第四十話 闘技大会の開幕
大会が始まる日まで俺たちは情報収集をすることにした。
その結果色々なことが分かった。
まず獣人族たちの特徴だ。
この種族は魔法を扱える個体が少ない。
身体能力に長けていることがほとんどだとか。
実際、闘技をいくつか見てきたが、一度も魔法を扱う人物はいなかった。
己の肉体を鍛えて戦う、そんなスタイルなのだ。
かといって魔術師がいないかというとそうでもない。
むしろ貴重な存在ということかなり丁重に扱われているそうだ。
基本戦いに駆り出されることはなく、町に貢献する訳を与えられているらしい。
その一つとして、闘技を行う場所即ちステージ上に存在する無数の岩々は、この魔術師によって生成及び修繕されているんだとか。
なので岩の配置も決まったものはなく、毎回変っている。
町のインフラを支える存在なのだ。
ちなみにここのギルドの採用条件は「魔法を扱える者」限定らしいので、ギルドにいる職員は全員魔術師でもあるそうだ。
獣人族たちを束ねているリオンという人物についてもいくつか聞くことができた。
強さについては全員が口を揃えて最強と言っていた。
その地位にいるのも実力があるかららしい。
一説では生涯で敗北したことがないんだとか。
そんな人物いるわけないと思うが…
魔法は使えないらしい。
それでも肉体のみで最強にのし上がった人物だ。
俺たちがここに来てからは、どうやら出かけているらしく見ていない。
が、大会があるときに必ずいるそうなので当日目にする機会があるだろう。
性格は芯が通り、真っ直ぐな男だとか。
裏表があるような感じがせず、獣人族のために事をなすらしい。
それこそこの町に住む子供にとっては英雄のような存在だとか。
話を聞いていて一切の不安を感じるような話は聞かなかった。
それほどの存在だ。
―――
大会開催当日になった。
「なんだか緊張するね!」
「そうね、こういうのは初めてだからかしら」
「俺もだな…」
大会か…
前世でも大会に参加したことはあるが、今回のような大会は初めてだから多少の緊張はあるな。
だが、先頭に特化した獣人族たちの舞台でどれだけ俺たちの力が通用するのかも楽しみではある。
本来の目的である、打倒魔王のために…
会場に着き受付を済ませた。
この場にいる人数はおおよそ30人といったところか?
結構な数が参加している。
それだけ大きな大会なのだろう。
「皆様お待たせしました」
奥から現れた職員らしき人物が話し始めた。
「観客の皆様には後ほどご説明しますが、まずは参加者である皆様に今回の進行方法についてお話します」
「今回32人という大勢の方が参加されるということで、従来の形式と異なります。この後の抽選により4つのグループに分かれ、そこから上位2名の方がトーナメントへの出場権を得られる形式となります」
まずはグループ戦からということか。
となるとおそらく最初の試合形式は、
「グループでの試合は全員同時に戦っていいただきます。その中で最後まで立っていた2名の方がそのグループの勝者となります」
バトルロイヤル形式か。
32人を4つのグループに分ける、つまり1グループは8人か。
その中で上位二人になればいいわけだ。
「闘技のルールは普段のものと変わりません。気絶や自己申告等をすると負けとなります。相手を殺害することも失格となりますのでご注意ください」
ルール説明が行われた後、グループ分けの抽選が始まった。
簡単なくじ引きだな。
その結果、シャーリーがAグループ、モナがBグループ、俺がCグループとなり見事に分かれた。
チタはちなみにDグループとなった。
「きれいに分かれたわね…」
「でもこれなら全員が残る可能性もあるよね」
「そうね、そう考えれば逆に良かったのかしら?」
まあ、物は捉えようともい言うしな。
「残念ね、あなた達と戦ってみたかったのだけれど。まあ、予選で勝つことができれば戦えるかしらね」
「チタさん、俺たちに突っかかってくるのは何か理由があるんですか?」
「そうね、人族であるあなたたちに期待を抱いているからってとこかしらね」
なんかこいつの喋り方って、人と喋り慣れていないのか?
