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知と記憶の回廊を抜けて:異世界で二度目の生を  作者: 三木 天
獣人編

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第四十一話 闘技大会予選

大会が始まり、大歓声で包まれた闘技場。

そんな中俺たちは控室のようなところで待機している。

すると、早速アナウンスがされた。


「ただいまより、第一闘技を始めます。グループAの選手はフィールドにお集まりください!」


最初の試合はAグループ、シャーリーのグループだ。


「じゃあ行って来る!」


「気をつけてな」


「負けるんじゃないわよ」


「大丈夫任せて!」


自身満々でシャーリーは控えから出て行った。

あいつのことだから簡単には負けないだろう。

なにせ近接戦闘ではうちで一番強いからな。

あいつがもし負けたら残りの俺たち二人では勝てる見込みが低くなるだろう…


「心配ね」


「シャーリーを信じろ」


俺たちは決して弱くない。

だが最強でもない。

だからこそ今回のこの経験をしっかり生かす。

ちなみに控えの選手には専用の閲覧室があり、そこから闘技を見ることができる。

場所的に客席の下に位置する場所だろう。


フィールドにはそれぞれが好きな位置から試合を開始できるようだ。

ほとんどがフィールドの外側、つまり端からスタート出来るよう陣取っている。

当のシャーリーはというと、


「なんであいつ堂々と真ん中に陣取ってるんだ?」


「さあ…?」


まさか全員を倒すつもりでもいるのだろうか…

さすがにそれは無理がある。

いくらシャーリーでも獣人族を7人も相手にするのは危険だ。

ましてやここは獣人族の本拠地、いわばアウェーな状態でもある。


「流石に全員相手にしないよな?」


「さすがにそこまで頭の回らない彼女じゃないと思うけど…」


「それでは選手の準備が整ったようなので闘技開始の合図をさせていただきます!」


そしてアナウンスが流れた。

するとギルド職員が空中に魔法を放った。

ボンっと音を立て炸裂し、それと同時に獣人族選手たちがまず動いた。

どうやら今のが開始の合図らしい。

俺と同様にそれを理解するのに一歩遅れてシャーリーも動き出した。


状況はまさに混戦といえる状態にあっという間になった。

近しい者同士で戦ったり、行き当たった場所で唐突に戦いが勃発したりとまさにバルロイヤルといえる状態だ。

獣人族の戦い方は地形を頻繁に利用してくる。

障害物をしなやかに躱したり、逆に足場として利用することもある。

だが見ているとやはりチタは別格だ。

速度が違うのだ。

あれを見れからだと遅く感じる。

感じるだけで決して遅いわけではないんだけどね…


そんな中シャーリーは二人を相手にしている。

相手の二人は姿が似ているからおそらく血筋関係だろう。

なかなかに二人のリズムを崩すのに手間取っているように見える。

一方の攻撃を防ぐタイミングでもう一方が仕掛けてくるように、タイミングを上手くずらしている。

反撃しようにもできない状態だ。


どこからかほかの選手が吹き飛んできた。

そしてそれは、シャーリーを後方から襲った。


「上手い!流石だな」


つい漏れ出た言葉。

シャーリーはその飛んできた相手を躱し、戦っていた二人の片方にぶつけさせたのだ。

ぶつかった相手は当然のように倒れた。

二人の連携が不可能となったチャンスをシャーリーは見逃さない。

1人となった相手選手をシャーリーはあっという間に制圧した。

相手の攻撃を受け流し、そのまま鳩尾に柄を当て気絶させた。

起き上がったもう一人は負けを宣告した。

二人で決勝トーナメントに上がるつもりだったんだろう。


試合はその後シャーリーに向かって選手を投げ飛ばした大柄な獣人がほかの選手を仕留めて終わった。

もちろんシャーリーは残っている。


Aグループ勝者

・シャーリー

・マゴリ



「ただいま!」


「おかえり!」


シャーリーが戻り、三人でハイタッチをした。

シャーリーのテンションに吞まれてやってしまったがちょっとハズイ…

だがまあ、これも悪くない。


「無事予選は突破したな」


