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知と記憶の回廊を抜けて:異世界で二度目の生を  作者: 三木 天
獣人編

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第三十八話 黄金に輝く獲物

2026 10/22 内容を追加しました。

夜は快適だった。

獣人族の領に来てからの寝床としては最高といっても過言ではない。

森にいた時よりも快適だったのだから。

とにかく涼しい。

この一言に限る。

魔物も襲ってこないしな。


さて、今日は何をするかというと…とりあえずお金を稼がないといけない。

ここまでの長旅でギルドを経由したのって、イニシ法国の国境都市ワニング以来なんだよ実は。

正直、大会までの一週間を試合を見ることに専念できるほどの余裕がない。

ということで早速ギルドの掲示板を見てみると、Aランクの依頼はそれなりにあった。


「ねえねえ、これにしようよ」


シャーリーがやけに催促してくる。

見てみると、


===

依頼

ジャイアントスコルプの討伐

ランクA

報酬金貨5枚

===


かなり破格だ。

俺の認識だとAランクって多くても金貨3枚とかのはず。

よほどの相手、それこそドラゴンゾンビなんかは別格だったりもしたが…

それだけ強力な魔物なのかもしれない。

まあ、ジャイアントってつくぐらいだし?

名前からしてサソリっぽい。


「大きい魔物と戦ってみたくない?」


「私はその気持ち分からないわね」


「モナはそうかもしれないけどアル君は?」


「戦ってみたいかどうかで言えば正直戦いたくはないよ。けどこの内容はかなり好条件なんだよな」


「じゃあ決まり!」


っと、シャーリーが依頼書を持って早くも行ってしまった…

まだ決定してないと思うんだが…

モナの方を見るとなんだか不安げな表情をしていた。


「なんかごめんな、あいつのことコントロールできなくて」


「別に」


「どうしたんだ?」


最近モナに以前の頃のような自信あふれた気迫が感じられない。


「いつか、また前のように全滅しないか心配なだけよ」


「そうならないために俺たちは旅をしているんじゃないのか?」


「そうね……私最近思い知ったのよ」


「なにが?」


「世界には私たちの常識を超えるような強い存在がいるって」


たしかにそうだな。

俺だってこの世界に来てからの強さの概念、常識に最初こそ戸惑った。

そしてそれが更新されてもなお、ゾルディのような存在を目の当たりした時の常識の崩れ方は異常だ。


「アルケウスは、ガデムと戦うってなったら勝てる未来が見えた?私は見えなかったわ…」


ガデムか。

たしかに彼の強さにも謎はある。

いくら攻撃されても傷つかない強靭な肉体だからだ。

魔力も無いらしいしな。


「でもそれを知るために旅だろ?今回の依頼だって同じことだよ。なに、無理そうなら撤退すればいい」


「二人とも!依頼受けれたよって、何話しての?」


「何でもないよ」


「本当に?ならいいや。早く行こう」


あの何も考えてなさそうな感じはシャーリーのいいとこだな。


「シャーリーはいいわね、気楽そうで」


「同じこと考えてた」




「ふふっ」


少しの沈黙の後、モナが笑って俺もつられて笑った。


「行きましょ、アルケウス」


「そうだな」



町を出て数時間したところに依頼の魔物はいた。

金色に光る鎧を身に纏う大きなサソリだ。

全長は5メートルほどだろう。

一応サソリについて、出発前に現地人に色々聞いてみた。

このサソリの注意すべき点は3つ

1つは尻尾の毒。

