第四十四話 闘技大会トーナメント その3
翌日
今日はトーナメントの準決勝だ。
俺の相手はあのヴァレリア、そしてシャーリーの相手はチタだ。
どっちも一筋縄で勝てる相手ではない。
俺に関しては勝てる気がしないが…
それでもやるしかない。
「アルケウス、今日の闘技の相手…」
「ああ、分かってる。出来るとこまでやってみるつもりさ」
「そう…気を付けてね」
「心配してくれてるのか?」
「ヴァレリアが相手してきた人たちの惨状を思い浮かべたら心配するのは当然でしょ?」
「確かにそうだな…」
予選でもチタやほかの選手、一回戦でのマゴリもだが、ヴァレリアと対峙した者は悉く重症を負う。
同じような状態に俺もなるかもしれないと…
「まあ、出来るだけそうならないよう努力するさ。もちろん勝つつもりでな」
「アル君ならいけるよ!もし負けたとしたら私が代わりにやるから!」
「ならできるだけあいつの弱点とかが分かるようにしてみるか」
俺個人の強みは多種多様な手札の多さだ。
それを駆使して戦うほかないだろうな。
今の所奴の弱点とか何もわからないから何が効くかも分からないけど…
「さて皆様!本日は、先日の激しい闘技で勝利を果たした猛者たちによる闘技になります!今までも目を見張る闘技を我々も含め、皆様もご覧になったことでしょう!本日は、ヴァレリア対アルケウス、チタ対シャーリーの準決勝です。勝ったほうが決勝へと進む真の強者となります!」
「うおおおぉぉぉおお!」
もう聞きなれたこの歓声も日を追うごとに増している気がする。
それに比べ、控室は最初と比べれば静かになったもんだ。
なにせ選手は4人しかいない。
負けた選手は控えには入れないから、モナは一人客席で闘技を見ていることになった。
そんな静寂の中、俺に向かってくる足音が響いた。
「今日の俺の相手はお前だな?」
唐突にヴァレリアに話しかけられた。
「そうだな」
「今までのやつらより俺を楽しませてくれよ?」
どうだろうな…だが負けるつもりで最初から行くつもりはない。
「努力はする。もちろん勝つつもりで行くからな」
「ハッハッハッハッ!いいねその意気だ。楽しみにしておくとしよう」
自信に溢れたこの気迫、間近で受けるとやっぱり違うな。
これは少しの油断が足を引っ張りそうだな…
「ヴァレリア様、アルケウス様、準備が整い次第、フィールドへお願いします」
既に準備はできている。
そしてそれはヴァレリアも同じく、俺たちはそろって出場した。
「皆様!双方が揃って出場しました!既に準備は万端と言ったところでしょう。これより準決勝第一闘技を開始いたします!」
開始位置を悩んでいると先に決めたヴァレリアは予選と同じ中央に待機した。
あれだとどこにいても一定の距離以上は稼げない。
ならば俺も中央に立とうではないか。
「おおっと!双方中央から始めるそうです!」
「随分自信があるようだな?」
「どうせあんたのような奴は、最初は小手調べのつもりなんだろう?」
「よく分かってるじゃないかお前」
適当にそれっぽいこと言ってみたが合っていたらしい。
「それでは始めてください!」
毎度のごとく魔法が炸裂した。
開始早々、互いに試しの一撃がぶつかり、衝撃で後方へ飛んだ。
今の一撃で痛感した。
全力ではないにしろ、今の一撃を俺はかなり力を込めた、魔力も含めて…
だが俺の方がヴァレリアより後ろへ飛んだ。
重かったのだ。
表情からして全力ではない。
想定通りではあるが、確信した。
正面でぶつかっても勝てない。
やはり俺に出来る強みで戦うとしよう。
いきなりだが炎を纏った斬撃を放った。
この斬撃で切れるか知りたかったからだ。
この攻撃をヴァレリアは弾こうと腕を振った。
しかしその腕は切れた。
驚いた表情のヴァレリアだったが、それがすぐに喜んだものに変わった。
しかも腕はすでに元に戻っている。
「今のは驚いた。いいねお前、もっと見せてくれ」
そう言いながら俺に詰めてくる。
もう一度炎の斬撃を放つも、今度は切れずに弾かれた。
一瞬驚きつつも次は、土壁で進路を妨害する。
しかしこれも一瞬で突破された。
「どこ行った?」
壁の先に俺は既にいない。
一瞬で破られるのは分かっていたから、あくまで視界を塞ぐためでしかない。
俺は岩を伝い、ヴァレリアの頭上へ移動した。
そこから雷の斬撃を放った。
「がっ!」
攻撃は当たり、ヴァレリアの体が硬直した。
その隙に、火球、氷柱、水球…あらゆる攻撃魔法を叩き込んだ。
「やっぱり意味ないか…」
すべて命中はした。
が、ダメージを負っている様子が見られない。
「今のはなんだ?ビリっとしたと思ったら体が動かなかったな?」
「さあなんだろうな」
「まあ、もう慣れた」
スピードが上がった!
―――ドンッ!
