試し切り
誤字脱字等ありましたら連絡していただけると喜びます
パーティークエストを受けたため、ラージベアーは10匹ほど討伐しなければならない。
僕としては数匹で試し切りが出来ればいいため、僕と他3人という感じでパーティーを分割して依頼を遂行することにした。
僕は3匹、彼女たちは7匹討伐したら連絡をするという事にする。
また、数日前にこの森で数匹のオーガの目撃例が上がったため、もし出会ったら連絡するように伝える。
「よし、じゃあ僕はあっちに行くから皆はそっちをお願い」
「「はーい」」
僕は皆と別れてラージベアーを探し始めた。
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歩くこと1時間弱、ようやく1体目のラージベアーを見つけた。
こいつは普通に倒すことにしよう。
いつも通り【身体強化】を使い、ラージベアーに向かって突進する。
ラージベアーが僕の接近に気づき、攻撃をしようとする。
しかし、それよりも早く僕の剣がラージベアーの胴を切り裂いた。
「普通に切れ味もよさそうだな」
斬った感触からすると前に使っていた剣よりも切れ味がよさそうだ。
それにちゃんと振ってみて分かったが重量バランスもちょうどいい感じだ。
これだったら剣に振られることなく剣を振り回せるかもしれない。
まぁ、もっと剣技を学ばないとそんな事出来ないだろうけど・・・
「さて、次はどうやって仕留めようか」
僕は次の獲物を探して歩き出した。
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「よし、じゃあさっさと狩っちゃっおうかっ。なんだったらカムイくんの分も横取り
する気持ちで!」
「さすがに7匹は探すのに時間がかかっちゃいますよ・・・」
イヨの言ったことに若干呆れ顔のユウナが答える。
キョロキョロと当たりを見回していたアリアンが
「あそこに1匹居る」
と、早速成果を上げた。
「さっすがアリアンっ!じゃあサクッと狩っちゃいますか」
言うや否や杖を構えたイヨが魔術を発動させる。
「気づかれてない今のうちに・・・【リジッドアクア:コンプレス】!」
イヨが出現させた巨大な水塊が一点に集中するようにしてラージベアーを押しつぶし、その体に穴を開ける。
さすがのBランク魔獣といえど上級魔術に一点を貫かれては耐えることは出来ず、あっけなく絶命した。
「さ、どんどんいこー!」
ラージベアーを仕留めて上機嫌になったイヨが鼻歌混じりで歩き出す。
「私達の出番は・・・」
「ありませんでしたね」
微妙に肩を落としたユウナといつもと変わらぬ無表情なアリアンもイヨに付いて歩き始めた。
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「うん、やっぱりいい剣だ」
【切断】を発動してラージベアーを切り裂いた僕は勢い余って岩に剣をぶつけてしまった。
しかし、剣が折れることはなく、逆に岩の方が半分ほど切れてしまった。
ざっと確認した限り刃こぼれもない。ホント、いい剣だ。
ちょっと剣を見るついでに休憩していると、遠目に3匹目のラージベアーを発見した。
「まだやってないことがあったな、奴で試してさっさと皆と合流するか」
座っていた岩から飛び降り、剣を構えてラージベアーに接近する。
僕の接近に気づいたラージベアーが臨戦態勢をとる。
そして、僕がラージベアーの間合いに入った瞬間、その太い腕を力強く振るい、僕を切り裂こうとする。
「【切断】【魔力付与】」
【切断】に【魔力付与】を重ねて発動する。
そして、ラージベアーの腕に対してぶつけるようにして剣を振るう。
-スッ
そんな効果音がふさわしいほど抵抗を感じることなくラージベアーの腕を『縦に』切り裂いた。
一瞬固まったラージベアーに対して返す刀で胴を逆袈裟に切りつける。
剣を振りぬいた後、漫画のごとく胴体がゆっくりと2つに分かれてラージベアーは絶命した。
「いや、できることは確認してたけど・・・」
まさかここまでの切れ味になるとは考えていなかった僕は若干ぼーっとしてしまった。
我に返った僕はとりあえず皆と連絡を取るために携帯を取り出す。
「あれ?おかしいな・・・」
イヨ、ユウナ、アリアン誰にかけても出ない。
というかむしろ回線が通じている感じじゃない・・・?
