第四十三話 闘技大会トーナメント その2
昼を挟み午後になった。
次は3回戦。
チタとアイエナという奴の闘技だ。
チタについては今まで何度か見てきたから言うまでもない。
逆にアイエナに関しては予選でモナが一瞬で氷漬けにしてしまったのでよく分らん。
強さどころか戦い方まで全部だ。
唯一分かるのは凍った状態からいち早く復活したことだけだが、これに関しては何も参考にならない。
距離が離れてたとか、凍る具合が甘かったとか、耐性があるとか…
いくらでも条件はあるのだ。
故に分らん。
チタを応援しているわけではないが、まあ勝つだろう。
なにせここのランク一位なんだからな。
「シャーリー、一応チタの動き方や戦い方は観察しておけよ。お前が勝てば次当たるのはおそらくあいつだからな」
「うん、そうだね」
正直大会の賞品に興味はあまりないが、出るからには優勝したいじゃん?
すでにモナの敗退は決定したし、俺も次に当たるやつに勝てるか怪しい。
少しでも優勝できる可能性を上げたいからな。
しっかりシャーリーにはチタの動きを観察してもらわねば。
時間になり二人が出場した。
「皆様お待たせしました!これよりトーナメント三回戦となります!」
「チタ選手については、この闘技場の常連なら知らぬ者はいません。日ごろから行われているポイント制闘技における現ランク一位!予選でも見事な戦いぶりを披露してくれました!」
「対するアイエナ選手、予選ではモナ選手によって全員が凍らされた中、最も早く檻を破りました。まだその未知の実力を発揮してくれることに期待します!」
合図と同時に両方が動いた。
チタはすぐさま超スピードを仕掛けたのに対し、アイエナの戦い方は四足歩行スタイルだ。
短剣を握りしめた手すら足とし、岩々を軽やかに移動しながらチタの攻撃をいなしている。
チタに比べたらではあるがなかなかに速い動きではある。
チタの攻撃は防げているが、アイエナの攻撃は当たらない。
互いに決定打が決まらない攻防がしばらく続いてく内、ぶつかり合う感覚が短くなっていった。
そして…
―――キンッ!
突如甲高い音が鳴り響いた。
その音の出所は、アイエナの短剣だった。
チタの攻撃は武器の破壊が目的だったのだ。
武器を失い素手の状態となったアイエナ。
高速で動き回るチタに向かっていくも、その攻撃は悉く空を切る。
そして無残にもチタの攻撃を無数の攻撃を浴びた。
体のいたるところに切り傷が刻まれ、ついには倒れた。
三回戦はチタの勝利となった。
ついに四回戦。
シャーリーの出番だ。
相手は予選で俺と同じグループのダグスだ。
こいつも正直何も分からない人物だ。
予選の時、最も近くにいたから最初に攻撃した。
そのあと何をしていたのか知らないが、俺の全体攻撃に巻き込まれながらいち早く復帰した人物だ。
「じゃあ行ってくる!」
「油断しないようにね」
「大丈夫だよ!だって私、負ける気しないもん」
それを油断だってモナは言ってるんじゃ?まあいいか…
「なら遠慮なく倒しちゃいなさい」
「任せてよ!」
シャーリーは意気揚々と出場していった。
「皆様お待たせしました!本日最後の闘技、トーナメント四回戦を行います!」
「シャーリー選手は予選ではマゴリ選手の猛攻の中、最後までたっていました。それだけではなく、二人の兄弟相手に一歩も遅れることなく立ち回っていました。この闘技でもそれを見れるでしょうか?」
「対するダグス選手、予選ではアルケウス選手の見事な一撃により全員がダウンする中で最も早く復帰した選手。常連の方ならご存じポイント制では現在五位の実力者です」
へぇー、五位なのかあいつ。
それなりに実力はあるのか。
そもそも何人中のランキングかは知らないが…
闘技が始まり先に動いたのはシャーリーだった。
真っ先に相手に詰め寄った。
しかしそこにいるはずの相手は姿をくらましていた。
「あれ?どこ行ったの?」
そうなるはずだ。
俺は見ていたから知っている。
開始と同時にダグスは地面に穴を掘り、そこへ潜っていった。
しかも自分がそこへ入るなり入り口を消したのだ。
遠目からでも分かる違和感のなさ、あれでは入った瞬間を見なければ分かるはずもない。
魔力探知が使えれば潜った相手の位置も分かる。
だが知っての通り、シャーリーは魔法を使えない。
「ん?」
突如シャーリーがその場から動いた。
いや、動き続けている。
徐々に速度を上げながら動いている。
「振り切れないのか」
そう言うとシャーリーは動くのをやめ、その場に止まった。
直後土煙を上げながら爆発が起きた。
ダグスが土の中から攻撃した衝撃だ。
シャーリーは何とか回避に成功していた。
「今のを避けるか、やるな。だが次は外さない」
再びダグスが潜った。
「別に外す心配はないよ。次は避けない」
「あいつ何言ってんだ?」
避けない宣言をしたシャーリーに俺は戸惑った。
何をする気なのかが全く読めない…
その後少しの静寂が流れてた。
「君の弱点は」
そう言いシャーリーは空中へ飛んだ。
するとその足元からダグスの攻撃が来た。
「穴へ入るときと出るとき」
空中から落下するシャーリーと地面から飛び出したダグスの攻撃が互いにぶつかり合った。
ガキンッ―――と金属同士のぶつかる音が響き、衝撃で煙を巻き上げた。
「その瞬間しか脅威じゃないことだよ」
煙が上がるとそこには、地面に仰向けで伏せるダグスとそれを見下ろすシャーリーの姿があった。
ダグスは衝撃で意識を失っていた。
これにより四回戦勝者はシャーリーとなった。
今日の闘技は終了。
次回は明日行われるとのこと。
俺たちは疲れを癒すため宿に戻った。
そこでシャーリーに今日のことを聞いてみた。
「お前、よく攻撃のタイミングが分かったな」
「私たちは探知魔法で視ていた分かるけど、シャーリーは使えないわよね」
突如動いた時は驚いた。
あの時地面の中の魔力反応が、真下からシャーリーへ向かっていくのが見えた。
今思えばあれは、ダグスが地中から攻撃する動作と同じだった。
「簡単だよ。地面から伝わる感触で何となくだけどね」
地面から伝わる感触か。
「でもびっくりしたのは、穴を掘っているときのスピードが私に追いつけるぐらい早かったことかな?」
「でも最後に言ったろ?それしか脅威じゃないって」
「うん、地面の中に入るとき、いるとき、出るときはあいつ強いよ。でも本当に強いと思える瞬間がそこだけだったんだよね」
初速のみしか脅威じゃなければ、あとはタイミングをずらしたってとこか…
「まあなんにせよ、俺とシャーリーはトーナメントの一回目に勝ったんだ、よしとしよう」
「私に勝ったことがかしら?」
「それはしょうがないだろ、別に俺だって組みたくて組んだわけじゃないんだから」
「冗談よ」
「でもアル君の明日の相手、あのヴァレリアっていうやつでしょ?あいつ相当強いよ?」
「だよなぁ…そこは以前から問題視はしてるがいまだ結論は出てない」
まあ結局その日も特に案は出なかった。
明日の闘技、こええなぁ…




