エピローグ
初めて小説を書きます!
至らないところも多いと思いますが、楽しんで読んでいただけたら嬉しいです。
「ここ分かりにくい!」「こうした方が面白そう!」など、コメントで色々と指摘や感想をいただけるととても助かります!
よろしくお願いします!
俺は、何者でもない。
二十一歳。大学生。
特別頭がいいわけでもなければ、スポーツで全国大会に出たことがあるわけでもない。
人に自慢できるような才能も、将来の夢もない。
強いて言うなら――働くことには慣れていた。
大学の授業が終われば、そのままバイト先へ向かう。
夜まで働いて、帰って寝る。
朝になれば、また大学へ行く。
家賃、学費、食費、光熱費。
生きているだけで、金はなくなっていく。
ある事情から、生活にかかる金は自分で稼がなければならなかった。
だから働いた。
ただ、それだけだ。
「……疲れた」
一人暮らしの部屋に帰ってきて、ベッドに倒れ込む。
昔はゲームが好きだった。
いや、好きなんてもんじゃない。
休みの日には朝から晩までゲーム。
飯を食う時間すら惜しくて、気づけば十時間以上ぶっ通しでやっていることもあった。
RPG、アクション、MMO。
特に好きだったのは、弱いキャラクターを少しずつ育てていくゲームだ。
レベルを上げて、スキルを覚えて、装備を集める。
最初はスライム一匹に苦戦していたキャラクターが、いつの間にかドラゴンを倒せるようになる。
あの感覚が好きだった。
努力した分だけ、数字になって返ってくる。
現実とは大違いだ。
最近では、そのゲームをする時間すらなかった。
ゲーム機の電源を最後につけたのがいつだったのかも覚えていない。
大学。
バイト。
睡眠。
大学。
バイト。
睡眠。
毎日、その繰り返し。
別に、自分の人生が不幸だとは思っていない。
もっと大変な人なんて、いくらでもいる。
ただ――。
「もうちょっと、ゆっくり生きてえな……」
そんなことを考える日は増えていた。
――そんな俺が、なぜ四万十川に来ているのか。
理由は大したものじゃない。
久しぶりにできた休みだった。
せっかくなら、普段とはまったく違う場所に行きたかった。
都会から離れて、山を見て、川を見て。
何も考えずに過ごしてみたかった。
目の前には、どこまでも続く川。
水面が太陽の光を反射して、きらきらと輝いている。
「……いいな、こういうの」
スマホを見る。
バイト先から連絡が来ていた。
俺は画面を伏せた。
今日くらいはいいだろ。
川の流れる音を聞きながら、ぼーっとする。
何もしない。
誰にも急かされない。
何時までに大学へ行かなきゃいけないとか。
何時からバイトだとか。
今月あと何万円必要だとか。
そんなことを考えなくていい。
ただ川が流れている。
それだけだった。
「魚とかいんのかな」
水辺へ近づく。
透き通った水の向こうに、小さな魚が見えた。
もう少し近くで見ようと、一歩踏み出す。
その瞬間だった。
「あ」
足元が滑った。
身体が傾く。
咄嗟に何かを掴もうとした。
けれど、指先には何も触れない。
――ドボン。
全身が水の中へ落ちた。
「っ……!」
冷たい。
想像以上に流れが速い。
顔を水面に出そうとしても、身体が思うように動かない。
泳げないわけじゃない。
なのに、流れに身体を持っていかれる。
「っ、は……!」
一瞬だけ顔が水面に出る。
息を吸う。
また沈む。
ゴボッ。
口の中に水が入った。
苦しい。
岩を掴もうと手を伸ばす。
届かない。
流される。
沈む。
また水を飲む。
――やばい。
これ、本当に死ぬ。
頭の中が真っ白になった。
もっと必死に生きようとか。
死にたくないとか。
助けてくれとか。
そういうことを考えるものだと思っていた。
でも実際は違った。
苦しい。
ただ、それだけだった。
身体から少しずつ力が抜けていく。
水の音が遠くなる。
光が遠ざかる。
俺の身体は、ゆっくりと川底へ沈んでいった。
二十一年。
短かったな。
結局、俺の人生って何だったんだろう。
大学行って。
働いて。
金払って。
また働いて。
……ゲーム、もっとやりたかったな。
そんなくだらないことを考えながら、目を閉じようとした。
その時だった。
暗くなっていく視界の端で、何かが動いた。
岩陰。
細長い身体。
平べったい頭。
短い手足。
ぬるりとした茶色い身体が、川底をゆっくりと歩いている。
――オオサンショウウオ?
こんな時なのに、なぜか笑いそうになった。
あいつ、いいな。
川の底で。
誰にも急かされず。
バイトもしなくていい。
大学にも行かなくていい。
家賃もない。
学費もない。
ただ、腹が減ったら何か食って。
眠くなったら岩陰で寝て。
ゆっくり。
のんびり。
生きていく。
意識が遠のいていく。
もし。
もし本当に来世なんてものがあるなら。
人間じゃなくてもいい。
金持ちじゃなくてもいい。
勇者とか、王様とか。
そんな大層なものじゃなくていい。
――次は、もう少しゆっくり生きたい。
できることなら。
目の前のこいつみたいに。
静かな川の底で――。
そこで、俺の意識は完全に途切れた。
そして次に目を覚ました時。
俺には――。
手が、めちゃくちゃ短くなっていた。
最後まで読んでいただきありがとうございます!
初めての小説なので、まだまだ至らないところも多いと思います。
気まぐれでのんびり投稿していく予定です!
感想・アドバイス・「ここ変じゃない?」など、コメントじゃんじゃんください!
次回、ついにオオサンショウウオ生活スタートです。