登録した連絡先に電話をかけても途中でつながることなくブツッと切れてしまう。
首を傾げていると、遠くの方から轟音が聞こえてきた。
轟音がした方を向くと、一瞬その方向が眩しく光を放った。
「今の光はもしかして、アリアンの【極光】か・・・?」
その時、アリアンとの魔力のパスを通じて彼女の居場所が脳裏に浮かぶ。
嫌な予感のした僕は急いで【空間】を通ってアリアン達の元向かう。
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遡る事数分、イヨたちは既に7匹のラージベアーを仕留めていた。
「よーし、これでノルマ終了―!」
イヨが大きな伸びをする。
「なんか、今日はかなりラージベアーに遭遇しましたわね?」
「そう?」
「そのような日もあるかと」
そう、普段だと7匹ものラージベアーを見つけようと思ったらそれこそ半日は掛かる。
ところが今日はものの2時間ほどでラージベアーを狩り終えてしまった。
出会ってきたラージベアーを数分も掛けずに倒していたとはいえ、これだけの時間で借り終えるのは異常だとユウナは思ったのだ。
ただまぁ、そんな日もあるかなと思い直したユウナは携帯を取り出し、カムイに連絡を入れようとする。
「あれ?おかしいですわね」
「どったの?」
「いえ、携帯がどうにも調子がおかしいようでお兄様と連絡が取れないのです」
「え?」
「電波の範囲外なのでは?」
地味にカムイから知識を受けついだアリアンが昔の携帯電話と同じように通信しているだろうと思い、発言する。
「いえ、この携帯は電波を用いていないのですわ。相手の携帯まで直接マナを伝達する仕組みで通信していますのでマナがあるところならどこでもつながるはずですよ」
そう、そのためイヨもユウナも物理的な故障以外で携帯が通信できないという事態に陥ったことはなかった。
「ダメ。わたしの携帯も通じなかったよ」
ユウナの代わりに連絡を取ろうとしていたイヨが首をひねる。
「私の携帯もダメですね」
皆がなんでだろう?と考えていると微かに地面から地響きが身体に伝わってくる。
「?この地響きは・・・」
いち早く地響きに気づいたユウナが辺りを見回す。
「なんかあったの?」
ユウナの様子に気づいたイヨがユウナに尋ねる。
「いえ、地響きが・・・」
言いかけたその時、ユウナの目がある影を捉える。
「オーガですわ!あちらの方からオーガが森の中を駆けてこちらへと向かってきています!」
「なんですとっ!?」
「数は?」
「2匹ですわ!」
相手は既にこちらを補足したみたいで真っ直ぐに向かってきている。
「これは、逃げきれなさそうですね」
アリアンのつぶやきと同時に全員が戦闘態勢を取る。
「みんな、死なないようにね!」
イヨの掛け声とともに両者が接敵する。
オーガたちは接近の勢いそのままに手に持った棍棒を振りかぶり、攻撃を仕掛けてくる。
さすがに受け止めることは不可能だと感じたアリアンとユウナは左右に飛ぶことで回避をする。
そして、アリアンは【魔弾】を、ユウナは【炎弾】を自分の近くにいるオーガに向けて発射し、注意を自分たちに向ける。
アリアンとユウナがそれぞれ1体ずつのオーガを担当する形となる。
「イヨさん、ユウナさんのサポートをお願いします!」
「わかった!アリアンは大丈夫?」
「大丈夫です、回避に集中していれば何とかなります」
オーガの攻撃を回避しながらアリアンが答える。
その姿を確認したイヨはユウナの援護をするために魔術を使用する準備をする。
(さすがに・・・オーガクラスになると私の剣技では通用しないですわね)
ユウナは内心かなり焦っていた。
力がある方とは言い難いため、今まで技術で剣を振るってきた。
ヒトくらいの大きさまでならそれでいいのだが、人をはるかに超える大きさの敵に対しては力負けすることが容易に予想できたからだ。
また、なんとか隙を見つけては剣で切りつけてはいるが全くオーガに傷をつけることができていない。
すなわち、剣技でオーガを倒すことは出来ない、ということだ。
(なんとか上級魔術を使うことが出来れば、あるいは・・・)
上級魔術を発動出来るだけの隙などAランクの魔獣であるオーガが見せることなどまず無い。
ちらっとアリアンの方を見るが、彼女はまだ余裕がありそうだった。
(なんとか、耐えて隙を作ってイヨさんの魔術で有効打を・・・!)
