第四十五話 闘技大会トーナメント その4
俺とヴァレリアの激闘により、荒れに荒れたフィールドが現在修繕中だ。
次のチタとシャーリーの対決は、昼休憩をはさんで午後から行われることになった。
激闘を繰り広げ、魔力切れを起こした状態の俺の体に食事が染み渡る。
いつもと変わらない食事がいつも以上に美味しく感じた。
ヴァレリアの強さは異常だ。
それは客席や控室で見ていた二人も同意見だという。
あれだけやったのに、見たところダメージを受けていた様子がない。
不死と言われるだけあることを改めて痛感した。
ああいうパターンって、再生に上限があったりするもんだろ普通。
さらにあのフィジカルとごり押してくる脳筋戦法、ヴァレリアだからこそできる戦法なのにそれがまかり通るのだから厄介だ。
「ごめんなシャーリー。何も見出せなくて」
「別に大丈夫だよ。そもそも私、アル君みたいにいろんな戦い方できるわけじゃないし」
「とりあえず今は次に戦うチタに向けて集中するべきじゃない?」
モナの言うとおりだな。
結局次のチタとの闘技に勝たなければ、いくらここで話し合ったところで意味を成さないしな。
「お前なら勝てるさ」
「もちろんそのつもりで行くよ。残ってるのは私だけだからね」
「おう、頑張れよ!」
―――
・シャーリー視点・
お昼を食べた後に、控室に戻ってきた。
私の出る闘技まではまだ少し時間があるから、今のうちに装備の手入れをすることにした。
私の相手するチタは、このトーナメントの最初の闘技で相手の武器破壊を狙っていた。
多分私にもその戦法を仕掛けてくるはずだ。
もちろんそんなことをやらせるつもりはない。
それでも事前に準備するに越したことはない。
チタの強みはその圧倒的な速度で攻撃してくること。
まだ対面で戦ったことがないから、今の私でどれほ追いつける速度なのかは分からない。
でも勝って見せるよ。
二人はもう負けちゃったけど、まだ私がいる!
装備の手入れが終わる頃にチタが控室に来た。
「今日の闘技、私が勝つから」
それはこっちだってそうだよ。
「私こそ負けるつもりはないよ」
「いい闘技にしましょ。それと、最初に出会った時のこともう一度謝るわ」
「急にどうしたの?」
「あんたのお仲間さんの闘技をこれまで見て来たけど、想像を超える強さだった。正直あの二人には、勝てないかもと思わされるぐらいだったわ」
「意外とそうでもないかもよ?」
「もちろん私だって勝つ見込みはある。ただ、それこそさっきのアルケウスとヴァレリアの闘技なんて、私ではあそこまで粘れないわ」
「アル君はすごいよね。剣だけだったら私負ける気しないけど、アル君はそれ以外の戦い方を持ってる。だからこそ私はアル君が本気で戦ったら勝てないと思ってるよ」
「そんな奴のパーティメンバーのあんたもそれ相応の強さを持っているでしょ?だからこその謝罪。そしていい戦いにしたいわ」
「私もあの二人のために全力で戦うよ」
チタは思ってたよりもいい人なのかもしれない。
それでもこの闘技は絶対勝つから。
皆のために…
「皆様お待たせしました!これより準決勝第二闘技を開始いたします!」
始めの位置は…やっぱり真ん中かな?
ここなら私もチタに仕掛けやすいし。
「今回も双方中央から始めるようです!」
どうやらチタも真ん中から始めるっぽい。
まあ、それならそれでいいか。
「それでは始めてください!」
合図と同時に私は切りかかるつもりだった。
動いたのは同時だったけど、動くスピードが速かった。
一瞬で目の前からチタは消えた。
実際の彼女のスピードを体験すると想像よりも速い。
「どう?見ていた時と比べて」
「速いね、想像以上だよ。けど私も負けてない」
チタのように常に速く動き続けることはできないけど、一瞬だけなら私でも追いつける。
―――キンッ!
