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9話 やっぱり料理なんだよな

「よし、検証するぞ!」


進化して《ポイズンミニルーパー》になった俺。


ステータスこそレベル1に戻ってしまったが、その代わり毒系のスキルは大幅に強化された。


《毒手》は《猛毒手》に。


《毒棘》は《猛毒棘》に。


さらに、新しく《毒回復》と《毒散布》まで手に入れた。


正直――。


「試したくてたまらん!」


まずは《毒散布》からだ。


説明によれば、自分を中心とした一定範囲に微弱な毒を撒くらしい。


とりあえず、周囲に生き物がいないことを確認する。


さすがにいきなり魚を大量虐殺したくはない。


それに、俺の飯まで全滅したら困る。


「よし……《毒散布》!」


――じわっ。


身体から何かが抜けていくような、不思議な感覚。


そして周囲の水に、何かが広がっていく。


ような気がする。


「…………」


見えん。


「全然分からん!」


ただでさえ視界が悪いんだ。


水の中に微弱な毒を撒いたところで、見えるわけがない。


でも、感覚的には分かる。


俺を中心に、周囲の水が薄い毒で覆われている。


……多分。


「これ、ちゃんと発動してるよな?」


自分では毒の影響をまったく感じない。


《毒回復》を持っているくらいだから、当然といえば当然か。


とりあえず《毒散布》は後で生き物相手にも試してみよう。


「次は《猛毒手》だな」


こっちは分かりやすい。


進化前の《毒手》は何度も使っている。


小さい魚や虫なら、一発当てれば毒が回って倒すことができた。


それが《猛毒手》になって、どれだけ強くなったのか。


「ちょうどいい相手いないかなー」


川底を泳ぎながら探していると、小さな魚影を見つけた。


「あ」


メダカみたいな小魚だ。


進化前にも何度か倒したことがある。


「ちょうどいいな」


前までなら《毒手》を当てたあと、数分もすれば毒が回って勝手に倒れていた。


なら。


《猛毒手》ならどうなる?


「悪いな。実験台になってくれ」


俺はゆっくり近づく。


相変わらず短い手を構えて――。


「《猛毒手》!」


ぺちん。


「よし、当たった!」


魚が慌てて泳いでいく。


さて。


どれくらいかかる?


一分?


三十秒?


猛毒ってくらいだから、十秒くらい――。


数秒後。


魚の動きが止まった。


「…………え?」


そのまま。


ゆっくりと川底へ沈んでいく。


「…………」


近づいて確認する。


動かない。


「もう死んだの?」


早すぎない?


「え、ちょっと待って。ヤバくね、これ?」


進化前の《毒手》は、もっと時間がかかったぞ。


それが今は。


ぺちん。


数秒。


死亡。


「猛毒ってレベルじゃなくない?」


俺は自分の短い手を見る。


見た目は相変わらず可愛らしい。


多分。


でも。


これで触った相手が数秒で死ぬ。


「…………」


怖っ。


「俺、そのうち災厄とかにならないよね?」


川に謎の猛毒生物現る。


触れた生物は数秒で死亡。


周囲には毒を撒き散らす。


ついでに本人は毒で回復する。


「完全に討伐対象じゃん……」


いや。


待て。


今回の相手は小魚だ。


身体が小さい分、毒が全身に回るのが早かった可能性もある。


もっと大きい生き物なら、ここまで即効性はないかもしれない。


「そうだよな。多分そうだよな?」


そうじゃないと怖い。


自分の能力なのに。


ちょっと引いている俺がいる。


それから俺は、周囲の小さな生き物を相手に新しい能力を試していった。


《猛毒手》。


《猛毒棘》。


《毒散布》。


《毒回復》については、ちょうどいい毒を持った生き物が見つからなかったので一旦保留。


そんなことを続けていると――。


―テレレテッテテッテテーン♪


「おっ!」


来た!


この音は!


【レベルが上がりました】


【Lv1→Lv2】


「やっと上がった!」


……やっと?