「そうだね!次はモナでしょ?頑張って!」


「そうね、私も勝ってくるわ」


「その意気だよ!」


次はBグループ、モナのグループだ。


「モナ、獣人族たちを相手に自信はあるか?」


「そうね、あのチタっていうやつの相手はちょっと厳しいかもだけど、シャーリーの闘技を見る限りあのレベルなら問題ないわね」


自信はあるようで何よりだ。


「頑張れよ」


「ええ、必ず勝ってくるわ」


フィールドに出たモナはシャーリーとは違い、端に陣取った。

本来前に出ることのない魔術師が背中を壁にしながら戦うのはいい戦法だろう。

それでも初めて会ったときにした模擬戦で、モナは近接戦闘でもそれなりに動けることを俺は知っている。

とは言え、あの時の俺とモナが相手する獣人族たちが同じ実力とは限らないよな。

ましてや今回は一対一ではない。

そうなる可能性もあるが、場にいる全員が敵だ。

どう切り抜ける?


「それでは闘技開始です!」


合図と同時に先ほどと同じ魔法が放たれ炸裂した。

それと同時にフィールドに散らばる岩々が一斉に移動した。

移動先はモナの周囲だった、まるでモナを守る壁のように。

そしてフィールドは、端にいるモナの周囲以外が更地になった。

あまりに唐突なことに観客も選手も皆が唖然としている。

もちろん俺もだ。

そしてどこからか詠唱が聞こえてきた。


「冷気を纏いし風 その力をもってして、一帯を支配しよう 逆らう者に凍てつく氷の鉄槌を―――」

「フロストノヴァ」


術が発動すると、フィールド全体が一瞬で凍り付いた。

もちろん場にいた他の選手も含めてだ。

時間にして十秒ちょっとぐらいか?

あまりにも一瞬だ。

急激に気温が下がっていくのが分かるレベルの魔法だ。


岩の壁をチリに返しながら、モナが中から出て来た。


「これで終わりでいいかしら?」


フィールドに返事をする者はなく、静寂が訪れた。

このパターン、よくあるやつだと観客から罵声を浴びせられたりするやつじゃないのか?

不正だ!とか、汚いぞ人族ごときが!とか…


「うおおぉぉぉぉおお!」


俺の予想に反し、突如歓声が上がった。

すごいぞ!や、人族やるな!とかの賞賛の嵐だ。

誰もモナへの罵声を放つ者はいなかった。

控えにいた者たちでさえ、皆が歓声を上げている。

チタも驚いたのか関心しているようにも見えた。


その後、氷漬けから元に戻った最初の選手がBグループの勝者となった。


Bグループ勝者

・アイエナ

・モナ



「流石バルドー王国宮廷魔術師だな」


「いつまでその肩書を擦り続けるわけ?」


「アル君なら一生かも?」


「お!分かってるじゃないかシャーリー」


「あんたたちぶっ飛ばすわよ」


「おお、怖い怖い」

「それにしてもだ、まさかフィールドをすべて凍らすとは予想もしてなかった」


どう戦うのかの予想はつかなかったが、あんな芸当をするとは本当に予想外だった。


「岩の移動とかもいつから考え、どうやったんだ?」


「そうね、いくら私でも大勢を相手に近距離の戦闘は難しい。だから一方的な状況に出来るよう調節したかったの。あの岩はまさに絶好の壁だったわ」

「闘技が始まる前から私の加護の力で岩の魔力を見て、あとはそれを自分の制御下に書き換えただけよ。ついでに障害物もなくなるから、私の魔法も防げないし私に寄って来る時間も稼げる、一石二鳥でしょ?」


開始前から入念に準備していたわけだ。

策士だな。


「私だったらすぐ岩を切りに行ったのになー」


それは魔法を普段の戦闘で使う者が近くにいる者の発想だ。

獣人族にとって魔法は身近にない人の方がほとんどだろう。

だからあの時、モナの魔法に対して反応が遅れたんだ。

俺もあの場にいたら無事では済まなかっただろう…


モナがフィールドを更地にしてしまったので、修繕兼小休憩を挟んでから俺のCグループの闘技が行われることになった。

そこで丁度お昼時なので昼食に行くことにした。


ここにきて一週間程度が経過してようやくここの味にも慣れてきた。

といっても相変わらず正体の分からない食事だが、だんだん味の良し悪しが分かるようになった気がする。

今日食べている物に関してはそれなりに美味い。

普段と変わらない肉、穀物、果実だが、なんだか肉の味付けがいつもと違う気がする…多分?