追いついたのに攻撃は防がれた。
「やるね!」
「そっちこそ!」
動き回るチタの攻撃を防ぎ、その後反撃をする。
同じ攻防で、剣のぶつかり合う音が響き続いた。
お互いに決定的な一撃が生まれない。
目で追えているから攻撃は捌ききれる。
だけど先手を打てないからいつも後手に回って反撃が防がれる。
だから目で見るのはやめた。
気配で動きを読むんだ。
目を閉じて集中した。
風を切る音や地面から伝わる振動を感じ取る…
ここだと思った所に剣を振った。
チタの動く先に合わせた一撃は彼女を驚かせ、攻撃を防ぐことなく回避させた。
やっぱり私はこれが得意だ。
だけど…
「私の動きを先読みして攻撃をしてくるなんて驚いたわ。けど無駄よ、どうやら私の方が速いようだもの」
チタの言うとおりだ。
何度やっても私の攻撃速度より、チタの移動速度の方が速い。
先読みの攻撃は、チタが攻撃する前に私が攻撃する形になるけど、相手の方が速いから避けられる。
かと言って、攻撃された後に反撃しても意味がない。
チタの動き方はここにある岩々を足場に跳躍して移動し続けていること。
岩…か…
見つけた。
これでやってみれば勝てるかもしれない。
目を閉じてチタの動きを感じ、先読みの攻撃をする。
けどこれはチタへ向けた攻撃じゃない。
避けられる前提の攻撃で岩を切った。
けど切れていることを悟られないよう切った上を乗せたままにする。
後はこの岩をもう一度足場にすれば…
「なっ!?」
崩れた足場じゃうまく踏み込めるはずないもの。
当然バランスを崩す。
地面に転がったチタへすかさず追撃を入れる。
流石のチタでも攻撃され続ける状況から、自慢の速度は出せない。
私の攻撃速度だって、別に遅いわけではないのだから。
「はああぁぁぁああ!」
「くっ!―――この!」
一方的な状況を打破するならそれをやめさせる隙を作ること。
チタは私の攻撃を大きく弾いた。
私の剣を持っていた左腕が大きく後ろにそれた。
チタのスピードであればその一瞬の隙で攻撃ができる。
「惜しかったわね、私の勝ちよ!」
大きく空いた左側の隙にチタの突き攻撃がきた。
そして見事に左肩を貫いた。
―――痛い。
けど―――これを待っていたんだ。
弾かれた腕は既に剣を手放している。
その手でチタの突き刺している腕をつかんだ。
「あんた!いったい何を!?」
「こうすれば、もう逃げられないよね」
「クソ!はなっ!」
空いている手でまず顔を殴った。
がむしゃらに殴った。
体の至る所を殴り、そして殴り飛ばして壁に激突させた。
「ハア……ハア……ハア……痛っ!」
左肩に残るチタの剣を抜くと、血が大量に飛び出した。
左腕に痛み以外の感覚がない。
無理しすぎたかなぁ…
けどまだ終わってないから、抜いた剣でチタへ追撃しないと。
「待って…」
「ん?」
「降参よ、私の負け…」
「え…どうして…」
「あんたのその精神力相手に勝てる気がしないわ。それに結構ボロボロだし」
「ふーん、まあそういうことなら」
「勝負が決まりました!この闘技の勝者はシャーリー選手です!」
大きな歓声が私達を包んだ。
今みたいな激しい戦いの後だと、なんだかうれしくなるな。
「肩貸そうか?」
「お互い重症でしょう、救護に任せればいいの。あんたも下手に動かず座りなさい」
「そうなの?分かった」
この後、救護の人たちに治療を受けた。
そのおかげで腕も無事直った。
あと一回勝てば優勝かぁ…
―――
・アルケウス視点・
すさまじい激闘だった。
あんなハイスピードの斬り合いによる攻防はこの先でも見ることは少ないだろう。
しかもシャーリーの奴、本当に勝ちやがった。
苦戦を強いられたとは思う。
本当に強くなったなあいつ。
決勝は翌日、つまり明日が最終日となったわけだ。
だが肝心の相手があのヴァレリアだ。
俺やチタすらも圧倒したあの強さ。
無事に勝つことができればいいが…
闘技後に俺たちとシャーリーは合流した。
一応モナに受けた傷をもう一度治癒してもらった。
明日の試合に影響しないよう、念には念をだ。
「明日のためにシャーリーはしっかり食べて寝ること。いいな?」
「疲れてるし最初からそのつもりだよ」
「本当によく頑張ったな」
「私も褒めてあげる」
珍しくモナがシャーリーを撫でている…
「急にどうしたの?嬉けど…えへへ」
まあ俺としてはなんだか微笑ましい瞬間が見れていいんだが…
その後の食事中にチタが一緒に食事をしに来た。
ついでに初めて会った時のことを再度謝られた。
改めて俺たちの強さを再認識したからとか。
こちらとしても特に気にしてないと言うと、ありがとうと言われた。
俺とモナに関してはあまり関わっていないが、シャーリーとは戦ったもの同士話がはずんでいる様子だった。
食事が終わると、明日の闘技はシャーリーを応援する言い、別れた。
「なんだか好かれたみたいね?」
「根はいいやつなんじゃないか?」
「そうかもね」
チタ 17歳 女
性格:調子に乗りやすい
魔術:苦手で使わない
闘技場ポイント制の現ランク一位 圧倒的なスピードで戦う 地形を利用して跳躍し続けることで直線の動きで加速する