俺は少し違和感を覚える。


進化前。


レベル1の頃は、もっと簡単にレベルが上がった気がする。


今回は小さい生き物を何匹か倒して、ようやくレベル2。


「レベルアップしにくくなってる?」


進化した影響だろうか。


種族が強くなった分、必要な経験値も増えている?


ありそうだ。


まあいい。


問題は。


進化後、初めてのレベルアップでどれくらい強くなったのか。


「ステータス!」


【種族】ポイズンミニルーパー


【Lv】2


【HP】18/18


【攻撃力】1


【防御力】35


【素早さ】5


【魔力】6


【幸運】9


【スキル】


《丸呑み》


《猛毒手》


《水中遊泳》


《水中呼吸》


《猛毒棘》


《防御》


《挟む》


《鑑定・小》


《毒回復》


《毒散布》


【特典】


《神の悪戯》


《水の女神の加護・小》


「…………」


もう一回見る。


HP。


13から18。


防御力。


25から35。


素早さ。


1から5。


魔力。


3から6。


幸運。


5から9。


「めちゃくちゃ上がってる!!」


何これ!


進化前と上がり幅が全然違う!


特に防御力!


一回のレベルアップで10も増えてる!


「すげえ!」


進化してレベル1に戻った時は、ちょっと損した気分だった。


HPも50から13まで落ちたし。


攻撃力と素早さなんて1になった。


でも。


これだけ一回のレベルアップで伸びるなら話は別だ。


「これ、レベル10まで上げたらどうなるんだ?」


防御力とか、とんでもないことになるんじゃないか?


しかも。


強くなったのはステータスだけじゃない。


俺には猛毒がある。


範囲攻撃もある。


回復能力まである。


「…………」


もしかして。


「俺、最強になってしまうのでは?」


……いやいや。


まだレベル2。


討伐難易度E級。


調子に乗るな。


前にも調子に乗ってザリガニに殺されかけたばっかりだ。


でも。


「この調子でどんどん行こう!」


そうだ。


ちなみに。


せっかく《鑑定・小》を手に入れたので、さっき倒したメダカみたいな魚も鑑定してみた。


結果はこんな感じだった。


【スモールフィッシュ】


【討伐難易度:E級】


どこにでも生息する小型の魚。


癖の少ない淡白な味わいを持つ。


酢の物にすると美味しい。


【Lv】3


【HP】10/10


【攻撃力】3


【防御力】3


【素早さ】5


【魔力】1


【幸運】1


「…………」


また料理情報あるじゃん。


「鑑定って絶対食い物基準で作られてるよね?」


俺の進化先には。


鍋。


天ぷら。


塩焼き。


蒲焼き。


香草蒸し。


そして今度は。


魚の酢の物。


「誰だよ、この鑑定作った食いしん坊」


まあ、それは置いておこう。


どうやら《鑑定・小》では、種族名と簡単な説明。


それからレベルと基本ステータスまでは確認できる。


ただし。


スキルや特典までは表示されないらしい。


「だから《鑑定・小》なのか」


もっと上位の《鑑定》になれば、相手のスキルなんかも見えるようになるのかもしれない。


これは今後に期待だな。


それにしても。


俺はスモールフィッシュのステータスをもう一度見る。


レベル3。


HP10。


攻撃力3。


防御力3。


素早さ5。


魔力1。


幸運1。


「…………」


弱い。


いや。


進化前の俺も大概だったけど。


こいつはこいつで、なかなか厳しい。


「転生先、こいつじゃなくてよかったかもしれない」


もし俺がスモールフィッシュに転生していたら。


特殊な毒もない。


防御力も低い。


ただ泳いで。


大きな魚から逃げ続ける。


そして最終的には――。


【酢の物にすると美味しい】


「…………」


俺より食われる未来が近そうだな。


「よし!」


進化の効果は十分分かった。


猛毒は強い。


ステータスの伸びもいい。


このままレベルを上げていけば、もっと強くなれる。


次は。


もう少し強い相手でも――。


「探してみるか!」


ポイズンミニルーパーになって初めての戦いは。


俺が思っていた以上に、あっさりと終わった。


そして俺はまだ知らなかった。


この川には。


進化した俺でも簡単には勝てない生き物が、まだまだいるということを。

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