刺されると解毒の薬草を森に取りに行かないといけない。

激痛が走り嘔吐と目眩がするんだとか。

2つ目にハサミ。

岩をも切り裂くといわれているらしい。

3つ目は鎧に反射する日光を使って姿を晦ますらしい。


先制は俺とモナで行く。

魔物は獲物を待っているのか動かない。


「どこを狙うのよ」


「とりあえず俺は尻尾、モナは正面からハサミを狙ってくれ。シャーリーはモナの援護を頼む」


「分かったわ」


「任せて」


あのサソリの強度が分からない以上、とりあえず注意点でもある尻尾とハサミをまず狙う。

理想は最初の一撃で両方を使えなくすることだ。

後ろに回った俺の最初の一撃。

やはり安全を考慮するなら遠距離からの斬撃だろう。

奇襲と威力を兼ね備えた風と炎の斬撃がいいだろう。


遠目でモナの緋焔槍の詠唱が完了したのを確認した。

それと同時に魔物がモナたちの居る方へ動き出したのだ。

モナが自分を攻撃しようとするのを察知したのだろう。

俺たちの放った攻撃は頭部と尻尾に見事命中した。


モナの攻撃で片方のハサミがやや欠けているが、尻尾の方は特にダメージが見受けられない結果となった。

そして今度は、俺の方に向かって動き始めた。

こちらが人数が少ないことを知ったのだろう。

一直線に向かってくる巨体。

すでにシャーリーが俺の方に向かってきてはいるが間に合わない。

自分でこの危機を乗り越えなくてはいけない状況。


「まずいな…」


つい漏れてしまったセリフ。

実際、回避行動をとっても避けれる確信がない距離にまですでに迫ってきている状態だ。

魔法を使っても対して効果はなさそう。

なにせモナの一撃でハサミの一部が欠ける程度だ。

やはり剣でどうにか受けるしかない。


しかし突然足場を岩が上に押し上げ名から形成された。

モナの土魔法だ、助かった。

と思ったのも束の間、サソリの奴が魔法で形成した岩を切り崩したのだ。

足場が崩れサソリの真上へと落下していく。

俺は空中で風魔法を目一杯使って、体をシャーリーのいるほうへ投げ合流した。


「アル君大丈夫?」


「問題ない」


「じゃあ行くよ!」


シャーリーが前へ出た。

俺も体中に魔力を巡らせ後に続いた。

そしてモナの身体強化も乗る。

二人でなら攻撃も捌ける。

そしてシャーリーがダメージを受けていた片方のハサミを切り落とした。


「まずは一つ目!」


そういったシャーリーに尻尾が迫っていた。


「シャーリー!」


と心配したが、シャーリーは尻尾を弾いた。


「問題ないよ!次は尻尾に行くよ!」


俺はサソリの足元を搔い潜り、剣に雷を纏い攻撃した。

刃は通らないが、内部を焼き麻痺させる雷を食らって一瞬動きが鈍った。


「シャーリー今だ!この部分を!」


その部分とは最初と今の攻撃を同じ個所に入れていた場所だ。

既に内部は脆い状態で、シャーリーの一撃なら切れると判断した。


「ハアアァァア!」


キンッ!


甲高い音を鳴らし剣が尻尾に命中したが切れない。

ならばこそ付与だろう。

俺は彼女の剣に炎を付与した。

そして断ち切った。

尾の先端は回転しながら地面に刺さった。


そしてここまでくればもう脅威と呼べるものはほとんど無いと思った。

サソリは体を丸くしたのだ。

一瞬困惑した。

しかし次の瞬間とてつもない光が視界を覆った。

それが収まると同時にサソリは姿を消した。

日光だ。

日光を外殻で反射して目くらましをしてきたのだ。

あの巨体が一瞬で消えれる場所はすぐに検討がついた。


地面だ。

目くらましをして地面へ潜った。

逃げるのか?

それとも隙をついて攻撃してくる?

もしその場合は誰に攻撃する?

