第九話 シャーリー・レイヤ
俺はこの村の他の子供どころか、他の家とはあまり関わったことがない。
現在俺は、敷地の入り口からこちらを見ている子については、どちら様状態だ。
お?今あの子と目が合ったな。
すると子供も目が合ったことに気が付いたのか、ニパァっと笑ったかと思ったら、こちらに全速力で走ってきたのだ。
そうして俺たちの前に来ると、
「ねえねえ!今二人は何をやっていたの?」
なんだこの子は、興味津々、超活発な元気っ子のような奴だな…
「剣の特訓をしていたんだよ。ところで君は…」
「あたしシャーリー!」
「ああ!レイヤさんの所の娘か」
レイヤさん…?どちら様でしょうか?
「君も僕たちと混ざりたいの?」
「うん!」
「だって母さん、どうします?」
「うーん……まずは親に聞かないとどうとも言えないな…」
「どうして混ざりたいんだ?」
「ん?それはね、昨日二人が村のお外から来るのを見てたの!狼さんいっぱい持って帰ってきて、かっこいいって思ったの!それで今日、お散歩してたら、音が聞こえてね!そしたら二人がなんか棒みたいなのでぶつかってたのを見てたんだ!さっきのやつかっこよかったから、私もやりたい!」
この世界の女の子ってそういうのがかっこいいって思うのか?
「シャーリーちゃん、今何歳?」
「もうすぐ5歳だよ!」
「そっか、学び舎には行くの?」
「うん!」
「じゃあお父さんとお母さんに聞いてみるけど、いいよって言ってもらえたら、学び舎が終わった後にでも来なさい」
「ええ…今じゃダメ?」
なんて会話を横で聞いていたら、また入口の方から声が聞こえた。
「シャーリー!あんまり他所のお家に迷惑を掛けたらだめよ~」
「む?両親か」
「あ!パパとママだ!」
「丁度いい、今お願いしに行くか?」
「うん!」
そういってカエルが、子供と一緒に両親のもとへ向かった。
それにしてもすごい活発な子だったな。
あんな元気いったいどこから…って本来の子供はああいう感じなのかもしれないな。
ちょっと休憩がてら、カエル達の反応を見てみた。
子供の両親が何度も頭を下げている。
それを見たカエルがあたふたしだした。
そして今度はカエルが子供と一緒に頭を下げた。
子供の両親が悩んでいるようなそぶりを見せ何かをカエルに伝えると、子供が嬉しそうに飛び跳ねて母親の胸元に飛び込んでいた。
まさか…承諾されたのか?
あんな元気いっぱいの子が「明日から一緒に修行します!」なんて言わないよな…
ああいうぐいぐい来る子供ちょっと苦手なんだよな…
お!どうやら今日は帰るらしい。
去り際に子供が俺に向かって手を振ってきた。
いちよう俺も振り返してあげるか。
その後、帰ってきたカエルから、「明日から、あの子も特訓に参加することになった」と言われたよ。
やっぱりか…俺の予想は当たったか。
まあこの村の近しい年齢と関係を持つのは初めてだし。もしかしたら将来は、いいライバルみたいな関係になったりするかもしれないしな。
午後は魔法の特訓なので、ヴィヴィの家に向かった。
コンコン…
「先生いますか?アルケウスです」
返事がない……こういう時は大体寝ている時だな。
であれば、彼女の寝室は家の左奥にあるからそこから起こしに行けばいい。
彼女実は、外ではキリッとしたお姉さんな感じだが、家の中はかなり散らかっていて、午前に訓練の約束がない日なんかは大体午前中は眠っていることが多いんだよな。
お!あそこの窓から起こせるな。
ではみなさん!朝の挨拶は元気が一番!ということでさっそく、
あれ?起きてるじゃねえか。
窓をノックすると、こちらに気づいたようだ。
「あら、アルケウスどうしたの?」
「先生、今日は午後からの特訓でしょ?もう午後の時間になったから来たんですよ」
「え?もうそんな時間?」
「いったいなにをやってたんです?ただ突っ立ってるようでしたが」
「ほら、昨日油断したとはいえ不覚を取ってしまったでしょ?だから改めて精神を統一して自分を律してたの」
たしかに昨日のあの場面、一歩遅ければヴィヴィは大けが、最悪の場合死んでいたかもしれない。
でもあの最後の一匹には、全員が気づいてなかった。
彼女の魔力探知を潜り抜けたのかはわからないが、ただ群れを成す魔物、しかもそのリーダー的存在ならそういう魔法を回避してくるのかもな。
例えば、実は森に入った地点ですでに後ろからついてきていたとか。
