第三十七話 獣人族の本拠地
アルケウス達が魔物と戦っている中、上空でそれを傍観している者がいた。
「あの方の言っていた人族はこいつらか?言っていたよりも強そうに見えるが…まあ、あの方からすればってとこだろうな」
傍観する者は自問自答で納得する。
その者とは、世界に四体しか存在しない不死魔族の一人。
名をヴァレリアと言う。
「まあいい、いずれ拳を交える時が来るだろう。その時が楽しみだ」
そう言い残し、ヴァレリアはその場から颯爽と姿を消したのだった。
―――
翌朝
その後に魔物の襲撃は特になかった。
かなり激しい戦闘だったにもかかわらずだ。
今はモナに休んでもらいつつ、俺とシャーリーで出発する準備等を行っている。
夜に倒した魔物はまだ解体せずにそのままにしてある。
今日中にはあの拠点にたどり着くので、そこで売り物にする予定だ。
「これ全部持ってくの?」
「できればそうしたいけどな」
「無理じゃない?」
うーん、どうしようか…
「私に案があるわよ」
そう言ったモナの案は、土魔法で荷台を作るということらしい。
「あんたなら作れるでしょ」
「いやいや、難しいぞ普通に…やってはみるけどさ」
ということで不格好ながら荷台?のようなものが完成した。
とりあえず引いてく持ち手と、荷台に車輪を付けてみた。
試しに動かしてみたが、まあ動くには動くって感じの出来栄えだ。
無いよりはマシってやつだな。
完成した荷台に魔物の死骸を乗せ、出発した。
一応日の光を遮る用で屋根も追加でつけておいた。
意味があるかって?
知らんそんなものは。
一時間ほど歩き、ついに到着した。
拠点周りは壁が築かれている。
が、そんなに高さはない精々3、4メートルほどだろう。
そして見張りには獣人族の戦士のような人が二人でいた。
その内の一人が話しかけてきた。
「人族か、珍しいな。その恰好から見て冒険者か?」
「はい。今世界を回っている途中です」
「後ろの荷台は獲物かなんかか?見た目がダサいな」
「そうですね、先ほど作った自作です」
「人族は変なことをするんだな」
まあ、即席だしな…
「まあ通っていいぞ。ここは闘技場が売りだからな、お前らも冒険者なら参加していけよな」
まあ、一応それを見るのも目的ではあるけどな。
門を抜けると石で作られた建物が広がっている。
行き交う人々のほとんどが獣人族だ。
それもいろんなタイプがいる。
獣人たちの特徴は、体の一部が獣化していることだ。
頭に角やケモミミが生えていたり、尻尾があったりする。
服装に関しては露出の少ない物を着ている。
俺たちと同じく日光を直接浴びないようにしているのだろう。
町を進んでいくと露店などもやっているが、あることに気づいた。
ここの売りとも言える闘技場らしき建物が見当たらない。
それどころか、城のような大きな建物がないのだ。
ここにあるすべての建物が、一般の人が住む家もしくは店だ。
冒険者ギルドらしき建物も見当たらない。
見張りの反応からしても、冒険者という職自体はここにもありそう。
ていうか、冒険者ギルド自体は一部の種族を除いた地方にあるはずなのだが。
町を進み続けると、奥に建物がない空間があることに気づいた。
そこにあったのは落ちないよう策が設けられている巨大な穴だった。
「なんだこれ」
「すごいわねこの穴」
「なんなんだろうね」
「お前たち旅の人か?」
驚愕している俺たちに町の人が話しかけてきた。
「この穴は?」
「それは地下の闘技場の舞台に続く穴だよ」
「地下に闘技場があるんですか?」
「地上は暑いからね。地下なら日も当たらず涼しい」
どうりで闘技場らしい建物が見当たらないわけだ。
答えは地面の下だったとは。
「お前たち冒険者だろ?闘技場に行けばギルドもあるぞ」
ギルドも地下なのか。
ならば目指すはとかの闘技場だな。
「ありがとうございます」
「教えたお礼としてその荷台のナイトハイエナをくれないか?」
タダではないと。
まあこれがここの種族の習慣なのか?
