第六話 この世界の剣
今日の魔法の特訓は無事に終了した。
いったん家に帰ろう。
それにしても充実した内容だったな。
この世界の魔法に関して、レイルだけでは知りようのないものもあったしな。
さてまだ昼過ぎなんだよな。
お昼は先生にご馳走してもらったし……
ん?家の敷地の入り口にいるのは、カエルか?
「おかえりアル、魔法の特訓はどうだった?」
「とても充実したものでした」
「そう。さすがヴィヴィね。今日はもうおしまい?」
「ええ、はい」
「そうか。ところでアルは、剣には興味ある?」
剣か、興味がないわけではないが、今は魔法のほうが興味がある。
「どちらでもですかね」
「あらそう。そしたら今日から剣についてをお母さんが教えてあげる」
「今からですか?!」
「ええ。アルがこの先どういう道を進んでいくかは分からないけど、もし魔法を使っていくにしても、体力や体の動かし方なんかは必ず必要になる。ほら行くよ」
そういって俺は首根っこを掴まれ連れてかれた。
何てパワーだよ。
そして今度は、我が家の庭で母直々に剣の特訓が始まった。
剣、ファンタジーな世界にはありがちな要素ではあるが前世の世界ではほとんど無縁だ。
だからまったく興味がないわけではなかったが、まさかこのタイミングとは。
そんなことを考えながら庭で待っていると、カエルがなにやら棒切れを持ってきた。
ん?
なんだか雰囲気がさっきとは違うような……
「よしアルよ、お前の体力がどれほどか見させてもらうために、まずは我が家の外周を1周してこい」
「いっいきなりですか?」
「なにをしている?早く行ってこい」
まじかよ、いきなり?
うちそこそこ広いんですけど?
前世の俺はそこまで運動が得意だったわけでもないからかなりしんどいぞ。
ていうか、雰囲気が変わったと思ったら、口調までスパルタ教官みたいな感じに変わっているんだが?
これ今後も続くのか?
「ハア…ハア…」
「ふむ、1分20秒程か」
キツイ!まだ5歳児の体で、しかも一度魔力切れを起こしている今日の体でこれはきつい!
「もうばてたのか?まあいい、次はこれを持て」
そういって渡された棒切れは、木刀のようなものだった。
「自由でいいから構えてみろ」
構えてみろと言われても、剣なんて振ったことないしな。
前世の中学校時代にやった剣道の構えでいいか。
「ふむ。シンプルだが、なかなかいい構えだな。では打ってこい」
「はあ!」
そういってこの日は、打ち込みと体力づくりを中心にした訓練をした。
これがこれから毎日続くのか、過酷すぎる気もするがやる気がないわけじゃない。
実際成長している実感というのは少なからず感じているのだ。
ならばこの世界に転生して二度目の生を過ごすんだ、悔いの残らないよう全力でやろう。
―――
二本の剣をただひたすらに振るう。
あらゆる方向から振るう。
相手が振るう剣に対して片方で止め、もう片方で反撃をする。
もっと素早く、鋭く剣を振るえ。
―――
次の日の朝、目を覚ました時に妙な感覚があった。
しかしその正体がわからない。
寝ている間に見た夢、そもそも夢を見ていたかすら覚えていない。
稀にあるこの感覚はなんなのだろうか。
まあいい、いつも気にしてはいないから今回も大丈夫だ。
そういえば先日、5歳になったという理由で空き部屋であった個室が俺の部屋になった。
大して広いわけでもないが今の俺には十分な広さの部屋だ。
朝食を食べに部屋を出ると、既にカエルが食事の準備をして待っていた。
「おはよう、よく眠れた?今日はヴィヴィが午前の間はアルの相手はできないってさっき来たから、午前は昨日の続き、午後は魔法の特訓ね」
朝一から運動か、まあしょうがないか
「さっ!早くご飯を食べて早速始めるわよ」
「はい!」
朝食を済ました俺たちは、早速家の庭で特訓を始めようとしていた。
そこで俺はある疑問が浮かんだ。
「お母さん、剣士って魔法を使ったりはしないのですか?」
「いないわけではないが。ただ数が少ない。魔法の扱いに長けるか否かで、冒険者などは魔術師になるか剣士になるかを選ぶんだ。私は魔法が得意ではないからな」
いないわけではない、世界には両方を扱う人もいるのか。
「これはヴィヴィからの受け売りだが、魔法を扱えない剣士でも、魔力は扱える。剣士は自分の魔力で身体能力を強化している。上位の剣士はこういった所の扱いがとてもうまい。下手な魔術師よりもな。って言っていたな」
魔力で身体を強化して、通常では切れないようなものも切ったりするっていうことか。
その技術をマスターしたら俺も将来、岩とかを剣とか手刀とかで切れたりするんだろうか。
「やり方についてはヴィヴィのほうがわかりやすく教えてくれるはずだ」
「とにかく今は体力作りと太刀筋を強化していくぞ」
カエルは元Cランク冒険者、レイル曰く実力はBランクといってもいい的なことを以前言っていた。
まだほかの冒険者だったりを見たことはないし、体もまだ子供なのはあるかもしれないが、打ち込んだ俺の木刀は軽々しくいなされるし、息も切らさずにいる。
魔力による身体能力を強化できるか否かでここまで変わるのかといやでも実感した。