奴は常に人数の少ない場所を狙ってきていた…


「モナ!」


今孤立しているモナに行くと思った。

そしてその考えは当たった。

叫ぶと同時にモナの背後にサソリが浮上してきた。

それも残りのハサミを構えた状態で。


モナとの距離はそれなりに離れてしまっている。

シャーリーも俺も間に合わない。


―――

直線でなら出せる

圧倒的な速度を乗せた一閃

速さは重さ

―――

稀にある知らない記憶を見た。

そしてその記憶の動きを俺は反射でまねていた。


足元が沈むほどの踏み込み。

あっという間にモナとサソリの間に割り込む位置に到達した。

そして剣を振るった。

反射で剣に炎纏っていたのも功を奏したのだろう。

シャーリーですら通すのに苦労したサソリの外殻。

俺の一撃は断ち切ったのだ。

頭から一閃した。


サソリはその一撃で絶命した。


「モナ、無事か?」


「ええ、助かったわ。ありがとう」


無事なのを見てホッとした。


「アル君!今の一瞬どうやったの?私より早く動いたんじゃない?」


「分らん。俺今どうやったんだ?」


さっき自分が何をしたのかが思い出せない。

反射でやったみたいだ。


「あんた、また剣が変わっているわよ」


「本当だね!」


そう言われて剣を見ると確かに変わっていた。


「これは…」


その形状は紛れもなく刀だった。勇者の剣の形状が変わるのは今に始まったことではない。

だが刀に変わったのは初めてだ…


「その形状どこかで見た気がするわね…」


「私知ってるよ!これは刀っていう剣なんだよ」


「知ってるのか?お前」


「冒険者始めたての頃にね、あんまり強そうじゃないから今の剣にしたんだけど」


この世界にも刀があったのは驚きだ。

あまり武器屋に行く機会なんてなかったから知らなかったな。

そもそも使っている冒険者すら見たことないんだけどな…


「でもさっきのアルケウスの一撃を見る限り弱くはないと思うけど?」


「でも刃がこんなに小さいんだよ?こんなので切れるとは思わないよ普通」


俺の認識が正しければ、叩き切る西洋の剣と刃を引いて切る日本の刀ってイメージがある。

使い方が違うのだ。

だがこの世界にはそんな知識はない。

ましてや刀という武器自体が希少である。

製造しているところすら俺は聞いたことも見たこともない。

名前まで一緒何てそんなことあるのか…

俺以外にも元の世界から来たりした人間がいるのか…

分らん…


気づくと剣は元に戻っていた。

やはり必要に応じて変化するのか。

いつかはこれを自在に変化させられるようになれればベストなんだが、未だにどうやって変化しているのかの実態が掴めないんだよな…


とりあえず依頼は無事完了した。

討伐の証でもあるジャイアントスコルプのハサミをもって帰還する。


「今回の魔物、手強かったね!」


「なんであんたはそんな元気なわけ?」


「もう一匹ぐらい狩りたいな~」


「それ本気で言ってるのか?」


シャーリーは元気が有り余っているのか、さっきからずっと似たようなことを言っている。

消化不良なのだろうか…


「戻る頃には日が暮れる、また明日以降な」


別に今日中ってわけではるまい。


ギルドに依頼完了の報告をして、報酬をもらう。

今回だけで金貨5枚、なかなか破格な金額だ。

報告ついでになぜこんなに報酬が高いのかを受付に聞いてみた。

そもそも今回の魔物自体がこの辺りでは上位に位置する魔物である。

そしてこのあたりの魔物は基本的に人族の地域にいる魔物よりも強いかららしい。

思えばドラゴンゾンビも元を辿れば人族の領域ではなく、龍族の領域から追い出された魔物でもある。

同じAランクでも魔物同士のレベルの違いが顕著に出ることだってある。

それでいうと今回のジャイアントスコルプはAランクの中では確かに強かった。

というかこの辺りの魔物は本能に任せるのではなく意味を思った行動をすることが多いと思う。

あのサソリも、基本的に人数の少ない箇所を狙ってきていたし、先日のナイトハイエナも夜に逃げ道を無くすよう包囲して襲ってきた。

ちなみにナイトハイエナ自体はCランクだそうだ。


夜になりトラブルが起きた。

シャーリーが見当たらないのだ。


「いたか?」


「いいえ、どこにも…」


「あいつどこ行ったんだ?」


夕食まで時間があったので、各自自由行動の時間にしていたのだが、時間になってもシャーリーが夕食を食べに来なかったのだ。

そこでモナに闘技場の中、俺は地上の街中を探したが見つからない。


「ギルドには聞いたか?」


「まだ聞いてないわ」


「なら聞きに行こう」


そこでようやく判明した。

シャーリーはなんと依頼を受けていた。

内容はAランクのダークナイトスコルプの討伐依頼だ。


「そういえばあいつやけに元気だったというか、もう一匹狩りたいとか言ってたな」


「一人で行ったわけ!?」


「そのようだな、まったくあいつは」


「急ぐわよ」


俺たちは急いで装備を整え町の入り口に向かった。


しかしその徒労はいとも簡単に砕かれた。

町の入口に着くと外から誰かがやってきた。

その正体はシャーリーだった。

しかも何かを背負っていた。


「二人ともどうしたの?もしかして依頼でも受けたの?」


「いや…お前が一人で依頼受けたからって聞いたから…」


「それならもう終わったよ!たまたま近くにいてくれてよかったよ」


背負っていたのは黒色のサソリのハサミだったのだ。


「せめて俺たちのどっちかでいいから言ってくれ…」


「あ!忘れてた…エヘヘ」


「エヘヘじゃない」


「心配かけないでちょうだい」


「ごめんなさい…」


「ケガとかしてないか?」


「大丈夫!」


本当に大丈夫そうだな。

それにしても一人で狩ってきたのか?

だとしたらすごいなこいつ。


シャーリーの依頼の報酬も金貨5枚だった。

まさか一日で金貨10枚も稼げるとはな。

これだけあれば下手に使わない限り、明日以降闘技を見てみても問題はない。

この地域の魔物の強さは今日に至るまでで痛感した。

次は現地の人々の戦いというものを体験できるだろう。

今の所見たのはガデムの戦いだけだが、あれは多分獣人族の戦いではなく彼のみができることだろうからな。

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