そんな食事中にチタが話しかけてきた。


「あんたたち、その…実力を見誤っていたこと、謝るよ」

「さっきの二人の闘技には驚かされた」


正直俺も驚いた部分はある。

それにしてもまさか謝罪に来るとは、本当は根はいいやつみたいな感じか?


「そっちのあんたも多分強いだろ?」


俺か?俺のことか?


「まあ、二人が勝ったから俺も負けるつもりはないとだけ言わせてもらう」


「私も負けるつもりはないから、トーナメントで合ったら容赦しないわ」


「私たちもだよ!」


そう言いチタは去った。


「負けられなくなったわね、アルケウス」


「そうだな」


昼食後の午後、俺のCグループの闘技が行われる。

俺はすでにフィールドの端側で待機中だ。

俺はモナのような芸当は流石にできない。

なので作戦は…思いつかない。

いったん俺にできることを改めて整理してみるか。

まずは近接における剣術、そして魔法も扱える、それらを合わせた斬撃による遠距離攻撃、今なら複数の属性を合わせて使えるってところか?

これらを生かした作戦か…



自分もろともになるかもしれない作戦を思いついた。

だがこれが思いつく中で最も確実に勝てる方法だろう。


「それでは闘技開始です!」


同じように闘技が始まった。

始まると同時に俺は走り出し、同時に剣を水の魔法で覆い、敵に攻撃をしていく。

水がクッションとなり切れることはないが、吹っ飛ばすことはできる。

これは後に生きてくるマーキングだ、同じことをこの場にいる全員にやる。

ヘイトを買ってしまう危険はあるが構うものか。


攻撃や反撃をかいくぐり、やっとのことで全員にマーキングを付けることができた。

ここまでくれば勝ったも同然、最後の仕上げをするか。


マーキングした位置を探知で把握し、剣から水の導線を対象へとつなげる。

これ自体は何もしない。

攻撃力ゼロだ。

全員につながったことを確認したら、岩場を伝い空中へ飛ぶ。

障害物がないことを確認して、最後だ。


剣に纏う属性をもう一つ追加した。

それは雷だ。

雷が水で出来た導線を伝い、マーキングしたすべての相手を感電させていく。

そうだな、名付けるとしたら…


「エレクトリックショック」


導線を伝う速度は一瞬だ。

瞬く間に場にいた全員が倒れていった。

感電死しないよう威力は調整した。

それでも動けない程度の威力はあるがね。

結局全滅させてしまったので、同じように最初に立ち上がった者がもう一人の勝者となった。


Cグループ勝者

・ダクス

・アルケウス



歓声を浴びながら控室に戻ると、


「無事三人突破だね!」


三人で再度のハイタッチ。


「それにしてもあんなやり方で勝つなんてね」


「あれが確実だと思っただけさ」


「ホントあんたの発想力には、毎回驚かされるわよ」


まあ、モナのやり方を一部まねたと言ってもいいけどな。

やり方が違うだけだ。


さて次はいよいよ予選最後のDグループの闘技だな。

チタももちろん注目の人物ではあるが、もう一人注視すべきはヴァレリアとかいう魔族だ。

チタが騒ぎ立てるほどの人物なら、いったいどれほどの実力があるか。

魔族と戦う上での参考にしたいところだ。


「いよいよね」


「そうだな」


俺たち全員が注目する闘技となる。


Dグループに出場する選手が次々とフィールドに現れる。

チタもすでにフィールドの外側で待機している。

魔族のやつは…まだ来ていないようだ。


「ようやく俺の番だな」


少し遅れて入ってきた魔族。

そんなやつが立った位置は、シャーリーと同じ中央だった。


「まさか私と同じところに立つなんてね!」


「シャーリーと同じタイプってことか?」


だが見た限り剣といった武器類は装備していない。

精々簡素な鎧を纏っているぐらいだ。


「それでは闘技開始です!」


恒例の号令が鳴り、一斉に動き出した。

やはりチタは早い、速攻で隣の選手に攻撃を仕掛けていった。

対して魔族の方はというと……

動かず、腕を組んで待機していた。

その背後から二人の選手が地形を利用しながらの奇襲を仕掛けた。


「ほう?俺に挑むか?」


ヴァレリアは二人の顔を持ち岩にたたきつけた。

その瞬間速度はシャーリーを彷彿とさせる程に。

瞬く間に二人はダウンした。

一撃で二人をダウンさせた。


チタもスピードで圧倒し1人目を倒していた。

そこに間髪入れずに攻撃を仕掛けた者がいる。


「お前、なかなかやりそうだな」


ヴァレリアだ…

そして拳を放った。

それをチタは持ち前のスピードで躱した。

いや、躱しただけではなかった。


ドサッ…


ヴァレリアの右腕が切り落とされていた。

あの一瞬で切り落としたのだ。


「やるな!お前」


「どうせこの程度、大したことないんでしょ?」


どういう意味だ?

