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11話 再びザリガニ

レベル2になったわけだが。


今回は、さらに検証をしていこうと思う。


正直に言おう。


今の俺――かなり強いと思う。


進化してレベルこそ1に戻ったものの、レベル2になった時点で防御力は35。


さらに《猛毒手》《猛毒棘》《毒散布》《毒回復》。


特に毒系スキル。


こいつらが明らかに強い。


スモールフィッシュなんて、《猛毒手》で触っただけで数秒後には死んだ。


となれば。


そろそろ、こいつを試す時だろう。


「ザリガニにアタックしてみようと思う」


…………。


いや。


分かってる。


無謀かもしれない。


過去二回、俺はあいつらに殺されかけている。


一回目なんて手まで持っていかれた。


二回目だって、《防御》がなかったらどうなっていたか分からない。


だが――。


「やらなければいけないんだ!」


俺は心の中で高らかに宣言した。


…………。


と、啖呵を切ったはいいが。


実はこれ。


そんな大層な理由ではない。


《毒回復》の検証がしたいのである。


今まで相手にしていたスモールフィッシュたちは、基本的に逃げ回るだけ。


向こうから俺を攻撃してくることはほとんどない。


かといって。


「自分で自分を傷つけるのは嫌だしな……」


痛いの嫌だもん。


だったらどうするか。


どうせ攻撃を受けるなら。


あの美味しいやつらを、また食ってやろう。


そういうことである。


それに今は《鑑定・小》がある。


今まで死闘を繰り広げてきたザリガニが、実際どれくらいの強さだったのかも知りたい。


「よし!」


捜索開始だ。


俺は川底を進んでいく。


もちろん、手当たり次第に喧嘩を売るつもりはない。


途中。


俺より何倍も大きな魚が、ゆっくりと目の前を横切っていった。


「…………」


見なかったことにしよう。


今の俺は確かに強くなった。


だからといって無敵になったわけではない。


こういう強そうな魚には絶対に手を出さない。


俺は学習する生き物なのだ。


そうして数分ほど探し回っていると。


いた。


岩陰。


見覚えのある二本のハサミ。


「見つけた……!」


大きさもちょうどいい。


以前戦ったやつらと、だいたい同じくらいだ。


さっそく――。


《鑑定・小》!


【ミニザリクラブ】


【討伐難易度:E級】


水辺に生息する甲殻系の魔物。


大きな二本のハサミを使って獲物を捕らえる。


しっかり下処理をし、塩茹ですれば美味しく食べられる。


「ザリガニじゃねーか!!」


なんだよミニザリクラブって。


ちょっとだけファンタジー感出してんじゃねえよ。


あと。


「やっぱり料理情報あるじゃん!」


もう確定だろ。


《鑑定・小》を作ったやつ絶対食いしん坊だろ。


いや、それよりステータスだ。


【種族】ミニザリクラブ


【Lv】12


【HP】28/28


【攻撃力】20


【防御力】15


【素早さ】20


【魔力】4


【幸運】1


「……こいつら、かなり強いな」


俺は現在レベル2。


【HP】18/18


【攻撃力】1


【防御力】35


【素早さ】5


【魔力】6


【幸運】9


比較するとよく分かる。


防御力以外、戦闘に関係しそうな能力はほぼ負けている。


レベル差も10。


そりゃ今まで苦戦するわけだ。


攻撃力20。


素早さ20。


こんなの相手に、進化前の俺はよく戦ってたな。


だが。


今の俺には。


「この毒があるからな」


前とは違う。


よし。


「突撃じゃあああ!!」


まずは――。


《毒散布》!


身体から毒が周囲の水へと広がっていく。


見た目ではほとんど分からない。


だが。


《鑑定・小》!


【ミニザリクラブ】


【状態:弱毒】


10秒ごとにHPへ1ダメージ。


「おお!」


状態異常まで見えるのか!