こういうのは考えれば考えるだけ、無限に可能性というのは出てくるもんだ、やめよう。
「さて、昨日の戦いを見てどうだった?」
「改めて思ったのは、聞いたものと実際にそれを実行するのとではわけが違いました」
「先生、昨日使ってたいくつかの魔法と、最後の一匹をしとめる際になぜ、魔法名を言ったのかを聞いても?」
「そうね。あの時は、同一の目標をカエルと二人で狙っていたこと。この場合、私が何をしたいのかを、カエルに明確に伝えるために、あえて何を発動するのかを言ったの。もし何も言わなかったら、カエルは急に強化されて目の前に土柱が出ることになる。それで逃がしたら元も子もないでしょ?」
「相手を強化したり弱くしたりする魔法もあったんですね」
「まだ教えていなかったから。『スロウ』は相手の動きを短時間鈍らせる魔法、『フィジカルブースト』は身体能力を向上させる魔法ね。効力は発動させた術者の練度に依存するわ」
つまりバフやデバフの効力の魔法がある、この感じほかにもありそうな雰囲気だな。
そういえば回復系の魔法ってあるのだろうか、今まで怪我とかしたことなかったから知らないんだよな。
「傷を治したりする魔法もあるんですか?」
「もちろんあるわよ。回復と解毒ともにね」
あるのか、てっきり傷を負ったら包帯やハーブでなんて思っていたがそうではないのか。
とするとこの世界は日常も含めかなり魔法に依存している。
前世の道具でやっていたことが、魔法に置き換わってる感じだな。
「さて、そしたらそろそろ午後の特訓を始めましょう先生」
「今日は何をやるんです?」
「魔力切れを起こすまでよ」
「またですか?」
そしてその日の夕方、俺はヴィヴィに担がれて家に帰ることになった。
―――
翌日
今日は久しぶりに午前は何もない。
剣の特訓は昨日のシャーリーって言ってたような子が午後に来る関係で今後は午後になるそうだ。
何をするか…
暇だな
レイルに歴史でも聞きに行くか。
そう思い立ちレイルの書斎の前に来た。
相変わらず籠っているようだ。
コンコン…
「父さんいる?」
「ん?どうした?」
「今日は久しぶりに午前が開いているので何かご教授いただけないかなと」
そういうと扉があいた。
「久しぶりに父さんを頼ってくれるのか?」
「魔法に関して投げたのは父さんでしょ?」
「それはそうだが、たまには頼ってくれよな」
「今日は存分に頼らせてもらいます」
「分かった。じゃあ中でやろうか」
そういって中に入れてもらうと、とんでもない量の文献があった。
オード村が田舎というのはあるが、本なんてあまり見たことなかったのだが。
「すごい量ですね」
「父さんこう見えて、国の学者研究チームの元一員だからな。やめたときに結構持ってきたんだ。ハーハッハッハ!」
そんな高笑いしながら誇らしげに言われてもな…
「それで?何を知りたいんだ?」
「神様っている?」
「唐突だな…いるにはいるぞ」
「実在するの?」
「実在はしないと思うが、一様王国にはイニシ教という神を祀る団体がいるな。この村にはないが、いろんな所にその教会があるんだ。この世界を作った創造神ていう神様がいて、その神様を異常なまでに崇拝している団体さ」
話を聞く限り、この世界の宗教観は基本は神道に近く、一部敬虔な人たちが宗教団体を結成して熱心に崇拝している感じだ。
「父さんはそのイニシ教なの?」
「そんなわけないだろ、もしそうだったら教会のないこの村には住まないよ」
それもそうか。
この世界には神が一体存在するんだな。
創造神、実在するなら会ってみたいな。
異世界なら実在するかもしれないし。
午後になり、昨日の子が我が家にやってきた。
「今日から一緒に剣の修行をします!シャーリーです!よろしく!」
「よ……よろしく」
「あなたのお名前は?」
「アルケウスだ」
「じゃあアル君って呼ぶね!」
「アル君!?まあいいけど」
「よろしく!」
そんな元気いっぱいだと、ちょっと引くな。
「妹弟子ができたな、アル」
「母さん…」
「よし!じゃあまずは我が家の最初の特訓メニューだ」
「我が家の外周の走り込み、アル、一緒にできるな?」
シャーリーを見るとすごくキラキラした目で見てきている…
「ほら行くぞ、シャーリー」
「うん!」
こうして俺に妹弟子ができた。
シャーリー・レイヤ 5歳
職業:なし
魔術:勉強中
性格:とにかく明るい
オード村のレイヤ家の長女、明るめな金髪に、とにかく活発で明るい性格の持ち主




