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1話 転生したら変な生き物だった

なんだ、この抵抗感。


身体が重い。


いや、重いというより……まとわりついてくる?


身体を動かすたびに、何かに押し返されるような感覚がある。


なんだこれ。


…………水?


水の中か?


そう気づいた瞬間、一気に頭が覚醒した。


待て待て待て。


水の中!?


息、息!!


…………。


あれ?


呼吸できる。


普通に苦しくない。


どういうことだ?


もしかして俺、培養カプセルみたいなのに入ってる?


目を覚ましたら謎の研究施設で、人体実験によって新人類に改造されてました――とか?


……いやいや。


そんなSFみたいなことあるわけないだろ。


だんだん意識がはっきりしてくる。


それにしても、なんかすげえ夢見てたな。


確か俺、四万十川に行って……。


川に落ちて……。


溺れて……。


「…………」


死んでなかった?


いやいやいや。


夢だろ。


たぶん。


疲れてたんだな、俺。


最近バイトばっかりだったし。


それより、ここどこだよ。


とりあえず身体を動かしてみる。


右手を前へ。


……。


ん?


もう一度。


右手を前へ。


…………。


「あれ?」


手、ちっちゃくね?


というか。


短くね?


なんだこれ。


俺の腕、こんな短かったっけ?


いや、そんなわけない。


足は?


…………短い。


手も短い。


足も短い。


というか身体全体がなんかおかしい。


恐る恐る口を開いてみる。


ガバッ。


「!?」


めっちゃ開く。


怖っ!!


なんだこの口!?


顎外れた!?


いや、痛くない。


もう一回。


ガバッ。


閉じる。


ガバッ。


閉じる。


…………。


いやいやいやいや。


絶対人間の口じゃないだろ、これ。


手足は短い。


口は異常にデカい。


水の中なのに呼吸できる。


おまけに身体の感覚も明らかに人間じゃない。


これ……。


俺……。


なんか変な生き物になってないか?


そこでようやく、ある可能性が頭に浮かんだ。


俺、転生しちゃった感じ?


いやいや。


そんなまさか。


昔は死ぬほどゲームやってたし、異世界転生ものだって腐るほど見た。


見たけどさ。


まさか自分がやる側になるなんて思わないだろ。


普通、人間じゃないの?


百歩譲って魔族とか。


エルフとか。


ドラゴンとか。


せめてスライムとか!


なんだよこの身体!


しかも……。


周囲を見渡してみる。


暗い。


というか、ぼやけている。


水の中だからか?


いや、それにしたって見えなさすぎる。


自分の身体すらよく分からない。


でも、一つだけ分かる。


「……俺、めっちゃ小さくね?」


水底に転がっている石が、やたらとデカく見える。


嘘だろ。


これ絶対、赤ちゃんとかそういうサイズじゃん。


転生ガチャ絶対ハズレだよね!?


神さまー!!


リセマラ!


リセマラさせてくれ!!


…………。


当然、返事はない。


どうしよう。


とりあえず状況を確認しないと。


周りを見渡す。


……見えない。


いや、正確にはぼんやりとは見える。


岩。


砂。


水草……っぽい何か。


少なくとも、近くにヤバそうな生き物はいない。


たぶん。


見えてないだけだったら知らん。


「…………」


急に怖くなってきた。


もし本当に異世界なら、ここに何がいるか分からない。


俺よりデカい魚が来たら?


魔物が来たら?


こんな短い手足で逃げられるのか?


いや。


待てよ。


異世界転生なら、アレがあるんじゃないか?


ステータス。


そうだ。


ステータスだよ。


ゲームならまず自分の能力確認だろ。


こういうのは大体、念じれば出てくる。


ステータス。


…………。


何も起きない。


ステータス!


…………。


出ろ!


ステータス!!


その瞬間。


目の前に、半透明の板のようなものが浮かび上がった。


「おおっ!」


来た!


これこれ!


異世界転生といえばこれだよ!


どれどれ。


俺のチート能力は――。


【種族】ミニルーパー


【Lv】1


【体力】10

【攻撃力】1

【防御力】5

【素早さ】1

【魔力】1

【幸運】1


【スキル】


《丸呑み》


【特典】


《神の悪戯》


――転生した者に贈られる特典。

数々の神に見守られる。


「…………」


もう一回見る。


【攻撃力】1


【素早さ】1


【魔力】1


【幸運】1


「…………」


え。


これ種族値終わってない?


防御力だけちょっと高いけど、他全部1じゃん。


スキルも丸呑みだけ?


魔法は?


鑑定は?


経験値倍増とかは?


無限収納とかは!?


そして何より。


《神の悪戯》ってなんだよ。


絶対ろくなもんじゃないだろ。


数々の神に見守られるって何?


見てるなら助けろよ。


というか――。


「流石に転生先ミスでは……?」


返事はない。


水の流れる音だけが、静かに聞こえている。


こうして俺の二度目の人生は、


種族すらよく分からない、


手足の短い謎の生物、


ミニルーパーLv1として始まった。

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