第三十九話 闘技の王者
先日の依頼の報酬でかなり手元が潤った。
しばらくは急いでギルドの依頼を受けなくても問題はない。
変に無駄遣い等をしなければの話だけどな…
なので今日は闘技がどういうものなのかを見に行くことにしよう。
まずギルドに今度行われる大会について聞きに行くことにした。
開催は今日から五日後。
参加する際の条件は特にない。
参加費用とかも特にないのだ。
どの種族、職も自由に参加でき、形式は参加人数によって決まる。
戦闘する際のルールは何でもありだ。
魔法を使っても良いし、武器を使うかどうかも自由だ。
勝敗は、相手が負けを認めるか、継続戦闘が困難になる、または困難と判断された場合となる。
ただし殺害行為は禁止されている。
要は負けを認めない相手は気絶させれば勝ちとなるわけだ。
といったところだな。
優勝者には賞金と統治者リオンと戦える権利が貰えるそうだ。
参加するか否かの受付は、四日後の昼までだそう。
とりあえずはルールも確認できたし、実際の闘技を見に行くとしよう。
普段はポイント制で日々闘技が行われている。
ゲームでいうランクマッチみたいなものだ。
勝てばポイントを獲得し、負ければ失う。
所持しているポイントで順位が頻繁に入れ替わる。
これには参加しない。
ここに何年も長居するわけではないからな。
今の一位はチタいう人物らしい。
客席に入ると、意外にも多くの人々が戦いを観ていた。
中には賭け事をしているような連中もいる。
そのあたり特に決まり事があるとは聞いていないから、おそらく個人の自由なんだろう。
今は獣人同士での戦いのようだ。
特にこれといった表記がないので、誰と誰が戦っているのかはわからない。
片方は筋骨隆々の大男でクマのような獣人だ。
見た目通りといったところか、力任せな攻撃が目立つ戦い方だ。
一発一発が大振りな一撃を放っている、だが見た目以上に動きは速い。
対して筋肉はあるものの対戦相手と比較すると明らかに小柄なネコ科っぽい少年だ。
相手の攻撃を少ない動きで回避しながら反撃しているが、攻撃が軽いのだろう。
相手も防ぐことはあるが、まともに攻撃をもらってもびくともしていないようにも見える。
そんな攻防が繰り広げられていた。
そして試合は唐突に動いた。
小柄な獣人が動きを変えた。
フィールド中を駆け巡り始めたのだ。
大小様々なサイズの岩々があるフィールドでかなりの速度で移動している。
そのカラクリとは、岩や地面で跳躍し続けることで高速の移動をし、そしてすれ違いざまに攻撃を与え続けていた。
大男も何とかそれに対応しようとしているが、一歩一歩着実に後手に回っているのが嫌でもわかる。
「俺の負けだ…」
唐突に大男が負けを認め、試合が終了した。
小柄な獣人がこの試合の勝者となり、歓声が上がった。
「流石チタだな」
歓声の中そんな話声が聞こえた。
どうやらあの小柄な少年のような獣人が1位の人物らしい。
「彼女ならこのような相手には負けないだろう」
え?彼女?女性だったの?
遠目からでは判断が難しい。
そう言われるとそうも見えるような見えないような、かなり中性的な顔つきではあるが…
「流石現チャンピオンだ、まだまだ敵わねえな」
「ありがと、あんたの一撃も当たれば強いと思うよ。当たればね」
「相変わらず皮肉を言うんだなお前は…まあ、今に始まったことじゃねえからいいけどな」
戦った者同士何やら思うこともあるのだろう。
しかし一試合目とはいえいいものが見れた気がする。
チタはもちろんのこと、対戦相手だったクマのような獣人も決して弱いというわけではなかった。
獣人族の戦士はかなり強いと思う。
それこそ今戦っていた二人なら低く見積もってもBランク相当はあるだろう。
人族の並みの兵士などじゃあ敵わない相手だ。
闘技の観戦が終わった後、二人に大会についてと参加するかを聞いてみた。
「私は出たい!獣人族の人たちとはまだ戦ったことないからさ」
シャーリーは参加する気満々だった。
こいつが出るならまあ上位には入れるだろう。
さっき見たチタという人物もおそらく出場するだろうから、あれを天井と仮定するならの話だけどな。
「モナはどうする?俺も参加はしてみようかと思っているけど」
「私も参加しようかしら」
これは意外だ。
てっきり参加はしないと思ったけど。
「賞金とかももらえるならもらいたいし、何よりそのリオンという人物と戦えるんでしょ?私たち三人で出ればそれだけ確率も上がるわよね?」
なるほどな。
旅の目的のためでもあると。
まあ、どんな理由であれ参加してくれるのはありがたい。
ルール上は魔法もありだからモナが戦うすべを失う心配もない。
なんだったらこいつは近接戦闘もできる魔術師だから大丈夫だろう。
「じゃあとりあえず申し込みだけ行くか」
大会参加申し込みもギルドで受付している。
三人の参加の受付をしてもらっていると後ろから声を掛けられた。
「へぇー人族が参加するのかい?」
振り返るとそこにはチタがいた。
「何か問題でもあるの?」
「問題はないよ、ただ大丈夫かなって思っただけさ。ケガでもしたら可哀そうだからね」
「私たちはAランクの冒険者なんだよ?あっ、でも私はまだBランクだった…ハハハ…」
「そうなのかい?人族のAランク冒険者なんて初めて見たね。まあ強いなら闘技で見せてくれよ」
「チタさん、これでもこのパーティはジャイアントスコルプやダークナイトスコルプを実際に討伐されている実績があるので、強さに関しては我々も保証できます」
「そうかい、ギルドがそう言うならまあ信じてあげるよ」
そう言い残しチタは去っていった。
「すみません皆様。彼女は前からああいう方なので…」
「気にしてないので大丈夫ですよ。ところで、あの人も大会には参加されるんですか?」
「本来は機密事項ですけど、参加されますよ。彼女の強さは皆さんも知っているでしょう?上位に残ればいつかは対戦するかと思います」
まあ、現ランク王者の実力はさっき見たが、納得いく実力はある。
もし対戦することになったら厄介なのはあのスピードだな。
「話が脱線しましたが、皆様参加でよろしいですね?」
「お願いします」
とりあえず参加申し込みはこれに終了。
五日後にどういう大会になるか楽しみだな。
ついでにシャーリーのAランク昇格の手続きもした。
先日のダークナイトスコルプの討伐を経てすでに昇格は認めていたらしいのだが、更新する機会が無かったらしい。
なにせ昨日の依頼完了の報告にシャーリーが同行していなかったからである。
もちろんその話を俺はされていない…




