の子だね』


『なにっ! そうなのか?』


 羽虫は霊脈の流れで判断する。俺は胸で判断する。


『胸だけじゃなくて腰の括れを見たら、一発でしょう?』


『そうなのだろう』


 適当に返事をする。シスコンの俺に取って他の女はどうでも良い。


「始めまして。ガイドのニコルです」


「ライだ」


 男名だぞ。本当に女か?


「では、ついて来てください」


 ニコルに先導され、表通りに出る。武器、防具、食糧、日用雑貨の店などを回る。せっかくなので武器屋で数打ちの剣を買っておく。流石に武器無しは格好が付かない。


「剣に自信があるのですか?」


「多少」


 流石に《剣術 7》とは明かせないので、適当に返事をする。


「では冒険者ギルドか闘技場に寄りましょうか?」


「遠慮しておく」


 冒険者ギルド。身分不明の社会の最底辺や逃亡奴隷が行き着く先。真っ当な冒険者は貴族か商人お抱えで活動する。俺は見た目でギルドメンバーと誤解されたか?


 闘技場は実戦形式で金を稼げる場所。命を取るかどうかも含め、事前に決める。強い魔物がいるのならまだしも、人間相手に戦っても得るものは少ない。


「そうなると、宿に向かいますか?」


「その前に風呂屋に寄ろう」


 風呂屋。勇者が作った国だけあって風呂文化が盛んだ。


「あ、あの僕はそういうサービスは……」


 ここはそういうサービスもやっているのか。観光案内の範疇では無いと思う。風呂屋は盗賊ギルドの稼ぎ頭だろうから、ギルド繋がりか。


「一人で入る」


「な、なんだ。そうですか」


 何故か安堵するニコル。やはり女なのか?


 ニコルに案内されて、下級貴族でも使う豪華な風呂屋に行く。1時間後に待ち合わせる場所を決めて、分かれる。


「いらっしゃいませ。淫魔の隠し湯へようこそ」


 名前からしてアウトだ。ニコルめ、後でいじめてやる。


「一人でゆっくり入れる湯はあるか?」


「ございます」


 番頭に案内されて、個人用の脱衣所と風呂がある部屋に行く。


 石鹸と思える物で体を洗い、湯船に浸かる。良く考えると3ヶ月ぶりの風呂だ。王国には風呂文化が無いし、体を洗うと病気にかかると信じられている。


 実際は風呂屋で病気持ちの娼婦を抱くからだが、因果関係を理解出来る人間はこの世界にはいない。大抵の病は魔法で治療するため、菌類の調査は疎かになっている。


「いかん!」


 俺は湯船から勢い良く立ち上がる。


『ど、どうしたの?』


「俺の妹は風呂好きだ」


『それで?』


「リンスにシャンプー、それに肌荒れしない石鹸。妹が来るまでに用意せねば!」


『それって大事なの?』


「最優先事項だ! 魔王など充実した風呂ライフの前には路傍の小石以下!」


『魔王が聞いたら泣きそうね』


「材料は? 流通経路は? くそっ、課題が多すぎる」


 俺は湯船に深く浸かり、考える。作り方は俺が知っているが、この世界で同じ素材があるか不明だ。ライの知識は心許ない。流通はダミー商会を作って丸投げだ。最悪、妹専用に少量生産するのも手だ。


 だが、俺の妹は慈愛に満ちた天使だ。学友が一緒に来ていたら、分け与えるに決まっている。最大50人として、一年の消費量を計算して、それを元に生産量を考える。


 これは工場が必要かもしれない。


 王国、商会、工場。


 用意しないといけない物がどんどん増えていく。

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