まあ、別に構わないが。
魔物もナイトハイエという名前なのか。
魔物を一体渡すと、男は満足そうに去っていった。
「アル君…何で渡したの?」
「すまん…相談もせず…厄介なことにしたくなかったからさ…」
「まあ別にいいけど」
このままだと同じような輩がまた来るかもしれない。
早くその闘技場に向かおう。
入口は案外すぐ見つかった。
なにせ地下闘技場の入り口はここですと言わんばかりの階段が穴の近くにあったのだから。
階段自体もかなり大きく、普通の人間なら横に十人程度は並べるだろう。
「地下ってなんだかワクワクするね!」
「そう?」
まあ分からなくもない、地下室ってなんだかわくわくするよな。
「とりあえず行こう。ギルドもあるみたいだしな」
階段を下りていくと広い空間に出た。
多くの人がいてかなり賑わっている。
しかもこの広間にきた途端、涼しくなった。
それもあってか、ここにいる人たちは全員が軽装をしている。
地上で見るのとは正反対の格好だ。
「ここ涼しいわね」
「さっきまでの暑さが嘘みたいだね」
マーラに作ってもらった装備を外してみても全く問題ない程だ。
いくつかの売店らしきところもある。
その中には食料のほかに、武器や防具を扱っている店もある。
そして入ってすぐのところに冒険者ギルドの受付を見つけた。
受付の人はもちろん獣人だ。
猫っぽい人や、兎のような人と様々だ。
俺たちを受け付けてくれたのは犬のような女性の獣人だった。
買取をお願いすると冒険者カードの提示を要求されたので渡した。
すると驚いた顔をされた。
「私、人族のAランク冒険者なんて初めて見ました」
まあここまで俺ら以外の人族はまだ見ていないしな。
「もし強さに自信のある、もしくは強さを磨きたいというのであれば、ここは絶好の地ですよ」
「そうなんですか?」
「はい。当ギルドは闘技場の運営も兼ねています。ですので通常の依頼とは別に闘技場での戦績で報酬を授与させていただいたりもしてます」
そうなのか。
通常の依頼と闘技での賞金の2パターンがあるのか。
報酬を聞く限り、1つ1つの報酬は依頼の方が高い。
なにせ俺たちはAランクだからだ。
逆に闘技のほうは、一日に複数やればそれだけ増える。
何日もかけて一つの依頼をこなすか、一日に何戦も戦うか。
理想論ではあるが、どちらでやってもさほど差はないようになっている。
どちらでやるかは、後で二人と相談だな。
「では魔物の買い取り額は金貨1枚と銀貨4枚になります」
一匹当たり銀貨2枚ってとこだな。
高くもなければ安くもないってとこか。
二人に報酬の話とかをすると、まずはその闘技というのがどういうものなのか見ることになった。
だが、あいにく今日は闘技はないらしい。
来週あたりから大きな大会があるとかで整備中なんだとか。
さっきの受付の人、言ってくれればいいのに…
それでも中を見ることは許可されていた。
この闘技場は中央に大きなフィールドがあり、その周りを囲うように客席がある。
フィールドはシンプルな大小の岩々が散りばめられている。
客席上部には、いかにもお偉いさんが座る用な席もある。
今日は来てないのか空席だった。
上空は日の光差し込んでいる。
さっきみた大穴がこれだろう。
上から見たときはわからなかったが、穴に何やら白い生地の膜のようなものが何層もある。
予想ではあるが、マーラの作ってくれた装備と同じようなものだろう。
光を通し熱を遮断しているのか?
こんな大穴がありながら地下だけ涼しいのはこれのおかげなのかもしれない。
闘技場はかなり広く、探索だけで日が暮れてしまった。
地上にもあるがこの闘技場にも宿はあった。
ちなみに地上よりも3割高で銅貨6枚だった。
3人一部屋でも銀貨1枚と銅貨5枚だ。
ただ灼熱な地上で止まるのを二人が嫌がったので、結局は地下の宿に泊まることにした。
食事もよく分からん肉、穀物、果物だった。
味は特に美味しいというわけでもない。
果物は甘かったのでまだマシだった。