しかも、ちゃんとダメージ量まで表示されている。


10秒で1ダメージ。


一見すると少ない。


でも俺が近くにいるだけで、相手のHPが勝手に減っていくと考えればかなり強い。


「この調子なら、《毒回復》も10秒ごとに1回復とかかな?」


それも後で確かめたい。


だが、今はこいつだ。


ミニザリクラブが俺の存在に気づく。


二本のハサミを構えた。


来る!


ならその前に!


《猛毒手》!


一気に距離を詰める。


そして――。


「くらえ!」


ぺちん!


――とはいかなかった。


ミニザリクラブが素早く後ろへ跳ねる。


空振り。


「はっや!」


素早さ20!


俺の四倍!


そりゃ当たらん!


だが。


これも想定内!


こっちには前から使っている必殺コンボがある!


《猛毒棘》!


背中から毒の棘を出す。


そして。


《防御》!


身体が自然と攻撃を受け止める姿勢を取る。


「来い!」


ミニザリクラブが突っ込んでくる。


ガキッ!


ハサミが身体に食い込んだ。


【HP 18→15】


「3ダメージ!」


進化前ならもっと痛かったはずだ。


防御力35。


やっぱり硬い!


そして――。


「刺さった!」


攻撃してきたミニザリクラブの身体に、《猛毒棘》が突き刺さっている。


すぐに《鑑定・小》!


【ミニザリクラブ】


【状態:猛毒】


1秒ごとにHPへ5ダメージ。


「…………え?」


一秒に。


5?


「強すぎない!?」


弱毒が10秒で1。


猛毒が1秒で5。


差ありすぎだろ!


ミニザリクラブの動きが明らかに鈍くなっていく。


ハサミを動かしているが、先ほどまでの勢いがない。


「かなり辛そうだな……」


いや。


今は同情してる場合じゃない。


相手のHPは28。


単純計算なら。


「6秒耐えれば勝ち!」


そう思った瞬間。


ガシッ!


「いっ――!」


ハサミに身体を挟まれた。


痛い痛い痛い!


やっぱり攻撃力20は伊達じゃない!


暴れる。


だが離さない。


もう一度ハサミが食い込む。


HPが削られる。


気づけば――。


【HP 9/18】


「10切った!」


まずい!


でも。


あと少し!


耐えろ!


一秒。


ミニザリクラブの力が弱くなる。


二秒。


ハサミが緩む。


そして。


ミニザリクラブの身体から、力が抜けた。


動かない。


「…………」


勝った?


少し待つ。


動かない。


《鑑定・小》。


反応なし。


「…………勝った」


俺。


レベル2で。


レベル12を。


倒した。


「勝ったあああああ!!」


進化前は命懸けだった相手。


それも、一度戦えば瀕死になるような相手だった。


そいつを。


進化直後のレベル2で倒した。


もちろん楽勝ではない。


HPは半分まで削られた。


それでも。


「俺……めちゃくちゃ強くなってない?」


毒。


強い。


いや。


強すぎる。


その瞬間。


――テレレレッテッテーン!


来た!


【レベルが上がりました】


【Lv2→Lv3】


――テレレレッテッテーン!


【レベルが上がりました】


【Lv3→Lv4】


「おお!?」


――テレレレッテッテーン!


【レベルが上がりました】


【Lv4→Lv5】


「三連続!?」


レベル12。


やっぱり格上だったからか。


一匹倒しただけで。


レベル2から――。


一気にレベル5。


「うおおおおお!!」


俺は思わず川底で暴れ回る。


やっぱり格上狩り。


美味すぎる!


…………。


ん?


美味い?


俺は目の前に転がっているミニザリクラブを見る。


そうだった。


こいつ。


鑑定にも書いてあったな。


しっかり下処理して塩茹で。


「…………」


いや。


待て。


それより大事なことがある。


今回の目的。


「《毒回復》の検証、忘れてた……」


レベルアップしたせいで。


HP。


全回復してる。


「何しに来たんだ俺!!」

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