それしか無いと考えたユウナはオーガの激しい攻撃を回避する。
そして、オーガが縦に振るった棍棒を躱し、剣を全力で手首に突き刺す。
「しまった、浅い!?」
ユウナの突きはオーガの手首を貫くことはなく、薄皮1枚を裂いたところで止まってしまっていた。
次の瞬間、オーガが腕を振り払う。
-キィン
オーガの動作によってユウナの持つ剣が根本から折れてしまう。
腕に凄まじい衝撃を感じたユウナはこのまま追撃に合うとまずいと思い、オーガとの距離を大きく離す。
「【氷結の檻】!魔力多めに込めたよ!」
イヨの発動した魔術によりユウナを追おうとしていたオーガの下半身が氷で覆われ、地面に縫い付けられる。
「イヨさん、ありがとうございます!」
イヨに礼を言いつつ、ユウナ自身も上級魔術を使う準備をする。
「顔を吹き飛ばしますわ!」
イヨにも聞こえるように声を発した後、【エクスプロージョン:コンプレス】をオーガの顔面に叩きこむ。
続いてイヨがとどめを刺すべく魔術を発動する。
「追撃行くよ!【アイスジャベリン】!」
研ぎ澄まされた氷の杭がオーガの腹部に突き刺さる。
ユウナとイヨの上級魔術をもろに受けたオーガがその場に静止する。
しかし、一呼吸おいた後、棍棒で脚を封じている氷を砕いてユウナへと飛びかかる。
虚をつかれたユウナは回避することも出来ずにその場で硬直してしまう。
(これは、まずいですわね・・・)
「【極光:弾】」
ユウナが諦めかけた瞬間、光が弾け、オーガを横から派手に吹き飛ばす。
既に瀕死に近かったオーガは吹き飛ばされた衝撃により、瞬時に絶命する。
「ありがとうですわ、アリアン!」
ユウナがアリアンの方を振り返ると、かなり無茶な体勢で魔術を放っていた。
その後ろには未だ交戦中のオーガが攻撃を繰り出そうとしていた。
(高めていたオドを使い、かなり無茶な体勢。これは厳しいですね)
かなり絶体絶命だが、アリアンは冷静だった。
背後でオーガが攻撃をしようとしている気配を感じ取ったアリアンは、転がることによってオーガの攻撃をかろうじて躱す。
しかし、オーガはすぐさま棍棒を横に振るってくる。
「・・・ッ」
オーガの棍棒が背中を打ち付け骨が砕ける嫌な音と共に、アリアンは吹き飛ばされる。
「キャアアアア!」
ユウナが悲鳴をあげ、
「【氷矢】!」
アリアンに対して続けて攻撃を繰り出そうとしていたオーガに対してイヨが中級魔術を放つ。
しかし、イヨの放った魔術はオーガに多少の傷をつけるだけで追撃を止めることは出来なかった。
オーガが咆哮とともに棍棒を振り上げた瞬間
「死ね」
アリアンの背後の空間から現れたカムイによって両断された。
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「ある、じ?」
僕の腕に抱かれた瀕死のアリアンは気がついたようで、声を掛けてくる。
イヨやユウナも心配そうに見つめている。
「喋るな。今お前の状態を調べてる」
「すいません、アリアン。私のせいで・・・」
ユウナが唇を噛み締めて己の不甲斐なさを責めている。
「い、え・・・ご無事で、なに、よりです」
それだけ言うとアリアンは再び気を失う。
「私がもっとしっかりしていれば・・・」
ユウナのつぶやきは誰にも聞かれることはなかった。
「よし、結果が出たぞ」
僕の声に治癒をしていたイヨと俯いていたユウナが反応する。
皆にも見えるように僕は空中に【サーチ:ボディ】の結果を出す。
「これは・・・」
僕は予想以上にまずい状況に声を上げてしまう。
『脳の状態:良好
筋肉の状態:一部断裂→治癒魔術による治癒を確認
骨の状態:背骨粉砕→治癒魔術による治療を確認
血液の状態:良好
下記の異常が見つかりました
・核魔石が砕けています
』
「核魔石・・・?」
イヨが見慣れない単語に反応する。
「これはアリアンの核になってる魔石で、こいつで全身に魔力を行き渡らせることで身体を維持している。これが砕けてるってのは・・・」
「アリアン、死んでしまいますの!?」
「いや、大丈夫。替えの魔石があれば修復できると思う」
使ったことはないけど、一応ホムンクルスを修復するための魔術も作ってある。
早いところ魔石を見つけなければならない。
今は僕がオドを供給しているから大丈夫だか、無限というわけじゃないからな・・・
「そうだ、サイクロプス討伐で貰った魔石、誰か持ってないか?」
「私は家においてきてしまいましたわ・・・」「わたしも・・・」
「わ、たしの・・・ポケットに、はいってます」
意識を取り戻していたアリアンが口を開く。
ユウナがアリアンのポケットから魔石を取り出し、僕がそれを受け取る。
イヨの治癒魔術の終わりを待って、アリアンの修復を始める。
魔石をアリアンの胸に置き、アリアンを作った時と同じくらいの魔力をかけて魔術を発動する。
「頼むぞ・・・」
辺りに満ちる光が引いた後、アリアンの胸に置かれていた魔石は消え、アリアンの周囲には砕けた魔石が転がっていた。
「成功か・・・?」
アリアンはなかなか目を覚まさない。
「まさか、失敗したのか?」
僕のつぶやきによってイヨやユウナにも暗い雰囲気が流れ始めた時、
「おはようございます、主」
アリアンが目を覚ました。
「アリアン・・・!」
「心配したよ~・・・」
「良かったですわ・・・」
目が覚めたアリアンはほぼ全快していたようで、帰り道では一番余裕がありそうだった。
オーガさん再登場