もしかして…
「ねえ、あなたって友達いないの?」
「は?」
シャーリーがズバッと切り込んでしまった。
俺も思ったけどさ…
「どうしてそう思うのかしら」
「だってなんか喋り方が変だよ?」
お前のそういうところ尊敬するよ、シャーリー…
「あんた名前は?」
「ん?シャーリーだよ?」
「シャーリー…あんたともし戦うことがあったら、絶対負けないから」
チタが去っていく…
対してシャーリーは何も分かっていないような顔をしている。
「私何か悪いことでも言った?」
「そんなことないわよ」
「まあ…そうだな、うん」
なんかシャーリーにはこのままでい欲しいから言わないでおこう。
モナもなんとなくそんな感じだし…
グループ分けも最後の方に差し掛かった頃に、一人遅れてやってきた者がいた。
「悪い悪い、控えってここで合っているのか?」
誰もが向けた視線の先にいた人物。
肌が青白く、白髪を後ろで結び、そして黒い眼球に赤い瞳の人物。
身長は俺よりやや高いか?
見た目からして女性だな。
「なんであんたがここにいるの?」
そう言ったのはチタだった。
どうやら知っている顔らしい。
「あん?誰だテメェ」
そういうわけではないらしい…
「私を忘れたっていうの!?」
「知らねえもんは知らねえ」
「俺はリオンのやつに呼ばれたから来たんだよ」
「ちょっとギルド!こいつも参加するっていうの?」
「はい。リオン様から参加の申し出がありました。ヴァレリア様が最後となります」
ヴァレリアというのか、見た目からして獣人には見えないな。
まさか…
「(ねえアルケウス、あのヴァレリアっていう人、魔族よ)」
やはりそうか。
人外っぽいもんな、見た目。
いったいこんなところで何をしているんだ?
「(どうする?攻撃してみる?)」
「(いや、やめておこう。ここで騒ぎは起こしたくないし)」
むしろ利用するというのはどうだろう。
どうにかして捕らえて魔族について吐かせるとか…
まあそんなことしたくはないからやらないけどね?
とりあえずこいつも参加するっぽいしそれを見れば何かわかるかもしれないな。
今気になるのは、自身に満ちていたチタがあのヴァレリアという人物に対して焦っているように見せることだ。
単純な可能性なら、チタよりも実力が上だってことか?
なら警戒するべきだろう。
「ではヴァレリア様、最後の一つを引いてください」
「これは?」
ん?
字が読めないのか?
珍しいこともあるもんだ…って、種族が違うからそういう部分もあるのか?
「Dのグループですね」
「はあ!?私と一緒なの!?」
「それはなんだ?」
「順番が最後になります」
「そうか」
そう言い放ち部屋の隅にドサッと座った。
そのあとチタがギルド職員に何か言い続けていたが、きれいに流されていた。
その後、観客にルール説明や対戦グループの発表が行われた。
その際、大きな会場でどうやって伝えるのか気になっていたが、まさかの拡声する魔道具を使うとは意外だ。
人族の領にいたころよりも魔道具を見る機会が明らかに少なかったが、こんなものがあったとはな。
その様子を見ていると上部の客席、いかにもな客席にある人物が現れた。
「皆様、今大会もあのお方に見ていただいております。我ら獣人族をまとめ上げた英雄、リオン様です」
アナウンスと同時に姿を現した男、輝く金の長髪を靡かせた男だ。
まるでライオンを連想させる。
獣の王って感じだ。
「参加者諸君、並びに観客の皆様方、今大会への参加に対し礼を言う。この闘技場では日頃から腕を競っている者もいる。そんな者たちと外部からの挑戦者を踏まえた此度の闘技、存分に楽しんでくれたまえ。我も存分に楽しませてもらう。そして―――参加者の中より生まれる我への挑戦、是非つかんでみよ!」
これが戦の頂点の威厳か…なんかかっこいいな。
会場も盛り上がっているようだし、そんな雰囲気に吞まれたのだろうか、内心のわくわく感が止まらない自分がいた。