片腕を切り落としたことが大したことないやつなんていないだろ。

だがその思いは浅はかだった。

なんと腕がひとりでに立ち、くっついたのだ。


「よく知ってるな、前に会ったことあるか?」


「前にコテンパンにやられたわよ」


「そうか!なら今度はやられてくれるなよ?」


まさか前に二人は会ったことがあるのか?

チタが一方的に知っているようにも見えるが。


「まさか…」


唐突にモナが震えた声を出した。


「どうした?」


「あのヴァレリアっていう奴、もしかして不死魔族なんじゃない?」


「前に父さんが言ってた…」


たしか世界に4体しか存在しない、青白い肌に白い髪っていう特徴…

合っているな…


「今の回復力、魔法によるものじゃないわ。あの感じは体質…だとするとやっぱりあいつは」


「不死魔族か…」


モナが頷いた。

まさかこんなところで伝説の魔族と遭遇するとは…

てか本当に実在したんだな。


観ていた景色をフィールドに戻すと激しい戦闘が起きていた。

超高速で動き攻撃を当て続けるチタ、対してその攻撃をもろともせず反撃するものの当たらないヴァレリア。

泥沼の戦いだ。

あれでは一生二人の決着はつかない。

不死というのも本当らしく、目を削られようが腕を切られようが、瞬きの間に再生している。

このままいずれ体力の尽きたチタが負けるだろう。


「俺の攻撃が当たらないのはつまらないな」


その言葉を皮切りに遂に戦闘中にヴァレリアが大きく動き出した。

チタの動きを追い始めたのだ。


遂にはチタの体力が落ちてきているのもあるだろうが、徐々に追いつき始め、


「捕まえた」


ヴァレリアがチタの足を掴んだ。


「嘘でしょ!?追いついたの!?」


「ほらよ!」


投げ飛ばされたチタは勢いよく岩に叩きつけられた。

立ち上がりはしたものの、ダメージは見るも明らかだ。


「また…負けるなんて…」


「立ち上がるか!いいね!もっと楽しませてくれ!」


ヴァレリアが追撃の態勢に入った。


「そこまでだ!」


突如とてつもない声量が響き渡った。

声のするほうを見ると、発したのはリオンだった。


「もう決着はついている、その二人が勝者だ」


え?決着がついている?

あらためて場を見ると、二人以外の選手は軒並み気絶している。

どうやら二人の戦いに巻き込まれたらしい。

それほど激しい戦いだったのだ。


Dグループ勝者

・チタ

・ヴァレリア



予選が終わった。

今日はこれにて終了。

明日以降決勝トーナメントが始まるらしい。

俺たちは宿で明日以降について話している。


「それにしてもあのヴァレリアっていう魔族の強さ、異常だな」


「流石伝説の魔族ってところかしらね」


「あれは私も油断したら一瞬で負けそうな相手だよ」


話題はやはりヴァレリアについてだった。

驚愕の強さだ。

なにせあのチタを一方的ともいえる勝ち方をした。


「問題はあの不死性をどう対処するかよね」


対処のしようが無くないか?


「でもあいつ、魔法使って無かったよね?」


「だからと言って、魔法でどうこうもできないだろ」


「そっか…」


「できるとしたらそれこそ圧倒的な力で負けを認めさせる以外ないだろな」


それぐらいしか案が思い浮かばない。

明日以降のトーナメント次第では詰む相手となる。

祈るしかないか…

ヴァレリア 年齢不詳

性格:戦いが好き 単純思考

魔術:出来ない

世界に4体いる不死魔族の一体 圧倒的フィジカルと不死の体質で戦う 頭が悪く搦手に弱い 女性だが一人称は俺

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