間一髪で回避した。
俺がいた場所の地面が陥没している。
こんな威力の一撃、まともにもらうのはマズイ。
「よく反応した!」
「くっ!」
ヴァレリアの連撃が襲い掛かる。
剣でいなしたり、土壁を間に生成したりで何とか防いでいるが、それでも一瞬間が開くだけで殆ど変わらない。
突如脇腹に衝撃が走り、視界が回転した。
「ゴフッ―――」
吐血しながら俺は地面に転がった。
どうやら今の一撃で内臓にもダメージが行ったっぽいな。
クソッ!治癒魔法が使えれば、多少は直せたはず。
モナに頼ってきたのがここにきて仇になるとは。
燃えるような激痛が襲ってくるが、条件は揃った。
「立ち上がるか、いいねぇお前」
立ち上がりヴァレリアを見る。
さっきの攻防で使った土壁で直線となる導線を作った。
奴がこのまままっすぐ来てくれれば、特大の一撃を放てる。
「まだ終わらねえぞ…来いよ!」
「そうこなくちゃな!」
ヴァレリアが導線の通りに来た。
詠唱の時間はないし、初めて使うから失敗するかもしれない。
その時は俺の負けは確定するんだがな…
魔力を集めて槍の形にする。
その槍は焔を纏う槍。
それは火の上位魔法『緋焔槍』だ。
「なっ!?」
導線を埋め尽くすほどの炎の槍。
ヴァレリアに回避をする余裕はなかった。
確実に命中した。
燃え盛る炎の中にあったものは、かつてヴァレリアだった下半身のみだった。
上半身が完全に吹き飛んだ状態だ。
「やべっ、やっちゃったか?」
殺しはルール違反だ。
これでは俺の負けになる…
しかし突如その下半身が歩き始め、同時に再生を始めた。
それもすさまじい速度で再生していくのだ。
あまりの不気味さに立ち尽くしていると、あっという間にヴァレリアは元に戻った。
「マジかよ」
もしかして、とある漫画の魔人みたいに細胞一つ残さず消滅させないと倒せないのか?こいつ。
「ハッハッハッハッ!今のは驚いたぜ。ここまでやられるのは久しぶりだ、お前の強さを認めてやる」
「おっおう…それはどうも…」
「だからもう手加減はしねえ」
「へ?」
再びヴァレリアが攻撃してきた。
しかも上裸の状態で…
「ちょっ!せめて服ぐらい着ろよ!」
「そんなこと今関係ねえだろ!」
いやあるよ!
目の前の相手が上裸な状態で戦えと!?
ある意味精神攻撃なんだけど?!
こいつ…腦筋かよ!
羞恥心とかないのか?
くそっ…目のやり場に困る!
「止まれヴァレリア!」
突如大声が響いた。
「ああ?なんだよリオン!」
「ヴァレリア、外では構わんが…せめてここではその格好で戦うのはよしてくれ。皆が目のやり場に困る」
そうだよね!
その通りだよな!
俺も困ってるし。
「チッ!分かったよ。少し待て」
そう言うとヴァレリアの体にさっきまで着てた鎧とかが突如出現した。
「それどういう原理だ?」
「これは俺で出来てんだよ」
ん?
俺で出来てる?
どういうことだ?
「意味が分からん…」
「これは俺の体の一部なんだってことだ!」
細胞でも使っているっていうことか?
多分そういうことだろう。
「これでいいよな?」
リオンが頷いた。
「よし、あいつの許可も出たし、続きやるか」
マジでこいつどうやったら勝てるんだよ…
「片っ端から試すしかないか…」
「お前のすべてを見せてみろ!」
ヴァレリアの猛攻が続く中で色々試した。
水の物量…効果なし。
凍結…効果なし。
感電…さっきよりも効果なし。
燃やす…効果なし。
何をやっても大したダメージを負わせられない。
斬撃も同じだった。
不可視の斬撃も薄皮が切れる程度で、最初こそ驚いていたがすぐに気にせず攻撃してきた。
そして、ついに俺が倒れることで決着はついた。
魔力切れを起こしたんだ。
30分ほどの長期の戦闘で魔力を使い果たした。
俺ではヴァレリアに勝てなかった。
救護員に控室に運ばれた俺のもとにヴァレリアがやってきた。
「久しぶりに面白い戦いができたぞ人族」
「それはどうも、こっちとしては何をしても効果が無いようだったがな」
「まあこの俺相手ではな、だが俺たち不死魔族以外には通用するだろうよ」
そうか…それはうれしいこと言ってくれる。
「お前は強い、だから名前を教えろ。強者の名前なら俺は覚えられるからな」
「アルケウスだ」
「アルケウス…よし!覚えた。また機会があったら遊ぼうぜ」
「ハハ…行けたら行くよ…」
そう言ってヴァレリアは去って行った。
どうやら認められたらしい。
嬉しいような、そうでもないような曖昧な感覚だが、なんか自分より強いやつに強いと言われるのは悪くないな…
次の闘技はシャーリーとチタの対戦か。
もちろん全力でシャーリーを応援しようじゃないか。




